購入金額 約75,000円 (邦貨換算、タイア・送料含まず)
全て自分で手組み。Neutronリアホイールが入らないCerveloの為に、オールコンディションで乗れるホイールが1セット欲しかったので。軽量ホイールを追求するのではなく、このホイールに求めた性能は下記の3つ。
1. 150km以上のロングライドを快適にこなせる縦方向の柔軟性と横方向剛性の両立
2. 天候を主とするライディングコンディションの変化に柔軟に対応できること
3. 高耐久性とメンテナンスインターバルの長期化
思案した結果、1を満たすためにはロープロリム・チューブラーを用いるのが適切だろうと判断しました。現在使用しているZipp404も、この項目に関してはディープリムとしては驚く程の性能を誇りますが、2のライディングコンディションの変化にはやはり敏感(特に雨天・強風)だし、少スポークの為一本でも切れてしまえば走行不能になるのは必至。ならば32H3クロスにすれば快適性と強靱さが両立出来ると目論みました。快適性のみを追求するならばMavic Reflexで組むのが良さそうですが、リムで柔らかさを演出するよりも、堅牢なリムを用いた方がスポークやタイアの性能をキッチリ引き出せるのではないかと判断しました。
スポークに関しては、Nemesisは頑丈だと評判だし耐久性の観点からもある程度のハイテンションで組みつつ固くなりすぎないようにしたいと考えた結果、ブレード形状のAeroliteを採用しました。自分の体重(フル装備で55kg未満)を考慮すると、Competition等の2.0mmスポークをハイテンションで締め上げると固すぎになりそうだし、Revolutionの様なトリプルバテッドは軽いけれどもハイテンションに耐えられそうもないので、値は張るけれども冷間鍛造されたCX-RayやAeroliteならばそれなりの引張強度としなやかさを両立出来る上にドラッグ削減も期待できる。結局Aeroliteを選びましたが、ニップルは重量よりも耐久性を重視して12mmブラスを。
高性能であるという評判が定着しているものに絞ると、ハブには現状それ程多くの選択肢がありません。カスタムビルダーはカップ&コーン形式ならばShimanoかCampagnolo、カートリッジならばDT Swissを用いるケースが多く、周囲にDTハブ使っている人は居ないけれど過去に所有したOnyxが何年にもわたってメンテフリーで性能を維持し続けた経験から240sを使ってみることに。これなら当面スペアパーツの供給に不安はないし、プリロード調整は出来ない構造ながら高い耐候性と回転性能を誇るとの評をあちこちで頻繁に目にするし、悪し様に罵るような評も目にしたことがないので。
今回は見送りましたが、クリンチャーならHED ArdennesやBelgiumで使用しているC2という23mm幅リムも面白そうでしたが、32Hは入手できるまでに時間が掛かりそうだったので今回はパス。ハブについてもFulcrum同様リア2:1パターンを採用しているLigeroハブが面白そうだったんで迷いましたが、結局入手性と価格を優先しました。
各コンポーネントと計量結果
・リム: Ambrosio Nemesis 32H ERD 616mm 452g/459g (計量時写真を取り忘れました…)
・ハブ: DT Swiss 240s 100mm non-disc/240s rear 130mm Shimano (どちらも32H、36Tスターラチェットへアップグレード済み) 107g/210g 詳細はハブ単体レビューをご覧下さい。
https://cbnanashi.net/cycle/modules/newbb/viewtopic.php?topic_id=7113&forum=25https://cbnanashi.net/cycle/modules/newbb/viewtopic.php?topic_id=7114&forum=26・スポーク: DT Swiss Aerolite silver フロント 302mmx32本 161g
https://cbnanashi.net/cycle/modules/newbb/viewtopic.php?topic_id=7112&forum=33リアDS 299mmx16本 79g
NDS 300mmx16本 79g
計319g、スポークには全てWSのプレップを用いました。
https://cbnanashi.net/cycle/modules/newbb/viewtopic.php?topic_id=7033&forum=33・ニップルDT Swiss 12mm Brassx64個 61g
上記のパーツ構成で組んだ結果、合計1,608g (F:758g R:850g)。スポークテンションはフロント120〜130kgf、リアDS140〜150kgf、NDS70〜85kgf。Nemesisリム単体のレビューでも指摘がある通り、接合部での縦方向の振れは完全には除去できませんでしたが±0.3mm以内には収められました。横は特に労せず±0.05mm以下に。最初の150km走行後にチェックした際、0.2mm程度初期振れが出ていたのを確認したので簡単に調整しましたが、現在500kmを超えたところで再度振れは出ていません。非常に組みやすいホイールだったし大きな初期振れも出ていないことから、リムはアタリを引いたようです。
タイアはVeloflex Extreme 22mmをMiyata TTP-1で接着しました。クイックを除く総重量はフロント1,001g・1,292g(TTP-1が前後輪分計24g、CS-7800 12-21Tとロックリング計189g込)。ちなみにこれは、Neutron UltraにVittoria Open Corsa Evo CX 23mmとMichelin Latexチューブ、Veloplug(計2,273g)を装着した状態と比べると+20g。Ultraのカーボンシェルハブは計量したことがありませんが、総アルミシェルの240sより重いとは考えにくいし、スポーク数も前後とも10本近く増えていることを加味すれば、Nemesisはリム単体で少々重くてもタイア装着状態での外周部は実はそれほど重くはならないと想像できます。
ともあれ、具体的な走行性能についての評価は下記の通り。
・加速性能
1. 0→35km/h巡航 ★★★★☆ かなり転がりの良いExtremeを装着していることを差し引いても、優秀であると感じました。Neutronと比べてもほとんど遜色ない。わざとビッグギアから発進しても撓む感じはほとんどないことから、ねじり剛性はかなり高いと思います。しかし足へ返ってくる反応はマイルドで、404・Neutron含め3セットの中で150km超ライド後の足の疲労感は一番少ない。404で感じたどことなくスカスカした重量感のない加速とは違うし、もちろん反応が鈍くさいわけでもなく、常用速度域ではスムーズさと踏心地の柔らかさが際だつ穏やかなホイール。3クロスとAeroliteのしなやかさが活きているようです。ベアリングの回転も絶品で、100km位で渋かったフロントのアタリが出てくると、もう転がる転がる。この回転性能をメンテフリーで維持できるなら最高のハブだと思います。
2. 35km/h〜MAX加速 ★★☆☆☆ このホイールがもっとも苦手とするパートだと思われます。横方向の剛性はかなり高いのですが、やはり極端に低いボックスセクションリムとスポークの多さから空力性能は低く、40km/hあたりでスピードの伸びが大きく鈍ります。Aerolite採用は乗り心地や強度の面で満足行く結果をもたらしましたが、さすがに32本を3クロスさせるとなると空力に関しては焼け石に水だったかも知れません。ストレートスポークよりは幾分マシ、といったところでしょうか。
3. 登坂 ★★★☆☆ 可もなく不可もなく。ペダリングに対するリムの変形は少ないのは感じられるのですが、Neutronと比べると縦剛性が落ちるのか活発に登るというような印象は受けませんでした。とくに重いホイールだとも感じませんでしたが、軽いギアで回転を高めるよりは重めのギアをゴリゴリ強引に踏み倒すか、いっそ割り切って景色でも眺めながらノンビリとペダリングするのが似合っているような。
・ブレーキ性能(SwissStop GHP使用)
1. ドライ ★★★★☆ コントロール性はSwissStopを使っていることもあって、十分です。絶対的なストッピングパワーはさすがに32本スポークなだけあって、確りとしている。ただリム接合部はマシニング加工されていないので、僅かな段差がレバーに弱いながらも波動として伝わってきます。しかしこれはブレーキングに影響するわけではないし、使い込めば削れて消えるのかも知れません。
2. ウェット ★★☆☆☆ 300m程度の高低差のある小さな峠の下りで雨に降られたのですが、下りで制動力の立ち上がりが頼りないと感じられました。SwissStop Greenを使っていながらそう感じたのですから、Shimanoのパッドだとはっきり怖いと感じたかも知れません。新品なのでまだ馴染みが出ていないだけなのかも知れませんが、Neutronと比べるとウェットでの制動力は今一つだと感じられました。綺麗にアノダイズ加工されたリム表面がすぐに削れてしまうのではと心配しましたが、実際にはかなり頑丈で、2時間ほど下りを含む雨天走行をしても特に大きな傷みは見られませんでした。
・横風の影響
★★★★☆ 強めの横風に吹かれるセクションでも、特に進路を乱されるような感じはしませんでした。
・快適性
★★★★★ これに関しては、もう文句なし。そこそこの剛性感があるけれど、路面やペダリングの変化に対する反応がとても穏やかで安心して走れます。ZippやNeutronもそれほど乗り心地が悪くはないのですが、このホイールはちょっと別格。車に例えるとスポーツカーと言うよりもエアサス搭載の重量級高級車みたいな穏やかさ。遅かったり、鈍かったりするのではなく、路面から身体・ペダルに伝わるショックの角が全て取れているのでおっとりしていると感じられます。路面状況が悪くなるほどに光るんじゃないでしょうか。
・総評
目論み通り404とはほぼ真逆の性質を持ったホイールになりました。高速でのスピードの伸びとヒルクライムでの軽快感こそ劣りますが、どっしり安定して快適なのでタイア選択次第で路面や気象条件を選ばず安心して飛ばせるでしょう。スポークをCompetitionあたりに張り替えればそれこそシクロクロスでも行けそう。長期的にスポークの耐久性がどうなのかはまだ判りませんが、現時点ではあえて柔らかいAeroliteを使った判断には満足しています。台風接近で若干天気が荒れ、良いテストが出来ましたが、ブレーキ性能に引っかかりを感じた以外は狙い通りに組めたと思います。フロントやリアNDSをラジアル組にすれば、ほんの少しですが軽くなるしもう少しキビキビしたホイールになるかも知れません。が、どうせ絶対的に大して軽いホイールにはならないし、無理に軽快感を追求して軽量タイアを履かせアップダウンの激しいコースをレーシングペースで走ったりするよりは、いっそ重くてもエアボリュームの大きな24mm以上のチューブラーを履かせてトレーニングやツーリングペース程度(30~35km/h程度)で走るのがこのホイールの天分じゃないかと感じます。空力と重量が不利になりますが転がり抵抗は減るのでしょうし。ですから、たまたま手元で遊んでいたExtremeを貼り付けたのはちょっと早計だったかな、という気がしています。よく転がるし快適なのですが、Vittoria Pave Evo 24mmあたりのほうが良さそうな気がします。そもそもオールコンディション/LSDのお供的な使い方を想定していたので、絶対的な性能が多少劣ろうとも全然構わなかったのですが、ウェット路面で感じた制動特性だけは少しガッカリでした。柔らかいコンパウンドのパッドを使う限りは身の危険を感じるほどではないのですが…
結局75,000円程かかったので(タイアを含まず)安く上がった!というわけには行きませんが、目的に適うホイールが出来たしこの先3年・5年とトラブルフリーでこの性能を維持して転がり続けてくれれば十分ペイするでしょう。しっかし、自分のバイクの扁平ダウンチューブとは全くアンバランスで似合わないのであった…
価格評価→★★★☆☆(スポークがあぁぁ…)
評 価→★★★★☆(P-R的なレースに出るのでもなければレース使用よりもツーリング・ロングライド的な使い方が○)
カタログ重量→ --g(実測重量 1,608g)