自転車事故過失相殺の分析
歩行者と自転車との事故・自転車同士の事故の裁判例
(財)日弁連交通事故相談センター東京支部 過失相殺研究部会/編著
購入価格 4,800円(税込み)
目次
1 総説
2 自転車・歩行者に対する道路交通法の規制
3 自転車事故における民事責任原因
4 自転車事故と保険
5 自転車事故の過失相殺と類型化
6 自転車事故の過失相殺
7 裁判例集
本論は「7 裁判例集」です。
自転車対歩行者の事故、自転車対自転車の事故の民事裁判例が数多く収録されています。
難しい法律の議論はさておき、一つ一つの事例は自身の日頃の運転の反省材料になります。
もちろん自転車事故の民事裁判の参考になることは言うまでもありません。
事故現場は「東京都文京区小日向4丁目5番付近の歩道」などと特定されており、
さらに概況図もついているので、Google Map のストリートビューで、事故当時とは変化があるにせよ、
ヴァーチャル現場検証ができるので、こんなところで事故が起こったんだな、
と事故を追体験することができます。
(ただし、かっぱ橋道具街と思われる現場は図が誤ってるかと、、)
裁判するにあたって原告が請求した額と、判決によって認められた額も示されています。それにしても高いなぁ。
なかには子供の自転車で歩行者を死に至らしめてしまったものもあります。
責任能力のない子の事故は親権者の責任になってしまうので、子供の交通安全教育も重要です。
この本の「2 自転車・歩行者に対する道路交通法の規制」で道路交通法の規制を見直しましょう。
ちなみに、この本に対して裁判所側の見方が法律雑誌に示されています。
「交通損害賠償実務の未来(4)」のタイトルで『法曹時報』の62巻3号に収録されています。
『法曹時報』は法学部のある大学図書館、都道府県立図書館クラスには置いてあります。
この『法曹時報』の記事は、交通専門部を置いている東京大阪名古屋横浜各地裁の裁判官が
交通事故裁判について実務上の各種の論点について誌上討論を連載していたところ、
ちょうどこの本が出版されたので、当初の予定を変更して、
この本の「自転車対歩行者」の事故について裁判所からとりあえずツッコミを入れてみました、
今後各裁判所でも細部について検討してみましょう、という内容です。
毎日新聞平成22年8月21日の記事では『法曹時報』の記事を裁判所の「新基準」とぶち上げています。
(
http://mainichi.jp/select/jiken/ginrinnosikaku/archive/news/2010/20100821org00m040999000c.html)
しかしながら、そもそもこの本の裁判例自体が改正前の事故であって、
毎日新聞がいうほどの「新基準」というものでもないと思われます。
たまたま東京地裁の交通部の裁判官に話を聞く機会があったので、聞いてみました。
この本の存在は当然承知しているし、『法曹時報』の誌上討論も承知していて、どちらも参考にはするが、
事故は個別の事情があるので、これらが「絶対的な基準ではない」、とのことです。
<余談>
先日、信号が赤なので信号待ちをしていたら、
その信号を無視したクロスバイクが信号遵守のバイクの横っ腹に激突しそうになって、
思いっきり前転してこけてました(衝突したかは不明)。
バイクには被害がなかったようです。
自分勝手な運転は他人にも迷惑がかかります。
ましてや自転車乗りの地位をも貶める所業でもあります。
価格評価→★★★★☆(法律書としては普通かと)
評 価→★★★★★(裁判例集として役に立つ)
<オプション>
年 式→平成21年9月25日初版発行
実測重量→912g(帯付きで)