購入価格£9.53 @ wiggle
締付トルクのプリセット機能を省いた簡易型トルクレンチです。
ちょっと興味があったので、ついでで買ってみました。
通常のトルクレンチ同様、グリップ内にスプリングが仕込まれていて5Nmに到達するとクリックが伝わってきます。プリセットは5Nm固定で調整は前述の通り不可。取説もなく本体にも表記はありませんが、多分回転方向限定(時計回り)だと思われます。4mmヘックスのビットが付属しているのですが、これはシャンクに完全嵌殺しで他のビットに交換は出来ません。なにもかも固定で潔いくらいの単機能っぷりですが、実際にはこのスペックで困ることはあまりないでしょう。トルクレンチが欲しくなる場所といえばステムクランプやシートポストカラーなどで使われるボルトで、M5がほとんどですから4mmヘックス固定でも別に困らないはずで、余程きわどいものでなければいかに軽量パーツといえど締付トルク5Nmは耐えられるはずなので、プリセット固定の点で困ることもあまりないでしょう。ちなみに正式商品名はタイトル通りなぜか”M4”になっていますが、4mmヘックス穴専用であってM4サイズのボルト専用というわけでありません。
スペックはともかく通常のヘックスレンチとさして変わらない価格なのに、ちゃんと精度は確保できているのか気になることと思います。簡易的ですが、以下の方法で試してみました。
1. まずこのトルクキーを使って5Nmでボルトを締める。
2. 5.5Nmに設定したPBデジタルマルチトルクハンドルで増し締めしてみる。
3. ボルトが全く動かずレンチがクリックする場合は5.5Nm以上(プリセット値+10%以上)で締まっている、逆に大きく動いてしまう場合は5Nmを下回っている疑いがある。
-側のチェック方法には少々私の勘が介在してしまうのですが、オーバートルクを防ぐというトルクレンチ本来の用途を考えれば致命的な問題にはならないはず。何度かやってみたところ、ボルトがわずかに動くのを確認しました。5Nmピッタリかどうかは分かりませんが、全く締付が足りなかったり極端なオーバートルクになったりするようなことはないので、精度については実用上問題ないと判断してよさそうです。トルクチェッカーで厳密に調べたわけではないので参考程度にお考えいただきたいのですが、概ね±10%以内に収まっていそうです(マルチトルクハンドルは半年程前にトルクチェッカーで精度の確認をしており、大きなズレはないのを確認済)。ビットの精度は十分で、先端もきちんと面取りされています。
このようにトルク検出やビットの精度については問題ないと言えそうですが、肝心のレンチとしての使い勝手は本当に必要最低限のライン。車のキーを一回り大きくしたくらいのサイズで、スプリングの入った樹脂製ボディは幅50mm・高さ25mm程になっています。中央のリッジラインの下側が丸く抉れていて、ここを指で押さえる回し方(ガスレンジのツマミを回して点火するようなアクション)を想定したデザインなのですが、ほとんどレバレッジがかからないため5Nmまできっちり締めるには指先にかなり力を入れて回さなければなりません(女性の握力ではまず無理なレベル)。しかも指が滑ります。手のひらでボディ全体をナックルダスターのように握りこんで締めるにしても、シャンクからボディを貫通した15mm程の突起がある上にあちこちエッジが立っているので、やたらと手のひらに喰い込む始末。軍手かメカニックグローブをして保護しないと5Nmまでとても回す気にはなれません。力を入れやすいグリップ形状にしておくとかラバーで覆って滑りにくくするなどという気の利いた工夫は一切なし。
あと10ドル高くなってもいいから、グリップ形状や素材を吟味して使いやすくなるよう気を配ればよかったのに…というのが個人的感想。ハンドルやステム専用トルクレンチとしての機能・性能は十分満たしているので余計に惜しまれます。仮に最初のトルクレンチとしてこれを買ったとするとかなり使いにくいためにすぐ他のトルクレンチが欲しくなるか、あるいは自分でメンテすること自体がイヤになってしまうか、のどちらかになるのではと思いました。機能的に問題はないので、とにかく安く済ませたい使い心地には一切目を瞑るから、というのであれば最高でしょう。が、もし軽量パーツの取り扱いをすべて自分で行っていく決意があるならばこれでお茶を濁したりせず、もっと使い勝手のよいツールを探して購入することをお勧めします。一方すでにトルクレンチを持っている方にとって有用な使い道があるかというと…これもちょっと微妙です。例えば輪行する際にハンドルやシートポストを抜いてしまってコンパクトにしたいからサドルバッグにこれを入れて一緒に持ち出す、などという使い方は良いかもしれません。しかし普段から入れっぱなしにしてトレーニングやロングライドのお供に、というのは無駄な気がします。日ごろからちゃんとチェックしておけば、新しいハンドルを装着した直後やバイクのフィッティングを変えた直後を除くと出先でトルクレンチが欲しくなることなどまずないですし。携帯用工具としては、嵩張るしちょっと微妙な重量(実測53g)でもあります…。
価格評価→★★★★★ ぶっちぎりの安さ
評 価→★★★☆☆ 機能・性能的には問題ないが、とても使いにくい
カタログ重量→ --g(実測53g)