購入価格: €50.33 (@Bike24、送料別)
Clementの流れをくむChallengeのTUタイアです。
Clementは1980年代にPirelliの傘下となってタイに生産拠点を移しましたが、90年代中頃にはPirelliが自転車タイア事業からの撤退を決定して長い歴史に幕を下ろしました。その時残ったタイの生産拠点を代理店が引き継いで再興を目指したのがChallenge、ということらしいです。名前も引き継ごうとしたもののPirelliと折り合いがつかず、その名は2010年代に入ってから別のアメリカ資本(台湾の総合タイアメーカーHwa Fongの所有者)が引き継いで復活しました。現在のClementはほぼCX用タイア専業で販売していますが、人材や金型などを引き継いだのはChallengeらしいのでこちらが直系と呼べそうです。Clementと同じくイタリアからタイへ生産拠点を移したVittoriaからは、移転時にイタリア国内に残った職人たちがVeloflexを起こして独立、現在もイタリア製を貫いているので国は違いますが両者は境遇的に似ている上、製法や商品名も親戚筋と言えそうなくらい重なる部分があります。
さて、Clement時代のCriteriumといえばロードレース向けの主力商品だったそうで。
ChallengeもVeloflexもロードレース向けの主力タイアにその名を受け継いでいます。かたやVeloflexは320TPI/23mmのTUのみ(CarbonはCriteriumのサイド色違いなので正確には2種)。対してChallengeは、往時のClementと同じケーシングにシルクコードを使ったスペシャルバージョンSeta UltraやOpen TU(つまりWO)を展開するなど、とにかく多品種なのが特徴。TUに限っても22/23/25mmの3種類の幅にブラックトレッド/クリーム(スキンサイド)、オールブラック、トレッド/クリーム(スキンサイド)があります。
今回購入したのはオールブラックの23mm。Bike24では23と25mmは22mmより€5.88高い設定でした。ChallengeのTUは初めてですし、以前買ったチューブがどうにも冴えなかった
https://cbnanashi.net/cycle/modules/newbb/viewtopic.php?topic_id=7927&forum=43ので、いきなりSetaまでは突っ込めませんでした。タイアなどの消耗品は大体Bike24が最安であることが多いのですが、Criteriumはヨーロッパでは1本あたり6,000~7,000円前後という価格(送料別)で、VeloflexのCarbonやCriteriumと比べると2,000円程安く売られているようです。この価格帯のTUだと他にContinentalの上位モデルやVittoria Corsa G+などが絡んできますが、Corsa G+はやや高めなので安い時を見計らって入手し、そちらとも比較も試みてみたいと思います。
全体的に造りは丁寧で、Vittoria程ではありませんが品質コントロールのレベルは高いことがうかがえます。公称重量は260g、実測では252g/272gでした。ハンドメイドなので若干のゆらぎはあるでしょうが±10gに収まっているのでこの2本だけを見れば決して悪くないと思います。近頃のVeloflexはもっとバラついている印象です。
ベーステープはVittoriaと同じコットンテープで、リムと接する面には凸凹が少なく接着面積がキッチリ稼げそう。テープとその下のカーカス層はコットンむき出しですがサイドはラテックスでしっかり覆われているので、雨などで濡れても特別なケアは不要とのこと。意外にもSetaも同様で濡れたら風通しのいい日陰で乾しておけばOKだそう。不安ならAquasureなどのウレタン接着剤を重ねる、リム接着剤を厚めに重ねるなどしておけばベター、と聞きました。
真円度はあまり高くないようです。少なくともVeloflexやVittoriaより低い印象で、なにより気になったのがトレッド下の凸凹。
2本ともバルブと反対に5cm前後のミミズ腫れのようなふくらみがあるので、個体差ではなくなにかしらの製法状の特徴なんだと思います。バラしてみないことには断言できませんが多分カーカスの継ぎ目じゃないかと…走っていて段差を感じることはありませんし、グリップなどにも影響はなさそうです。もしかしたらダイナミックバランスを取るため敢えてカーカスを重ねてカウンターウェイトにしている…ってのは考えすぎでしょうか。偶然かもしれませんがVeloflex Extremeよりは重量バランスが良さそうです。
リムの嵌め合いはややキツめの部類だと思います。Continentalほどの凶悪なレベルではありませんが、片方は手のひらの力だけでは難しかったのでトーストラップを使ってリムから落ちないよう保定しながら格闘しました。30分近く闘って翌日は手のひらが筋肉痛に…どうしても難しい場合は一度5bar位まで入れて放置しておくといいかもしれません。一旦リムに乗せて規定圧内の8barまで入れたところ十分伸びたようで、簡単に乗せられるようになりました。接着には例によってMiyata TTPを使用。
チューブは、前述のレビューに登場したのと同じシームレスラテックスだそうです。WOリムで使用した時はプラグとの摩擦に耐え切れず断裂してしまったようですが、TUは完全に筒状に包まれている上にベーステープもあるので心配要らない、と考えています。アルミ合金製のバルブは長さ約40mm(コア部分含まず)。コアは外せるタイプですが気密性が良くないらしく、2本とも入れたそばからシューシュー漏れているので即交換しました。個体差かもしれませんが、気に留めておいたほうがいいでしょう。チューブ自体のエア保持性能はラテックスとしては良いほうではないかと思います。8barまで入れてTTPの接着効果の発揮を待つこと2日、エアは補充せず放置しておいたところ5.5barまで落ちていました。2日でこれならシーラントを入れたVittoriaのラテックスといい勝負、Veloflexよりも明らかに高い保持力です。シームレスが利いているのかも。
2~3日寝かせた後、いつもの峠でデビューさせました。ひとまず100kmを走ってみたので、ファーストインプレッションということでVeloflex Extreme 22mmと相対評価してみました(各項目Extremeを10点とするスコア)。バイクはBMC SLR01、ホイールはENVE SES3.4で充填圧は8.0bar。タイア以外の条件はすべて共通です。
・転がりの軽さ 8/10
幅は1mm違い(実測したところキッチリ23mm幅でした)、重量は30g程度の違いですがややモコモコした感じでExtreme程の軽さはありません。Extremeなら漕がずにトップスピード65km/h前後まで伸びる坂では2~3km落ちているようです。Corsa Evo CX2やPave Evoと比べると軽く転がる印象ですが、相手がExtremeではハードルが高すぎたかもしれません。底の厚いスニーカーを履いているようでロードインフォメーションはあまり豊富な方ではないと思います。
・コーナリング 12/10
太さと柔らかいコンパウンドが扱いやすさも絶対的なグリップも高めています。おそらくワイドリムである3.4とのマッチングが優れていることもあるでしょうが、跳ねずもたつくこともなくしっかり路面を捉えてトレッド幅一杯まで使い切りつつ寝かせられるので、安心感が高いです。未確認ですがウェットや路面温度の低い状況ではより差がつくと思います。感触としては24mm(実質25mm超)のPave Evoに及ばずとも遠からず、で極めて安定感が高いタイア。25mmは更にどっしりしているのでしょう。ロードフィールはExtremeより希薄でややドロドロしているのですが、そこは好みの問題でしかないので一般的な尺度ならばCRの方が上と評価するのが公平でしょう。
・ブレーキング 9/10
コントロール性は十分で扱いやすいです。トレッドゴムが柔らかめなのでロックさせるとかなり削れてしまいそうですが、Corsa Evo CX2並に厚さがあるので一発で終わることもまずないでしょう。
・乗り心地 10/10
サイドも含め全体的に柔らかく、しっかり路面に追従するので好印象です。Extremeと比べるとやや粘つくような感触がありますが、十分軽快な部類だと思います。絶対的なエアボリュームが大きいのでコーナーでの安定感や荒れた路面での振動吸収性はExtremeをやや上回るように感じます。CRのラインナップの中ではこの23mmがベストバランスなのではないでしょうか。これ以上の高バランスを求めるならSetaを、ということでしょう。一般路での100km前後の日帰りライドを主用途とするなら、より固いであろう22mmや重い25mmではなく23mmが正解な気がします。
・耐パンク性能/耐摩耗性 ???/10
これについては使い切ってみないことには分かりません。ポリエステル混の耐パンクベルトも入っているようですし単発的なパンク耐性はそう低くないと思いますが、50km走ったところでトレッドの様子を見たところすでに磨耗が始まっていて、ところどころ拾った石を跳ね上げた時に入ったと思われる擦過傷も見られました。こういったことはExtremeでは見られないことなので、もしかしたら、踏み抜きパンクに対する耐性はExtremeに及ばないかもしれません。
・仮総評 8.0/10
価格を考えるととても良く出来たタイアだと思います。単項目での印象だけならコーナリングの安定性や大き目の振動に対する吸収性などExtremeより優れていると感じる部分もありますし、これで耐パンク性・耐磨耗性も立証できれば8.5~9と評価したいと思います。非レースでの普段使いや日帰りライドといった乗り心地の良さとコーナーでの扱いやすさを要求される用途ならこのCRは良い選択肢でしょう。
価格評価→★★★★☆(高くないと思います)
評 価→★★★★☆(全体的によく出来ています)
年 式→2017
カタログ重量→ 260g (実測重量 252/272g)