購入価格 ¥17,000
1年ほど前にも同じものを組んだ気がしますが、いまや何故か希少となった
アルミチューブラーリムのフロントホイールを組みました。
僕は基本的に、カーボンホイールを後ろにしか装着しません。
どれだけ技術的な進歩があろうとも、カーボンリムの制動力は
アルミリムには一生追いつかないからです。
確かに 絶対的な重量で言えば、今回組んだホイールは
ボーラやハイペロンと比べても重たいです。
それでも、ロードバイクを「より安全に」楽しむためには
多少の制動力をも犠牲にしてはいけない、というのが僕の考えだからです。
そんなん知らんわ 最初からディスクブレーキのロード買えや、などと言われそうですが
今までに買ったホイールやフレームが全てゴミ同然のガラクタになるので却下です。
1台まるまるバイクを買い足せるだけの資金が手に入れば検討しますが。
○リム
(個人的には)お馴染みの、キンリンTB-25の20Hを用意しました。
カタログ重量は440gであるものの、20または24Hの個体に関しては
概ね420g前後である場合が多いようです。
今までに4本ほど同じ銘柄のリムを買っていますが、
この価格からは考えられないほどニップル穴が強く、非常にスポークテンションを上げやすいです。
精度が良く、縦振れを収束させていくプロセスも あっという間に終わります。
リム幅は18.5mmで 最近のホイールから見ると超絶に狭いのですが、
後輪のカーボンリムも20mm幅で 御世辞にもワイドとは呼べないので問題ありません。
組む前に ニップル穴にドリルの刃を差し込み、
ピンバイスよろしく 手で回して軽く削る事で
ニップルとの接触面を仕上げています。
これ以外のアルミチューブラーリムの場合、例えばAMBROSIOのネメシスや TNiのCX22などがありますが
どちらも28H以上の穴数しか無いのが難点です。
ネメシスは価格が倍くらいするのもあり、なかなか食指が動きません。
このリムのデメリットをひとつ挙げるならば、ヴィットリアのコルサ系のタイヤと相性が悪い事です。
これに関しては別でレビューを書きます。
○ハブ
↑メーカーサイトより。(単体の写真を撮り忘れました)
もの自体は、NovatecのA291ハブと同じです。
フランジ穴は丸穴なので、CXやニューエアロといった幅広エアロスポークが使えません。
実測重量は80g弱。
注釈に「オフセット 10.2mm」とありますが、リヤハブの説明文からのコピペミスでしょうか・・・?
このサイト、やたら誤字が多いのが特徴です。
ゼロSLハブという よく似たハブも同社からリリースされており、
こちらはNovatec A291SLハブがベースとなっています。
ハブフランジ寸法は両者とも全く同じ、
ベアリングサイズ(SLの方が小さい)と エンド部分の構造
(ゼロハブが六角ボルト、ゼロSLはキュポンと押し込むだけ)が違います。
今回は、組みあがるホイールのコンセプトから考えると ゼロSLではなく
ゼロハブが適任であると考えました。
ちなみに、前回組んだ前輪は ゼロSL相当のハブで組んでいます。
○スポーク
#14スポークで張りやすく そこそこ軽いもの、となると 必然的に このスポークになるでしょう。
長さと本数が このままで、#14プレーンスポークに置き換えると約149gになるので 意外と大きい差になります。
今回は前輪に使うので問題ないものの、CX-RAYを後輪の駆動側に使おうものなら
スポークそのものの横剛性の低さで なかなかに頼りないホイールが出来上がります。
○ニップル
DT SWISSの3.2mm/12mmアルミニップルで組みます。
以前にも書きましたが、星やサピムのアルミニップルは いまいち信用できません。
DTのアルミニップルは 高テンション下で回しても なかなかにナメにくいです。
○重量
左:これ 右:前回の(↓リンク)
https://cbnanashi.net/cycle/modules/newbb/viewtopic.php?topic_id=15727&forum=30前回組んだものに比べると、28gの重量増加となりました。
内訳としては、約16gがハブ重量の差で 約6gがスポークの重量差、
残りはリムの重量差、といった感じでしょう。
スポークパターンは ラジアル組からイタリアン4本組に変更したものの
これによる重量増加も 微々たるものです。
前回の前輪は「この上なく軽いアルミチューブラーを!」みたいな出来上がりだったので、
今回は あえて重量には目をつぶり、より普段使いしやすい 耐久性の高い前輪を目指して組みました。
スポークをタンジェント組にしたのも、わざわざ重いほうのハブを選んだのも訳あっての事です。
(これらによって劇的に耐久性が向上する!などとは思ってもいませんが こういう小さい積み重ねって大事だと思うのです)
ラジアル組にしておけば ホイール全体重量は597gくらいになったかもしれませんが、そこは全く気になりません。
○完成品
組みあがったホイールが こちら。
ロゴも何もない、こういうシンプルなデザインは たいへん好みです。
前輪がタンジェント組されているのが気に入らない人が多いらしいですが、特に気にはなりません。
スポークテンションですが、カンパニョーロのゾンダと同程度には張ってあります。
テンションメーターでの読み値が同じくらいになりました。
昔のローハイトリムだと こうはいきません。
ちなみに、僕が知るなかで最も軽かったアルミチューブラーの完組ホイールは MAVIC ヘリウム、
次いでR-SYS SLRでした。
○インプレ
まだ50kmほどしか走行していませんが、現状での感想を書いておきます。
・軽さ ★★★★☆
まあ、及第点といったところです。
TNiのカーボンチューブラーに比べれば やはり重さを感じますが、
制動力とのトレードオフなので ここは割り切ります。
とは言っても、ゾンダやシャマルウルトラの前輪よりは軽いので 星4つ。
・剛性 ★★★★★
文句なし。硬いです。
前作と比べても、立ち漕ぎした時の 左右へのブレが明確に少ないです。
これだけでも、タンジェント組にしてよかったと思えました。
ハンドルへの振動は やや強くなった気がしないでもないですが、
タイヤがヴィットリアからコンチネンタルに変わっているので それのせいでしょう。
下りのコーナーで倒しても まったく不安はありません。
というか ねじれにくさでいえば ゾンダをも上回っている感触さえあります。
さすがに シャマルウルトラには負けるか。
・空力 ★★★☆☆
うん。まあまあちゃう?知らんけど。
真面目に書くと、時速40km以上出す機会が まったく無いので、
空力性能が云々と語れるはずもありません。
車輪の抵抗を減らす暇があったら乗り手のほうを鍛えるべきです。
・制動力 ★★★★★
問題なし。きっちりブレーキが効きます。
タイヤが高性能になった影響も含まれてはいるでしょうが、
タンジェント組にした影響が こちらにもあらわれているようです。
雨の時は もちろん制動力は落ちますが、
キンリンのリムは スイスストップのBXPと相性が良いので 心配しなくて大丈夫そうです。
ひとつあった懸念材料が、カンパニョーロのブレーキとの組み合わせでした。
WOホイールで よく使うのがゾンダなのですが、こちらは外幅が20.5mmなのです。
ゾンダとTB-25を履きかえる際、ブレーキワイヤーを引っ張りなおして
シューとリムとの間隔が概ね同じになるよう調整を行うのですが、
静止した状態でブレーキレバーをギュッと握ると
TB-25リムを取り付けた時のほうが ブレーキキャリパーのたわみが大きくなるのです。
その違いは、実走時にも わずかながら感じる事ができました。
リム幅が ある程度は広い方が、ブレーキのたわみが軽減されるのです。
ですが、シューとリムの間隔を従来の半分ほどに絞ったところ キャリパーの顕著なたわみは無くなりました。
これについては 詳しく検証する必要がありそうな予感が・・・
○タイヤとリムの相性
ボーラのリムの断面図を見つけてきました。
タイヤを乗せるところの中央、幅3~4mmほどが凹ませてあるのが分かります。
これは、チューブラータイヤの裏面中央に大きく通っている縫い目を収めるための加工です。
こちらはTB-25の断面図。
溝が無く、また 外周のアールもかなり緩くなっているのが分かります。
実際は ボーラよりも1.5mmリムが細いぶん、図で見る以上に浅く見えます。
例えばヴィットリアのコルサやルビノプロG+など、縫い目のふくらみが大きいタイヤは収まりが悪く、
リムセメントの接着力に頼りきった感じになってしまいますし、タイヤのセンター出しも困難を極めます。
なので、TUFOやSOYOなどの所謂「シームレスタイヤ」を使用するのが好ましいです。
○まとめ
ホイール選びに関する知識が増えたから、という事もあり
非常に満足のいく1本が組めたと思います。
ホイールといえば完組、というのが一般化して久しいですが
真に高性能な完組ホイールって意外に少ないです。
しかも 今回のような「アルミチューブラーホイール」などというものは
完全に過去の遺物扱いとなっているので 完組ホイールが存在しません。
ディスクブレーキの普及もあり、リムブレーキ用のチューブラーホイールが今後 復活する事は恐らく無いでしょう。
だったら自分で組んでやろうじゃんの精神で 何本か組んできました。
もし今後、何かの機会にホイールを買い足す事があったとしても、
手組ホイールを視野に入れている限りは 欲しいホイールが手に入らない、なんていう目には遭わないでしょう。
ところで、こういうホイールを組んで使っていると
「なんでチューブラーなん?」と よく訊かれます。
ただ単にクリンチャー(チューブレス含む)より軽いから、というのもありますが
パンクからの復帰が一瞬でできるから、という動機が大きいです。
パンクしたタイヤを剥がして スペアタイヤを装着して空気を入れるだけ。
こんなに簡便なタイヤシステム、使わないでいる方が勿体ないと思うのは僕だけでしょうか。
価格評価→★★★★★(思ったより安く組めた)
評 価→★★★★★