購入価格: ¥4,054 (税込) ※160mm、1つ分の値段
標準価格: ¥4,054 (税込)
『ディスクロードの6ボルトタイプ、160mmのディスクローターとして高性能。上質なブレーキ操作を実感できる』
■ ディスクローターを”SM-RT86”にアップグレード
私は「GIANT DEFY1 DISC」というディスクロードに乗っている。このロードバイクには「TRP SPYRE-C」というロード用のブレーキレバーに対応したメカニカルディスクブレーキがついており、高い制動力とコントロール性を楽しむことができる。ただ、ストレスを感じるほどではないが、フロントのブレーキをかける際にシューッと擦る音がすることもあった。
このままでも問題はなかったが、さらなる快適なブレーキ操作を求めてシマノのレジンパッド「B01S」に交換。その後、ディスクローターも「SHIMANO SM-RT86」にアップグレードした。これには見た目も性能も大満足。さすがDEORE XTのローターだけのことはある。
SHIMANO SM-RT86 160mm
■ 放熱性能の高い”アイステクノロジーローター”
SHIMANO SM-RT86は、取り付けタイプが「6ボルト」のディスクローターだ。グレードはMTBコンポーネントの「DEORE XT」であり、現行のでDEORE XT M8000シリーズでも引き続きラインナップされている。
シマノのカタログでは、「ROAD ディスクブレーキローター」としても名を連ねており、SM-RT86はその中で唯一の6ボルトタイプになる。サイズは160mm、180mm、203mmがラインナップされているが、同じグレードでセンターロックタイプのSM-RT81と異なり、140mmはラインナップに存在しない。
SM-RT86の最大の特徴は、「ICE TECHNOLOGIES(アイステクノロジー)」が採用されていることだ。これはディスクブレーキにおけるブレーキ時の熱問題を解決する技術の総称で、ステンレスの間に放熱効果の高いアルミの芯材を挟んだローターは「アイステクノロジーローター」と呼ばれている。この技術はフェードの減少・パッドの長寿命化・ブレーキの静音性に貢献するという。さらに放熱性能を向上させた「アイステクノロジーFREEZAローター」というものもあるが、残念ながら6ボルトタイプはリリースされていない。
DEORE XTの6ボルトタイプのアイステクノロジーローター、レジンパッドとメタルパッドに対応する (左)
スパイダーアームに”ICE TECHNOLOGIES”のロゴが入る (中央)、ステンレスの間に放熱効果の高いアルミ芯材を挟んだ構造 (右)
■ SM-RT86の取り付け方法 ※付属の説明書は古いので注意
SM-RT86の着脱は、T25トルクスレンチで行う。だが、いざ説明書どおりに取り付けようとしたら、「固定間座」と呼ばれる六角形のスペーサーが全く見当たらない。ネットで調べたところ、SM-RT86には固定間座が付属しないことはわかったが、これを使わないで取り付けるのか、それとも別途用意する必要があるのかがわからなかった。だから、後日シマノのカスタマーサポートに連絡することにした。
説明書にある”固定間座”は付属品の中に見当たらない
【現行品では固定間座を使わない】
シマノのカスタマーサポートによると、現行品では取り付けに固定間座は必要ないとこのことだった。SM-RT86には古い説明書が付属しており、正しい取り付け方法はシマノのサイトにあるという。具体的な方法は、シマノのサイトからダウンロードできる「ディーラーマニュアル 基本作業書」の68ページに書いてある。ちなみに、シマノの2013年のカタログでは、SM-RT86にも固定間座を使うイラストがある。
現行のSM-RT86では、取り付けに固定間座は必要ない
【ゆるみ止め板をマイナスドライバーで起こす必要はない】
SM-RT86は、基本作業書の「6本ボルト留めタイプ(ロックワッシャー付き)」という取り付け方法に該当し、ローター取り付けボルトの裏側にある凹凸が、「ローターロックワッシャー」と呼ばれる薄い板の突起に引っかかることで、ボルトの緩みを防止する仕組みになっている。ローターロックワッシャーは、付属の説明書では「ゆるみ止め板」と全く見分けがつかないが、基本作業書ではそれぞれ違うものとして扱われている。だから、無理にローターロックワッシャーの端を起こそうとして、ローターが傷だらけにならないように注意が必要だ。
ローターロックワッシャー(ゆるみ止め板)の端を無理やり起こす必要はない (左)
ローターロックワッシャーの突起にボルトの裏の溝が引っかかってゆるみ止めになる (中央)、取り付け直後のSM-RT86 (右)
■ TRP SPYRE-Cでは、アームがキャリパーに干渉しない
SM-RT86をはじめとしたアイステクノロジーローターは、厚みのあるスパイダーアームが採用されている。このスパイダーアームがAvid BB7のキャリパーに干渉することは、CBNのレビューで初めて知った。また、あるショップのブログでは、同じシマノ製でも下位グレードのキャリパーでは、アイステクノロジーローターに対応していないため干渉する事例が紹介されていた。
DEFY1 DISCに付属するロード用ディスクブレーキ「TRP SPYRE-C」なら、スパイダーアームとキャリパーとのクリアランスにかなり余裕があるので全く問題はない。これはSPYREやSPYRE-SLでも同様のはずだ。
TRP SPYRE-Cのキャリパーに、SM-RT86のスパイダーアームは干渉しない
■ ホイール周りの重厚感が増し、軽量化にも貢献する
SM-RT86の視覚効果は絶大で、DEFY1 DISCのホイール周りの重厚感が増し、自転車全体が引き締まった印象になった。特にスパイダーアームの厚みとブラックの塗装が効いている。ローターに空いている穴が少ないことも、DEFY1 DISCのルックスに貢献している。DEFY1 DISCのルックスを高める上では大当たりで、実際に使う前から気持ちが高ぶった。
SM-RT86のスパイダーアームは重厚感があるが、ディスクローターのみの重量は114gとDEFY1 DISCに付属するローターよりも8g軽い。これだけ重厚なフォルムでも、しっかり軽量化を果たしているところはさすがシマノだ。
アイステクノロジーローターはDEFY1 DISCのホイール周りの重厚感を増す
■ 様々な性能の向上を実感。特に静粛性の高さが際立つ
私はロード用のブレーキレバーに対応する「TRP SPYRE-C」のキャリパー、パッドはシマノのレジンパッド「B01S」と組み合わせて使用している。DEFY1 DISCに付属するローター(おそらくTektro TR140-2)からSM-RT86に交換したところ、走行中に感じられるほぼ全ての性能の向上を実感。パッドだけを交換したときよりも、はるかに大きな変化に大変驚かされた。
シマノのレジンパッド”B01S”と組み合わせて使用
【慣らし運転】
交換直後の走行は、ブレーキ時にシューッと大きな音を立て、タッチにもカサつきがあり、高い制動力も得られない。パッドのB01Sとの組み合わせでは、あたりが出るのが意外に早く、5kmくらい走ればすぐに静かになり、10kmくらいには高い制動力を発揮し始める。その後は、走行を繰り返すにつれて安定して高い性能を発揮するようになった。
【タッチのよさ】
DEFY1 DISCに付属するローターでは、B01Sに交換しても、ブレーキ時にパッドがローターを擦る感じが少し残っていた。一方、SM-RT86では、パッドとローターのかさつきが激減。パッドがローターを柔らかくギュッとつかむような感覚が増した。これはローターの穴の少なさが効いているようで、ドライコンディション用のシューを装着したリムブレーキで、アルミリムを挟んだ感じにますます近くなった。
【静粛性】
静粛性の高さは、タッチ以上に大きな変化だ。高速走行時のスピードコントロールにおいては、風切り音や周りの音も影響してほぼ無音。高いスピードからの急減速でも、シューッと擦る音が極めて小さく、ストレスのないブレーキ操作ができる。もちろん、音鳴りが生じることもない。停止の直前にはわずかに擦れる音が生じるが、当然これは許容の範囲内。ドライコンディション用のシューをつけたリムブレーキほどではないが、それにも迫る高い静粛性だと思う。
静粛性はDEFY1 DISCに付属するディスクローターを大きく上回る
【制動力・コントロール性】
下り坂や高いスピードで減速する際に、SM-RT86による制動力の向上をはっきりと感じることができる。これにはローターの剛性感も関与しているようだ。元々、SPYRE-Cは引きがあまり軽くないブレーキだが、レバーを軽く握っただけでもしっかり減速してくれる。加えて、ローターをSM-RT86に交換したことによって、ますます楽に高い制動力を発揮できるようになった。また、どのスピード域からでもスムーズに減速できるが、高いスピードほどコントロール性の高さが際立つような印象を受けた。
■ ワンランク上のブレーキ操作
SM-RT86の導入は大当たりだった。正直、ディスクローターひとつでここまで変わったことに大変驚かされた。ロード用のディスクブレーキ「TRP SPYRE-C」のキャリパーとシマノのレジンパッド「B01S」との組み合わせにおいては、走行中に感じられるほぼ全ての性能の向上を実感。制動力は以前のローターでも十分だが、タッチのよさや静粛性の高さによって、ますます快適なブレーキ操作になった。個人的には、SPYRE-C、SM-RT86、B01Sの組み合わせは、総合評価ではキャリパーブレーキのBR-5800を超える性能だと感じている。
今後は、ディスクロードに対応する140mmのサイズや6ボルトタイプのアイステクノロジーFREEZAローターの登場も期待したいが、今のところはSM-RT86の160mmでも十分すぎるほど。6ボルトタイプのアイステクノロジーローターの最高峰だけあって、ワンランク上のブレーキ操作を味わうことができた。SM-RT86は、メカニカルディスクブレーキを搭載したディスクロードにはオススメのディスクローターだ。
価格評価→★★★☆☆ (前後で8,000円出す価値がある)
評 価→★★★★★ (全てにおいて素晴らしいディスクローター)
<オプション>
年 式→ ー
カタログ重量→135g