購入価格 $32 (送料別、@Universal Cycles)
従来のBSA/JIS規格のボトムブラケットの場合フレームのBBシェルに直接ネジが切られていて、そこにカートリッジベアリングを圧入したアルミ製カップを装着する方式を取りますが、Cannondaleの音頭取りで徐々に広がっているBB30にはネジ切りもBBカップもなく、わりと大型の汎用ベアリング(42mmx30mmx7mm、6806または61806)をシェルに直接圧入するという方式を取っています。はめ合わせはそれほどきついものではないのですが、手で押し込んだり引き抜いたりできるほど緩くもないのでベアリングやBBシェルを傷めず作業するにはそれなりの工具が必要になります。そこで一番手軽で機能的にも真っ当なのが、このBBT-30.3でしょう。セットに含まれているのは6806ベアリングにぴったりあわせてボールとレースに負担をかけずに圧入するためのコレットx2と、ベアリングをフレームから外す際に内側からインナーレースに引っ掛けて垂直に叩き出すためのポンチ1本。結果から言うとパークツールらしく良く出来た工具で、作業を容易で安全に行うための工夫がいろいろと盛り込まれている上に価格も手ごろな良品だと思いました。
詳しい使用方法は当のパークツール輸入代理店Hozanのサイト(本家Park Toolsサイトからの翻訳)にとても分かりやすく書かれています。
http://www.hozan.co.jp/parktool/repair_help/BottomBracket/BB30.htmlサイトでの図解をよく読むと伝わると思いますがポンチのシャンクに備わっている青い樹脂製ブッシュは、6806ベアリングの内径30mm・外径42mmにあわせて加工されており、先に外すベアリングに対しては反対側のベアリングのインナーレースが、後に外すベアリングに対しては先に外したベアリングが当たっていたBBシェル内壁とサークリップがガイドとなって叩くベアリングに対しポンチがちゃんと垂直に保たれるように工夫されています。さすがはパークツール、細かいところまできちんと考えています。ラバーハンマーでポンチのおしりをコン!と軽く叩いてやればベアリングは簡単に外れます。一応、打ち抜く方向にウエスなどを宛がって抑えておけば、ベアリングが転がっていくということがなくなりますから覚えておきましょう。
内側からベアリングを叩いて抜くというやり方にちょっと抵抗感を感じる方もいるかもしれませんが、すでに述べたように圧入はきついものではありませんので、このやり方がベストでしょう。他の方法となると、内径30mmに対応するチャックを備えたヤグラタイプの(巨大な)インナーベアリングプーラーということになりますが、大きなヤグラがフレームに当たるのでちゃんと養生して、圧入面に対し垂直になるように配慮もしなければならず、非常に面倒になります。しかも諭吉さんが3人位お財布から旅へ出てしまうとなっては、この方法は現実的ではありません。それほど神経質にならなくとも、BBT-30.3をマニュアルどおりに使いこなせればフレームもベアリングもパアにしてしまう心配はいりません。ベアリングを圧入する際に使うコレットの出来もちゃんとしてます。Wheels Mfgのハブベアリングプレスのセットにも6806用コレットは付属していましたが、
https://cbnanashi.net/cycle/modules/newbb/viewtopic.php?topic_id=7814&forum=82比べるとステンレススチール製であるためちょっと重いものの、ちゃんと寸法は出ていますし実用上で劣る部分は何もありません。圧入にはヘッドセットやハブベアリングプレスを流用するのがいいと思いますが、M8位の長ネジ・ワッシャ・ボルトなどホームセンターで手に入る材料で自作した簡易プレスを用いても、使い勝手が劣る他には特に問題ないはずです。低強度ロックタイトをBBシェルの圧入面に塗るかどうかは、塗ることで異音の発生が抑えられる場合もあるようですからお好みで。接着剤の一種ですから、ベアリングのシールに付くと侵してしまいそうな気もしますし、特に異音問題で困ってもいないので私は塗ってませんが、実際はどうなんでしょう?
なお、Hozanのサイトにもベアリングは外したら再利用せず新品に交換しろとかかれていますが、叩いて(もしくは引っ張って)取り出すという方法をとるわけですから、ラジアルカートリッジベアリングにとってはご法度である過度の横方向からの力が加わっているため、少なくとも新品時の精度は失われています。それを承知の上でならば再利用できる場合もありますが、フレームメーカーも工具メーカーも推奨していないのであくまで自己責任でということになります。スピンドルを抜く際にも場合によっては強く引っ叩かないと抜けないことがあるので、叩いたら交換すべし、と思っておいたほうがいいでしょう。ベアリングをアンギュラーコンタクトにしてくれたら、もうすこしタフにならないかな…? 6806ベアリングがあまりお安くないということもあり、水や埃に対して強いシステムでもないので、バラす毎に交換を要求される現状はなんとか改良してほしいなとは思います。
価格評価→★★★★★ (ちょっと内外の価格差が大きい)
評 価→★★★★★ (BB30いじるならこれを買っておくべし)