購入価格: 前後ペア¥11,880 (@COG’S、送料別)
カムの変位を利用して固定力を得るクイックリリース(QR)と違い、ボルトと同じくネジの締め込みのみで締結するスキュワー。昔はスキュワーといえばRingleがその代名詞でしたが、現代ではこのRWSでしょう。
今回購入したのは前後ともにアルミ合金製レバーとチタンシャフトを組み合わせたもので、実測重量はF42g+R44g=86gでした。
カムを使うQRは構造の特性上、レバーを倒していって固定力がピークに達した後最後まで倒し切ると、ピーク時よりも若干固定力が落ちてしまいます。倒しきったところで固定力が最大にならないのは、何かの拍子にレバーへ力が加わった時に勝手に開いてしまうのを予防する為でしょう。一方スキュワーはボルトとナットを締めるのと同じ原理なのでこの現象とは無縁で、レバーとカムを使う場合よりも強く締め付けても簡単に緩めることが可能です。レバーは構強い締め込みが要求されていて(最低15Nm)、カムタイプのQRより50%増しの締結力を発揮するとDTは主張しています、。ねじ切りBBやカセットロックリング程ではないにしても、ブレーキキャリパーのセンターボルトを締めるバックナットやペダルをカーボンクランクへねじ込むよりも少し強い位のトルク感です。
レバー、ナット側両方にスチール製の溝付きリングが埋め込まれているのであまりバカ締めせずともドロップエンドに強烈に食らいつきます。力を入れやすいレバー形状になっていますしレバー側には座金も備わるので緩められなくなるのを心配して加減をする必要はありませんが、あまり力一杯締め込むとナットかスレッドがナメてしまうのでやりすぎは禁物。
シャフト材質はいわゆる64チタン合金です。軽量化に血道を上げる某○uneのようにM5ファインピッチを使ってみたりバテッド加工してダイエットさせたりはしていないので、チタンとは言ってもそれほど軽くはありませんが、さすがスポークメーカーのDT Swiss、スレッドは切削ではなくダイスでの転造加工を用いているのですぐに欠けたりはしないでしょう。
さて、肝心の走行感はというと…強度的にスチールシャフトよりも落ちるはずのチタンシャフトでも、〜60km/hなら先にレビューしたカンパのQR12-BUUBFRと同等レベルの締め付けが出せているように感じます。今の所BMC SLR01用として使っていますが、エンド周りの剛性感に全く遜色がありません。QRの性能差は平地や平滑な舗装では意識されにくいですが、路面の条件が悪く前後左右の荷重移動が頻繁になるほど浮き彫りとなるもの。例えば私がよく行く峠は路肩に逆バンクが多く舗装も荒れ気味で、ヘボいクイックだと操舵の反応が僅かに遅れたり不自然な揺り戻しが入ったりして場合によっては手に汗握る思いをさせられることもありますが、カンパQRやRWSのレベルになるとフォークとホイールをガッチリ繋いで余計な反復や反応の遅れを防いでくれるので安心感に大きな差が出てきます。チタンシャフトでしたし、Mavic並の剛性が出れば期待通りだなと思っていましたがどっこいカンパQRと並ぶレベルのハンドリングレベルだったので、正直驚きでした。もっとスピードレンジが上がると印象が変わるのかもしれませんが、少なくとも公道でその違いを感じることはなさそうです。チタンでこれですから、スチールシャフトなら低速からでも違いが感じられるほど剛性が上がるということも十分あり得るでしょう。
参考までに手元にあるQRでコーナーでの扱いやすさや操舵応答性を基準にランク付けしてみると…
1. DT Swiss RWS (チタンシャフト)・カンパ QR12-BUUBFR/QR13-80FR
2. カンパ QF-RE121/QR-RE121
3. Mavic (スチールシャフト)
4. Tune DC15+16 (前後ともチタンシャフト)
5. Tune DC14 (前アルミ合金、後チタンシャフト)
6. ENVE Composites (チタンシャフト)
このうちどこでも安心して体を預けられるのは上4つまでで、DC15+16はギリギリ及第点。下位2つは平地オンリーならともかく、荒れた道でのダウンヒルが入るコースで積極的に使いたくなるレベルには残念ながら達していません。
最後にレバー形状についていくつか書き記しておきます。旧型はすでにスチールシャフト版の方で皆さんがレビューされているレバーがフォークレッグ・シートステイに沿う形状でした。
https://cbnanashi.net/cycle/modules/newbb/viewtopic.php?topic_id=12370&forum=27https://cbnanashi.net/cycle/modules/newbb/viewtopic.php?topic_id=11358&forum=27レバーの材質も、以前チタンシャフト版はカーボンで強化されたポリマー製、スチールシャフト版はアルミ合金製のレバーをそれぞれ採用していましたが、2年程前から全てアルミ製に統一され、2017年現在はレバーの形状もMTBと共通の形状になりました。まだ旧デザインのレバーが出回っているようなので、購入する際は前もって確認しておくべきでしょう。というのも、使い勝手がかなり変わってくるからです。
https://www.dtswiss.com/Components/RWS/RWS-titan-Road-or-MTBhttps://www.dtswiss.com/Components/RWS/RWS-steel-Road-or-MTBもともとロード用とMTB用でレバーの形が違っていたのは、MTBはサスペンションのロワーレッグやドロップアウトの覆いを避けるためのクリアランスを持たせたデザインだったからなのですが、フォークやチェーンステイの造形が厳つい最近のロードフレームでも旧デザインレバーはかなり相性が悪くなります。両者のクリアランスがどの程度違うのかは、下の写真を見れば一目瞭然。
旧ロード用はレバー付け根でドロップアウトと接触する面とレバーの先端がほぼツライチで揃う位置関係で、MTB用と同じになった新デザインでは約15mmの間隔が空いています。旧型レバーのデザインでは、少しでも横に張り出しているフォークやステーと組み合わせるとレバーが干渉して1/2〜3/4回転回すたびにスプリングの軽くないレバーをいちいち引き上げてやらねばならず、かなりイライラが募ります。実は2年ほど前に旧デザインのものを入手していたのですが手持ちのバイクでは相性の問題から使い勝手の悪さばかりが気になって、ろくに使わないまま死蔵していたのでした。今ではレバーを引き上げず回転方向の動きだけでホイール脱着が可能なのでQRと比べてもそう不便だとは感じていません。重量面でも新型の方が優れているので、敢えて旧型を選ぶ理由はもうないのではないでしょうか…もしかすると旧デザインの方が空力特性がいいというのはあるかもしれませんが。
価格評価→★★★★☆ (高いとは感じない)
評 価→★★★★☆ (性能は満点、新型なら使い勝手も全く問題なし)
年 式→ 2017
カタログ重量→ F45g+R46g=91g (実測重量42g+44g=86g)
ちなみに旧ロード用は前後共+2gずつでした。