ギヤレシオに対する考え方は十人十色。乗り方、価値観、美意識などを拠り所として、色々な選択があると思います。ギヤの入手可能性という制約もあります。ここでは私の全くの個人的な見解をご紹介したいと思います。全く当てはまらない方が大勢いらっしゃると思います。特に競技系の方にはほとんど参考にならないでしょう。細かい話をグタグタと書いてしまったので、読んで損した!と言う方もおられることでしょう。・・・そうなってしまったらどうぞお許しください。
私は、ロードバイクを通勤で使っています。現在、フロントが【50 39】、スプロケが9速で【13 14 15 16 17 18 19 21 23】です。厳しい登坂もないのでローエンドは39×23もあれば十分です。平地走行での基準は、35km/h巡航時でクランク軸の回転速度(cadence)が105rpm付近です。これは50×19のギヤ選択に対応します。少しcadenceが高めかも知れません。若い頃はもっと低めで巡航していましたが、何故か歳とともに上がってきています。身体的な効率がよいcadenceは90rpm付近との説もありますが、近年、100rpm前後のcadenceで通勤しているロードをよく見かけるようになりました。
で、この50×19。ロー側の残りのスプロケは21と23の2枚しかありません。アウターでロー側2枚など使いたくない、と考えるならばもう後がありません。そう考えると、スプロケは19の隣の18で巡航したいと思ったりします。9速スプロケならば6速目(ここではトップを1速と呼んでいます)で巡航したい・・・。回転を上げて走っている通勤ロードの方を後ろから観察すると、皆、「後がない」状態で軽快に回しています。
次にトップエンドは50×13です。これで140rpmまで回すと70km/h近くまで到達します。もちろん平地でそんな速度が出るはずもなく、ちょっとした下り坂で踏んだりしたときの話です。私の有効cadence上限は170rpm程度ですので、140rpmという数字は十分安定した走行ができる範囲です。競技をやるわけでもなく、パワーがあるわけでもない私にとって、140rpmまで回して70km/hすなわち、 50/13 = 3.846 というレシオ設定は必要十分です。また、70km/h以上は怖い、という情けない事情も絡んでいます。下りで十分安定して回せる140rpmで、70km/hが出れば、それで十分。実際に70km/hを出すことなど年に一回程度なのでもう少し軽くてもよいかな?と思うくらいです。無論、競技者はこんなギヤ比では勝負にならないでしょう。下りを90km/hで踏み続けるならば53×12などという巨大レシオが俄かに現実味を帯びてきます。
次に、インナーは39ですが、アウターに対する比率は 50/39 = 1.28 です。この段差は大きい値ではなく、問題ないでしょう。【50 39】×【13~23】の9速と、コンパクトドライブでよく見る標準的組み合わせ【50 34】×【12~25】のギヤ比(シマノの場合)を比較するとこんな風になります。
標準的な組み合わせではアウター6速以降でギヤが2枚飛びとなります。また、アウターからインナーに落として同じレシオにする場合、スプロケを5枚移動します(矢印で表示)。またインナーでロー側のスプロケを使うと、アウターギヤにチェンが接触する可能性もあるので、アウターとインナーで同等のギヤ比を取り得る範囲が非常に狭くなります。こればできれば避けたいと私は考えています。また前者は、常用ギヤが7速目だったりするとその前後にチェンジするときにいずれも2枚飛びになり、これもロードではできれば避けたいところです。
もちろん、さすがコンパクトドライブで、ローエンドは 34/25 = 1.360 までカバーしており、ノーマルの 39/23 = 1.696 では10%の坂で息絶えていた人も、12%以上の劇坂に耐えられる、という単純素朴な計算ができます(複雑な計算は誰かに譲ります)。日々の通勤や、帰り道に遠回りしてせいぜい斜度10%以下の登坂をする程度の用途なら、【50 39】×【13~23】は非常に扱いやすいギヤ比です。ただし残念なことに(≒驚いたことに)現在、シマノはノーマルクランクで50Tアウターを用意していません。
さて、山岳を含む過激(?)サイクリング用として、この6年ほど私は20インチ(451mmリム)小径車を使ってきました。ノーマルクランクでローエンドは38×23で、20インチタイヤを勘案すると、700Cロードの34×27付近相当のギヤ比になります。これなら非力な私でも何とか劇坂を上り続けることができます。余談ですがこの小径車、ホイールベースはロードと同等で、長距離を走るGT(グランツーリスモ)風味(!?)の位置づけを目指して作ったものです。
そして先日レヴュウさせていただいたCTSアウター46T
https://cbnanashi.net/cycle/modules/newbb/viewtopic.php?topic_id=4373&forum=36#forumpost6767ですが、これも700CのGTバイクを狙った自転車に取り付けるつもりでおります。つまり、山岳を含む過激(?)サイクリング用です。たとえば長野県の豪雪地帯、栄村で真夏に行なわれる、110km足らずで累積標高差2700mに達するサイクリングイベントなどを走りたくなるような自転車です。なのでローエンドは23Tではなく25Tを選択、ここでは【46 34】×【12~25】、またはトップスピードを捨てて【13~25】を考えます。
標準的なコンパクトドライブの【50 34】×【12~25】とスプロケのトップを13にした【50 34】×【13~25】ギヤ比を比べてみます。
私の巡航ギヤに着目すると、トップを13に変えただけで、中間速度域のスプロケが追加され、隣が1枚飛びで構成されることがわかります。もちろん、トップエンドは50×13で私には最適です。ただし、50/34 = 1.47 という値はアウターとインナーの段差としてはやや大きいような気がします。そこでCTS46Tアウターの登場となります。
【50 34】×【13 ~25】と【46 34】×【12~25】を10速で比較してみます。
段差は46/34 = 1.353 で、余裕のあるイン~アウトチェンジが可能です。ただし、ギヤ比2.63付近のギヤのつながりが今ひとつです。どこが今ひとつなのか?と思われる方が大多数だと思いまが、私にとってこの付近のギヤ比は、乗れば乗るほど重大なポイントだ、と思わざるを得ません。(馬鹿ですねぇ~)
この際、スプロケのトップを13にしてしまおうか?と考えました。
するとこんな風になります。
巡航ギヤ付近のつながりは文句なしです。140rpmでの最高速度は63km/h程度に落ちますが、まあ、その気になれば回すだけですので問題はないでしょう。凡人の私が滅多に出くわさない60km/h以上でのパワーオンと、四六時中使う巡航ギヤの使い勝手のどちらを選ぶか、といえば後者です。トップギヤが46×13では、まるでジュニアスポーツ車ですが、試してみる価値はあると思います。
もうひとつ解決策があります。というか本来あったはずです。現在の12~25Tの歯数構成を少し変えてみます。途中の19 21 23 25 を 18 20 22 25 に替えるというものです。
私にとってはこれがベストです。断然、これを選びます。ローエンドは所詮エクストラギヤである、との考えに立てば、23→25の2枚飛びではなく、22→25の3枚飛びは別段、使いにくいものではないはずです。というよりも、むしろこの方が適切なのでは?いかがですかシマノさん?
シマノはプロ・メカニシャンの作業性を向上し、さらに歯先形状を専用設計して変速性能を向上させるために、グルーピングされたカセットスプロケを導入しましたが、その過程で22→25の3枚飛びは顧みられなくなっています。かつては、スプロケ歯数をバラで設定できる時代がありました。1980年初頭は6速から7速への移行期でしたが、6速で見ると、13 14 15 17 19 21 を基準として、結構いろいろなギヤ比をマスプロ市販車の中に見ることが可能です。10速時代になって数字が10個も並んでしまうと、こういった数値は見た目は微差であり、トップエンドとローエンドだけに注目すればよいとなってしまったのかもしれません。
シマノの努力のおかげで変速性能は向上しましたが、同時につまらなくなっている面もあると思います。・・・おっと、カンパ11速を選べばちゃんと18Tが入っています。それで解決かも知れませんね!
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しかし、若い方はこんな細かいことに拘る必要はありません。もっと自由に自転車を楽しんでください!
私の最初のロードは1982年、大学2年の時にバイトの末に、本当にようやく手に入れたものですが、【52 42】×【13 ~20】の7速でした。うれしくてギヤ比なんて考えたこともなかったのですが、ローエンドのギヤ比は何と2.1です。よくこんなもので信州の地蔵峠を上ったものだと思いますが、当時は「うーっ、重いなあ」と思っただけで、何も頓着していませんでした。そのほうが幸せなのかもしれません。
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