孤独のクリスマスライドhimeontheroad 2019-12-26 1:21 6077 hits himeontheroadさんのすべての写真 フォトギャラリーTOP ここ欧州では、クリスマスは家族のものだ。イルミネーションはあるし、プレゼント商戦もあるが、日本と比べると恋人向け感は薄れる。クリスマス前に彼氏を作らなきゃ!なんて馬鹿げたプレッシャーもない。関係ないが恋人たちが人目をはばからずキャッキャウフフするのは日常茶飯事なので慣れた。 だが… 12月25日、気だるい午後の光。海に面した公園のテラスで、水とジェルで一息つきながら、女性サイクリストは考えた。 なんだ、この孤独感は! 周りにいるのは、クリスマスの食事をたらふく食べた後、散歩しに来た家族連れや友人グループ。そりゃ、アベックの割合は日本より少なかろう。でも今日この日、自転車でソロライドしてるのなんて、彼女だけなのだ。当然と言えば当然だが。 昨日の夜、友達以上恋人未満なサイクリストとチャットしていて、クリスマスも正月も日本に帰らないから一人だよなんて話をしていたら、数十分後なぜか彼が彼女のアパートにいて、それはそれで嬉しかった。いや、わざわざツンデレを発揮する必要もあるまい。嬉しかった。 今朝は散歩がてらカフェで一緒に朝食を食べたあと、彼は家族との食事があるからと帰っていって、それは当然なので別に責める気はまったくない。むしろ家族の用事があるのにわざわざ来てくれた気遣いがびっくりだ。普段はめちゃくちゃ素っ気ないのに。 どうせ今日も暇だから昼でも食べたらその辺をちょっと走るよ、なんて話したのを有言実行すべく走りに来たのはいいが、こんな孤独感に打ちのめされるとは思わなかった。 件のサイクリストとは、どうにも波長が合わない気がしているので、この関係はもうすぐ終わるだろう。相手もそれを承知のはずだ。 いかんいかん、ネガティブ思考にとらわれてはだめだ。私には自転車という最高のパートナーがいるじゃないか。 それに日が落ちる前に帰らないと。今夜は特製ビーフシチューにとっておきのワインだ。 女性サイクリストは迷いを断ち切るように頭を振ると、再び走り出した。カチリ、とクリートの小気味良い音を残して。 |