以前「あなパー」にも投稿したことのある看板ですが、とても感動した看板なのでレビューとしても残しておきたいと思います。
以下の看板は都立野山北公園・六道山公園の林道脇に立てられている看板です。
この公園の林道は鬱蒼とした木々の葉叢から柔らかい木漏れ日がポツポツとわずかに洩れる、雰囲気の良い、暗く静かな道で、ゆっくりと散策している中高年の方が多くいらっしゃいます。同時に、MTBで低山サイクリングを楽しみに来ている方も、多くいます。
非常に静かな環境なので、ゆっくりと散策されている方々の隣を、小石をはじきながら猛スピードで通り過ぎるような行為は論外。そのため歩行者を見かけたらスピードを落として「どうも〜こんにちは〜(テヘッ ちょっとうるさい自転車でスミマセン 汗)」的な挨拶をするなど、十分な配慮が必要です。
上の看板は、まあ、そういうふうに歩行者に対して配慮してくださいね、というメッセージを送っています。「やさしい運転お願いします」という大きめの文字の下に、「子どもや、お年寄り、静かに散策する人がいます」とあります。右下には「みんなで愛する公園に!」という言葉も添えられています。
私はグラフィックデザインにはあまり詳しくはないですが、この看板はなんて優れた仕事なんだ、と感銘を受けました。この看板が想定しているオーディエンスは、まさしくMTBでそこに遊びに来ていた私のような人間です。そして私はこの看板を見て、ちっとも嫌な気持ちにならず、ああそうか、こんな静かで雰囲気のいい道なのだから、ゆっくり散歩を楽しんでいる人の邪魔をしてはいけないな、と素直に思うことができました。
「チッなんだよ、自転車だってこの道を通行する権利はある、いちいちうるせーんだよ」みたいなことは微塵も思いませんでした。恐らく、この看板を目にして、「自転車が目の敵にされている」という印象を持ち、「チッうるせーんだよ」みたいに思う人は皆無ではないでしょうか。
その理由はたぶん、「色使い」にあるのではないでしょうか。普通、注意を喚起する看板には赤や黄色・黒、オレンジといった色が使われることが多いと思いますが、この看板はグリーン基調です。ハードテイルMTBに乗るサイクリストの上の斜線は、凡庸なデザイナーなら赤線にしたのではないでしょうか。
この看板は何かを一方的に禁止したり、命令したり、敵意を表明していないのです。警告でもなく、威嚇でもない。走るなとも書いていない。スピードを出すことについては、緑色の斜線によって「異議」が唱えられているけれども、これが「赤の斜線による禁止」になっていないのが、素晴らしいと思いました。
言葉だけでなく、色も駆使したメッセージ。かつ、周囲の景観も損なっていない。見る者に「言い分を押し付ける」のではなく、理解を「喚起」する(呼び醒ます)不思議な看板。「わからせられる」のではなく、「わかってくる」看板。この看板をデザインした人が誰かは知りませんが、優れた仕事だと思いました。また、こうしたデザイナーさんに仕事を嘱託された武蔵村山市の職員の方々も優れた人々なのだろう、と思いました。
評 価→★★★★★