白色LEDは電流値を大きくすれば明るくなるのですが、色味が変化する傾向があります。というわけで、演色性が重要となる白色LED照明では、一般的にはPWM制御という方式で調光しています。昔の自転車用LEDライトでは、電流制限用の抵抗を持ち替えることで、実際に流す電流値を変えて明るさを変えていた(と推定される)のですが、最近の自転車用LEDライトはどうやら、PWM制御を使うものがあるようです。
LEDは元々、光通信の光源としても使われていた経緯があり、高速で光強度をそのまま変調することが可能で、デジタル符号をそのまま乗せることもできます。つまり、非常に短時間で電流値をゼロからある値に上げ下げしても、明るさがそれにちゃんと追いついて、ゼロと点灯の間を行き来するわけです。インバータ点灯ではなかった昔の点灯方式の蛍光灯などは、商用周波数50/60Hzのおかげで100/120Hzで明るさが変動していて、敏感な人はそのチラつきが気になったようですが、LEDのPWM調光では、この繰り返し周波数をずっと高く設定し、電流をON-OFFで制御しています。
というわけで、電流を流す期間と停止する期間の比率を変化させると、調光ができます。ON期間が100%でOFFが0%なら明るさ最大。ONが50%でOFFが50%なら明るさ1/2、ONが20%でOFFが80%なら明るさ1/5となります。こういう調光方式をPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)方式と言います。こんな感じ。
PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)で電流をON-OFFして調光する、の図
これは電流をON-OFFする周期が1/500秒、すなわち周波数が500Hzの場合で、一番上のグラフが、電流を流すON期間が75%、OFFが25%の場合、一番下が、ONが25%でOFFが75%の場合です。ON期間にはLEDが一定の明るさで光ります。光っているときの電流値がすべて同じなので、色味の変化がなく、しかしON-OFFが早すぎるので点滅に気づかず、単に明るさが変化しているだけのように感じる、ということになります。さらに、このON幅をある信号に合わせて変化させて情報を乗せることも可能で、受け手はLEDと逆動作する光検出器を使って信号を復元させることもできます、つまり光通信(完全に蛇足)。
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さて手持ちのCATEYE Volt300です。
https://cbnanashi.net/cycle/modules/newbb/viewtopic.php?topic_id=11201&forum=89&post_id=24727#forumpost24727このLEDライトがPWMをやっているおかげで、乗り手は、ある現象を目にすることになります。
Volt300の明るさ「強・中・弱」のうち、中または弱でMTBに乗っていると、ライトに照らされた前タイヤのブロックパターンの流れが、Volt300の光強度変動にシンクロするんです。多分、気が付いておられる方も大勢いらっしゃるはず。シンクロするということは、光強度が周期的に変動している、ということです。ああ、PWM調光しているのかもなあ、とは思いました。単に光が強弱を繰り返しているだけなのか、それとも、きっぱり明滅しているのか?判然としません。私のMTBのタイヤはブロックパターンが単純に等間隔で並んでいるわけではなく、間隔の広狭が交互に来るパターン故、シンクロして見える像もそれほどくっきりしているわけでもないので、完全明滅のPWMでもクッキリとシンクロしないかも知れない、というのが判然としない状況に拍車をかけます。シンクロする車速は7km/h少々の付近、14.7km/h付近、22.2km/hなどです。明滅周波数としてはいくらでも考えられますが、このシンクロ車速の例からは、強くシンクロするLEDのPWM周波数として168Hz、330Hzなどが候補に挙がる、ということが言えます。
よ~く見ればブロックの間隔が、広広狭狭の順番で並んでいるじゃないか・・・!
LEDのPWM周波数が明らかになる日が訪れたのは、1月26日の朝5時頃。氷点下1℃程度の中、宇都宮市内北東部の山に向かってMTBを走らせていたところ、細かい雪が降ってきました。
見えました!こんな風。(写真じゃなくて申し訳ない)
何だかビデオ・ゲームの主人公になった気分?
雪がクッキリ、明滅しています。めちゃくちゃキッパリ。つまり、調光はPWM方式であることが判明しました。スギ花粉やクルマが巻き上げる煤塵ではこんな風にきれいに見えません。この日はほぼ無風でしたが、車速から推定される雪の相対速度と、明滅の1周期長さから、PWM周波数は330Hz程度であることもわかりました。
私の手持ちのvolt300は明るさが強、中、弱と、点滅(ハイパーコンスタント)の4段階です。このうち、強が100%オン、中が、えーっと40%程度オン、弱が20%程度オン、かなあ? となっています・・・というのが実は、この小雪の日に判明した、というわけ。PWM調光はLED照明の世界では珍しくもなんともないのですが、CATEYEもちゃんとやっていたんですね。ちなみに4段階目の点滅というのは、フルONと弱のPWM駆動を周期的に繰り返しているようです。普通の点滅と同じくらい鬱陶しく感じられ、他人に対しては凶器にしか見えないので私は絶対に使いませんが。(…余談)
暗がりでステンレススポークを一本振り回して、これをシャッター速度1/60秒で撮影して、スポークが何本、撮影されるか、などというやり方でも凡そのPWM周波数がわかります。つまりvolt300が連続ストロボの代用。
CATEYEの前照灯はvoltにたどり着くまで、変身に次ぐ変身を重ねてきましたが、実は過去にもPWMライトがありました。HL-EL510という旧品がそれ。ただし、どうやらDCDCコンバータを搭載せず、LEDと電流制限抵抗にかかる電圧がNi-MHの端子電圧で決まってしまうため、ダラダラと暗くなる昔ながらのライトではありました。
https://cbnanashi.net/cycle/modules/newbb/viewtopic.php?topic_id=3340&forum=89*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*
さて、あなたのライトの調光はどんな風でしょうか??
評 価→★★★★☆