購入価格 ¥120000 (直販)
Lynskey Performanceより購入。
最近は日本に送ってくれなくなったのだが、
本社ウェブサイトにはLynskey Loftという、アウトレット品を扱うコーナーがある。
掘り出し物が無いかしばしばチェックしていたところ、見つけたのがコイツ。
2010年モデルのCooper BB30をベースとしているが、シートステーが上位モデルと共通のヘリックス形状。
BB30のベアリングはめあい加工をミスったとのことで、68mmJIS仕様にするアダプタが装着してあった。
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まずはこのフレームの立ち位置の説明を。
リンスキーのロードバイクラインナップは
・Cooper:3AL-2.5Vプレーンチューブ
・R230:3AL-2.5Vバテッドチューブ、カーブドシートステー
・R340:R230+ヘリックスシートステー、非対称チェーンステー
・R440:R340+前三角6AL-4V
・Helix:全身ヘリックス
と分類できる。上位モデルはヘッドチューブが太かったりBB30だったり、細かい違いもあるが割愛。
ジオメトリは2種類あって、競技用のRacepace geometryと、ロングライド向けのCompetition geometry。
こちらはMサイズ(540~550サイズ相当)でヘッドが15mm長く、トップが9mm短くなる。
どちらのジオメトリを採用しているかは車種で決まり、
HelixOS, R440, R340: Racepace geometry
Helix, R230, Cooper: Competition geometry
である。
これらが気に入らなければ、高いけどフルオーダーも可能。
そんなラインナップの中、2010年モデルのみ存在したのがCooper BB30。
CooperをベースにBB30を採用し、ジオメトリもRacepace geometryに改められていた。
まさに貧者のレースマシン。無印Cooperより割高で売れなかったのか、1年限りでディスコンになったが・・・
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外観を見ていくと、下位モデルにも関わらず造りが凝っている。
チタン屋の安いフレームは、丸パイプを使うなどして上位との差別化を図るものだが、
このバイクの見た目からはコストダウンを感じられない。
リンスキーお得意の冷間加工でフォーミングされたトップチューブ、ダウンチューブのエッジが思いの外目立つ。
ヘリックスシートステーは細いせいであまり目立たないが、左右対称に捻ってある。
また、シートチューブ下端は横長に潰されてBB30仕様のシェルに溶接され、剛性アップを狙っている。
横から見ると、パイプ端部を潰してるのがわかりやすい。
溶接はさすがの美しさで、精度も良い。
コストダウンは見えないところ、すなわちプレーンチューブの採用で実現している。
リンスキーのバテッド加工はグラインダーで削って施すが、これがコスト増に繋がるようだ。
重量差は100~150g。チタン製のステム1個を全部削りカスにすると考えれば、時間がかかるのも納得。
プレーンチューブは確かに重いが、剛性や頑丈さの面でメリットもあるので、乗り方を考えれば一概に悪いとも言えない。
時速50km/hで落車し、3Tのゴツいフォークを折るようなクラッシュでもフレームは無傷だった。
↓詳細
https://cbnanashi.net/cycle/modules/newbb/viewtopic.php?topic_id=5217&forum=105#forumpost12714コイツじゃなかったらダウンチューブ潰れてたかもしれない。
なお、見た目が特徴的なヘリックスチューブは、加工硬化に加え、螺旋状のエッジが梁として機能するのを狙っている模様。
アイデアとしては、コルナゴのジルコダウンチューブに同じ。
重量そのままで高剛性、振動吸収性向上と謳っているが、真偽はとにかく見た目は個性的で、
ONDAフォークやジルコチューブ同様、リンスキーのアイコンになっている。
そうだ、アイコンといえばヘッドバッジにもデザインされているクローバーがブレーキブリッジにちょこんと居座っていた。
ヘッドバッジの取り外しには1/16インチのアーレンキーが必要。
重量はボルト込みで12g。フレーム重量の0.8%を占める。全然構わないけどね!
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概ね満足しているが、ちょっと気になった点もいくつか。
まず、ダウンチューブ側のボトル台座が若干傾いて付いていた。
チューブのエッジ部分についてるから傾きやすいんだと思う。
長めのボルト刺してぐいっと曲げて修正したが、
しばらく乗ってるとブラインドナットが緩んでガタついてきたので、ボルトで締めてカシメなおした。
さらにリンスキーのフレームはスローピングがきつく、トップ長550mmのMサイズでも、シートチューブはCT500mmしかない。
そのせいで、シートチューブ側のボトルを抜きにくいのが気になった。
また、シートチューブには最初からアルミシムが入っていて径を調整してあるのだが、
トムソンのピラーとは相性が悪いようで、サドルに体重をかけるたびピキピキと異音が。
シートクランプを変えてみたり、グリスを塗ってみたりしたが改善されず。
結局、カーボンピラーに交換して解決。
CooperCXにトムソンピラーの組み合わせでは全く異音がしなかったので、このフレーム固有の問題かもしれない。
ライトスタイルのごついリヤエンドはクイックと干渉しやすいため締めつけに気を使うが、これはさして問題ではないか。
アウター受けはヘッドチューブ脇についている。シフトのワイヤリングが急になるためイマイチ。
ダウンチューブについているほうが取り回しやすい。
アジャスタはアルミ削り出し。回り止めが付いていないが、今のところ勝手に回ってシフト調整が狂うことはない。
なおヘッドチューブ内径はかなりタイトで、ヘッドパーツ表面のアルマイトが削れてカスが出るほど。
ヘッド圧入専用工具を持っていないならショップに任せたほうが良い。
ヘッドバッジはとてもカッコイイが、赤い塗装が剥がれてくる。
ビニールのような質感の塗料で、めくれた端を引っ張るとぺろりと取れる。
参考までに、完全に剥がしたCooperCXのヘッドバッジ画像を貼っておく。
デカールも弱い。チタン素地に貼ってあるだけで表面処理してないから仕方ないっちゃ仕方ないんだけど。
爪でコリコリしたら剥がれてくるくらい弱いので、お金がある人はアップチャージ払ってレーザーエッチングしてもらいましょう。
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乗り味は独特。
チタンはしなやか、なんて言う人はやわらかチタンしか乗ったことないんだろう。
剛性抜群。停車状態でリヤブレーキを握り、ペダルに体重をかけてみると、
BBのたわみ具合はCAAD5より少ないくらい。
乗ってみても、アルミのような踏み心地。
だが、全力でダンシングすると一変する。アルミフレームだと大出力で腰砕けになるというか、
踏んだ力がフレームの変形に消費されておしまい。という感覚があるのだが、
SuperCooperの場合、一瞬撓ったフレームが強烈な反発感を伴って車体を弾き出す。
低トルクではアルミのような、高トルクではクロモリのような振る舞いをする。
例えば短い激坂があるとき、CAAD5なら坂に入ると同時にギヤを落としていたが、
最近はあえてシフトダウンせず高トルク時で踏み、フレームの反発を利用して勢いで登るようになった。
地面から伝わってくる衝撃はアルミフレームよりは多少マシという程度。乗り心地は悪い。
フレームが硬いので、ホイールは振動吸収性に優れる柔らかめのものが良いみたいだ。
シマノのRS80を履いてみたらぐっと乗りやすくなった。
ヘッド角は72.5度。鈍重すぎず、クイックすぎず、ちょうどいいステアリング感覚。
スパルタンなフレームだし、もうちょっと立っていても面白くていいか。
思い切り踏んでみろよ!っていうフレーム。上に書いたように細かい不満も許せる。
何より共に救急車で運ばれた仲。あれだけのクラッシュからケロっと無傷で生還したコイツに、
信頼を置かずにはいれれないのである。
価格評価→★★★★★ フレーム単体とはいえ米国製チタンが12万円。
評 価→★★★★☆ 素晴らしいが、細かい不満がある。なにより上位モデルはさらに魅力的。
年 式→2010 試作品
実測重量 1468g(Mサイズフレーム単体) 7450g(車体総重量 ペダル及びサイコン含む)
余談だが、CooperCXとCooperは全くの別物である。パイプ形状もジオメトリも全く異なる。
ロゴまで違う。共通点はプレーンチューブを使ってることくらい。