購入価格 $40 (個人売買)
グロス3K、マット3K、オイルスリック(=グロスUD仕上)、ホワイトアウト(=白のパウダーコート)といくつかバージョンがありますが、これはマット3K。いずれもカーボンファイバー製のボトルケージなのですが、シンプルな曲線で構成されたデザインで派手なロゴもないため、似合うバイクは選ばないと思います。いいデザインだとは思うのですが、いかにもプリプレグをハンドレイアップしてヤスリで整形したような、ちょっといびつな手作り感があります。実用上はなんら問題はなくクリア塗装もとても綺麗なのですが、レーザーかウォータージェットでスパッと均一なラインで切り出されたTacx Tao Carbonあたりと比べてしまうと、雑な印象が。そもそも見た目に惹かれて買ったのですが、Tuneあたりのキワどいカーボンパーツよりはマシとはいえちょっとガッカリ…外観仕上げのことはともかくとして、このケージ最大の特徴はその突出したグリップ力と頑丈さにありました。
まず見た目からして不安になる強度について。結論から言ってしまうと、強度について心配はまず要らないと思います。芯にフォームコアを仕込んであるとのことで、華奢な見た目ながら随分固いケージに仕上がっています。左右のおむすび形をしたループがサイドからボトルの胴を抱え込む固定方式で、ボトルを抜き差しすると径に合わせて拡がったり戻ったりするのですが、ボトルを無理に手前にもぎ取るような乱暴な取り出し方さえしなければ折ってしまうことはないでしょう。手で握ったときの変形の少なさはTacx Taoのアルミモデルもしのぎ、これより固いケージはそうそうないでしょう。全体的に肉厚で、実測で1個あたり31g(ボルト含まず)とカーボンケージとしては凡庸な重量ですが、これだけ強度があるなら納得できます。
そしてボトルのグリップ力。素材を問わず、私が今まで使ってきたケージの中では最強でした。一般的な径のボトルに対してもかなりきつめに作られていて、Tacx Sourceのような太くて柔らかいボトルを入れると潰れて変形するのが判る程締め付けが強いです。しばらくはTaoのルースフィットに慣れてしまっていた私としては、"出し入れしにくい"と評したくなる一歩手前の強さ。
(ムニュッ、と潰されているのがこの写真で分かるでしょうか?)
Specializedのような一般的な太さのボトルであればロングサイズに中身を目一杯詰めてトレイルを走っても、脱落の心配は要らない位のグリップ力があります。このケージは"挿し込む"というより"押し込んで挟んでおく"という表現のほうがあっていると思います。深いポケットにスッポリ落とすように収納し出し入れも引っ掛かりがなくスムーズなTacx Taoとは対極にあるような固定力で、本当にボトルがガッチリ掴まれている感じです。ロードユースに限るならこれは少々オーバースペックかも…というのも、強い固定力と引き換えに抜き差しには少々コツが必要となり、ケージに対して斜めにボトルを抜き差ししようとするとボトルはなかなか抜けないので、できるだけダウンチューブやシートチューブと平行に、押し込む/引き出すようにしてボトルを抜き差しする必要があります。これに慣れてしまえば気にならないのですが、慣れないうち、特に疲れている時にはストレスに感じてしまうことが何度かありました。個人的にロード用途としてはTacx Taoの固定力と出し入れのしやすさのバランスは絶妙だと思うので、ロードやツーリング用で使いやすさを重視するならTaoのほうが良さそうです。路上ならTaoを破損したりボトルが脱落してしまうことはそうないと思いますが、固定力の強さと強度についてさらなる安心感を求めるなら、Mandibleの圧勝。トレイル用途などで、とにかくボトルをビシッと固定しておけるケージを探している人には最高の選択肢となるのではないでしょうか。
あとは細かいことですが、ボトルや取付ボルトとの組み合わせに若干注意が必要です。
まず取付用ボルトについて。
本来ならボルトは専用のものが付属するようですが、売主が紛失していたため自分で用意する羽目になりました。ケージ中心の溝にうまく収まるボルトが必要なのですが、これがなかなか難儀なサイズです。溝がかなり浅く、ヘッド高3mm以内の極低頭ヘッドのボルトを使わないと突き出したボルトの頭が出し入れのたびにボトルを引っかき、無用なキズを増やしてしまう模様。通常のキャップボルトでは5mm近い高さがあるし、ナベボルトでもM5サイズでは3mmにおさまるものはそうありません。しかもケージ本体に見合う軽合金製で、と欲張るとなかなか見つからず、手元にあった各種ナベボルトもミノウラのジュラルミンボルトもSchmolkeのカーボンボルトも全てダメ…キズを気にしないのならば、一般的なサイズのM5ナベボルトでボトル出し入れに大きな支障はなさそうでしたが。結局バイクのフェアリングを固定するためのアルミナベボルト(Poggipolini製、バイク用品店で1本250円程だった)が手に入る中でもっとも低いものだったので、流用しました。ボルトを直に締めこむとクリアコートに傷が入るので、気になる人は薄いワッシャなどを入れておくといいでしょう。ラジコンパーツ売り場で手に入る車高調整に使うための薄いシムがピッタリです。フレームに取り付けるための穴は、通常ポジションと、ロングボトルや取り出しの厳しい小サイズフレーム向けにケージ位置を下へオフセットできるポジションの2つ(無段階ではなく2パターン)開けられていて、選ぶことができます。選択肢があるのは歓迎ですが、実際にはFDクランプやクランクアーム+足との位置関係次第で干渉してしまう場合があって、必ずしもオフセットした位置が都合よく使えるとは限らないと思います。トップの写真では通常ポジションで固定していますが、極太チュービングでスローピングもややきついCAAD10 48cmでも、それほど使いにくいとは感じていません。
次にボトル形状。ケージ上方にボトルのクビれた部分を押さえるためのクリップ状の突起があるのですが、これが非常に固く変形しにくいため寸胴ボトルを差し込むとボトルがケージから浮いてしまいます。常用しているTacxツールチューブを突っ込んでみたところ、固い樹脂キャップが突っかかり奥まで入らないので、使用をあきらめました…(多くのツールボトルは中身の出し入れ重視で寸胴なのですが、上の写真のようにクビレがあるElite Byasiに替えて解決)。ボトルの太さについてはとても寛容なケージなのですが、クビレがない、あるいは位置や形状がユニークなボトルでは使用に支障をきたす場合があるので要注意です(Elite Corsaのような形状もダメでした。Tacx Source(小さいほう)は寸胴ですが、ショルダーのテーパー部がうまく突起に収まるので問題なく使えました)。
価格評価→★★★☆☆(実売$60前後、カーボンケージとしても少し高め)
評 価→★★★★☆(ロード用にはちょっと固すぎか。トレイルユースでちょうどいい位)
カタログ重量→ --g(実測重量 31g、ボルト含まず)