購入価格:€74.5 (@ starbike、送料別途)
Lezyne CNC Floor Drive(以下FD)は製法も設計も新しいだけあって、同じドイツメーカー製品でもSKSレンコンプレッサーとは対極にあるようなフロアポンプです。
LezyneはフロアポンプをHP(高圧)とHV(大容量)に切り分けて展開しているので、自ずとロード向けとMTB向けポンプにはっきりと分かれるのですが、その中でもFDはロード用HPシリーズの頂点に立つモデル。さすがにインテリア性だけでなく基本性能も相当に高いのが特徴。そろそろロングセラーの仲間入りといってもいいくらい息の長いヒット作ですが、割と改良に熱心なLezyneらしく細部が頻繁に変更・アップデートされているようで、現行タイプではエアゲージの文字盤が大型化されたりホースが補強されたタイプのものに変わったりしています。
国内ではブラックしか販売されていないのですが海外にはシルバーモデルもあり、Lezyneといえば私の中ではやっぱりポリッシュシルバーなので輸入してみました。送料も加味すると価格差は実質ゼロでしたから、色にこだわりがなければ国内でブラックを調達したほうがいいでしょう。
ではまず基本スペックから。
最大許容圧は15bar/220psi、バレル高60cm・インナーシャフト最大伸展時118.5cm。別途レビューするBontrager TLR Flash Charger(以下TLR)並の高さがありますが、動作感が圧倒的に軽く吐出量も大きいので実用時には気になりません。なんと言っても総アルミ合金製のバレル・インナーシャフトは圧倒的に軽く、実測重量は1.66kgとサイズからは想像できない軽さを誇ります。丸みを帯びたアルミ削り出しハンドルは少し太めで手触りはソフト。ポリッシュ・アノダイズ仕上げなので木製や樹脂のグリップと比べるとやや滑りやすく、もう少し幅があれば安定感が増すのにと思わなくもないですが、ポンプ自体の動作感が十分に軽いので問題にはならないでしょう。
3.5"とかなり大きくなったエアゲージのケースとステップ裏には滑り止めと傷防止のシリコンゴムが貼られていて、フローリングの床でも比較的安心して使うことが出来るのもポイント。
肝心のフロアポンプとしての基本性能ですが、FD・レンコンプレッサー・TLRの中では文句なしのナンバーワン。
見た目の素晴らしさにまず目が惹かれてしまいますが、それはオマケのようなもの。使ってみて驚くのが各部の高精度な仕上げと動作の軽快感です。700x22Cチューブラーを8bar充填する比較テストでは、レンコンプレッサーの記録25回をさらに大きく下回る18回を叩き出し、しかも動作感は3本の中で一番軽く、高圧域まで軽さが持続するのが印象的でした。ベースの出来も割と良いので本当に楽チンなのですが、惜しいのはインナーシャフトを最大伸展させた時ヘッド周辺からガタが感じられたこと。シャフトを引き上げる時も若干ガサガサしたフリクションが感じられますが、これはおそらく各部に馴染みが出れば収まる範囲のものです。問題はそこではなく、おそらくピストンヘッドにコンパクトなアルミ削出ブロックを使っているのが原因なのでしょうが、目一杯シャフトを伸ばしきるとバレルの中でシリンダーヘッドがガクガク泳ぐのが感じられるのです。レンコンプレッサーを使い慣れた身としては、雑なポンピングをしたらシリンダーかシールにダメージを与えてしまうのでは…と若干の不安を感じてしまいました。
とはいうものの、感触まで含め今我が家にあるフロアポンプ3本の中で一番ポンピングしやすいのがFDであることは疑いようがありません。
もう一つ残念だったのはエアゲージ。現行型から3.5インチの大型文字盤(車のアナログレブカウンター位の大きさ)を装備するようになって非常に読み取りやすくなりました。見た目のバランス的には旧型の方が美しい気もしますが、ケースの大型化はベース全体のポンピング時安定性にも寄与しているはずなので、一長一短といったところ。問題はそこではなく、私の個体ではちょっとズレが大きかったこと。偶々かもしれませんが、新品時ですでにPanaracerのプルドン管ゲージやレンコンプレッサー比0.3bar程のズレがありました。メーター単体で交換もできるようなので、もし悪化するようなら対処したいところ。一般的に低価格帯のゲージはデジタルゲージよりもアナログのほうが高精度なので、アナログゲージの精度がこんなもんだとするとデジタル版の方は…まあ致命的な誤差という訳でもないですし、ポンプ自体の高性能さを考えるとこれだけを以ってFDを貶める気にはなりません。
Air Bleed Systemと呼ばれるブリーディングスイッチを備えたヘッドを持つのも特徴です。バルブステムにねじ込むタイプのヘッドですが、充填完了後スイッチを押せばバレルとホース内のエアを逃がすことが可能で、バシュッと空気圧でヘッドが弾かれることなく安全に外すことが出来ます。旧型同様、Slip-Fit Systemという90°首折・パッキン付きでバルブステムに差し込むだけのチャックも付属しており、簡単に交換できます…もっとも、ヒラメ党員の私はどちらも1度使っただけで差し替えてしまったので、長期的な性能評価は控えます。ホースは通常よりも径が細く、ヒラメの口金を突っ込む際にはフッ素グリスを塗りほとんど無理矢理ねじ込みみました(ハンマー等は使わず手の力のみでやったので、本当にホース側の限度を超えていたわけではないです)。外側をナイロンで補強したブレイデッドホースなので耐久性は高いはずですが、ヒラメを突っ込むと切り口が若干解けてしまい…ほつれが進行しない様ホースバンドで固定しましたが、ヒラメを使う予定で気になる方はホース自体交換するなど対処した方がいいかもしれません。
耐久性については、前述のシリンダーヘッドのガタツキ以外弱々しさを感じさせる部分は見受けられませんでした。数年使い込んでみないとシールの耐久性なども分かりませんが、不具合が出てくれば追記していこうと思います。
まとめると、1~1.5万円でとにかく性能重視で選ぶなら最良の1本ではないでしょうか。レンコンプレッサーとどちらを選ぶ?と問われると、歴史がその圧倒的な耐久性を裏付けているレンコンプレッサーを個人的に推しますが、FDがそれに迫る位の耐久性を示してくれれば新たなクラシック誕生と言える位、素晴らしい基本性能を持っています。さらに熟成が進めば本当にそうなるかも知れません。
価格評価→★★★★☆(レンコンプレッサーのほぼ倍)
評 価→★★★★☆(基本性能は満点近いが、ゲージ精度とピストンヘッドのガタでちょっとマイナス)
<オプション>
年 式→2014
カタログ重量→ 1.45kg (ヒラメ化後実測重量 1.66kg、最大高118.5cm)
最大許容圧 15bar/220psi