購入価格 ¥11,550
Hyper Air 14+3(以下HA14と略す。レビューは下記リンクをご参照ください)で、すっかりお気に入りになってしまったVAUDEのバックパック。
https://cbnanashi.net/cycle/modules/newbb/viewtopic.php?topic_id=5791&forum=71 次にザックを買うときは、deuterかVAUDEかさぞかし悩むだろうなと予想していましたが、意外にもすんなりとVAUDEを選んでしまいました。
HA14では些細ながらも不満がぽつぽつ出て来て、細やかさではやはり王者たるdeuterには敵わないのかもしれません。しかし、称賛に値する王者がいついかなるときも愛されるとは限りません。多少の穴があるとはいえ、VAUDEのザックのほうが私の好みなのです。また、Aeroflex(背中の蒸れ防止のためのシステム)には細かい欠点を吹き飛ばしてしまうほどの魅力があります。
【ストラップと2気室(VAUDE Splash Air 20+5との比較)】
VAUDEを買おうと決断したのは早かったのですが、Bike Alpin Air 25+5リットル(以下BAA25、サイズ:45×24×20)とSplash Air 20+5リットル(以下SA20、サイズ45×24×18)とで最後まで悩みました。容量を除く2つのザックの違いを書き出してみますと。
1.ショルダーストラップ
2.サイドメッシュポケットストラップ
3.サイドメッシュポケット下部の反射材
4.2気室構造
以上4つがBAA25だけに装備されています。逆にSA20にはあってBAA25にはない装備はありません。
1、2のストラップは、あるに越したことはないのかもしれませんが、走行中にばたつくのが鬱陶しいとも言えるかもしれません。私は登山での使用も想定していたので、特にショルダーストラップは有難いのですが、このサイズのザックでは必須というほどではないでしょう。
なお、巷に出回っているSA20の商品画像にはコンプレッションストラップ(容量に合わせてザックを絞る)がありませんが、私が店頭で見たものには装備されていました。このストラップは、ライディング中に荷物が暴れるのを防いでくれますし、ザックが揺さぶられるフィールドで活動する山サイ派には嬉しい装備と言えるかもしれません。
3.は非常に目立たない細いラインですし、背面両サイドの反射材が横からの被視認性も確保していますので、気休め程度と言えるでしょう。
4.の2気室構造についてですが、重い物を上に収納して重量バランスを最適化できますし、泥などで汚れた物を分けて収納するのにも便利です。下に収納した荷物を取り出す際に上の物を取っ払う煩わしさもありません。もちろんザック内部のファスナーを開けて隔壁を取り除けば、1気室として使うこともできます。もっとも、収納上手な人や軽さ重視の人には、2気室構造はありがた迷惑なのかもしれません。SA20もBAA25も開口部がかなり大きいので、1気室でもさしたる不便はないものと思われるのですが、私はというと2気室のザックを1気室として使うことが多いです。
そのへんの事情をご説明しますと。当然のことながら荷物を詰めていくとどうしてもデッドスペースが生じますので、荷物が多いときはこのデッドスペースをいかに活用するかがポイントとなります。1気室だと基本的にザックの上部のデッドスペースにしかアクセスできませんが、2気室構造だと下部のデッドスペースにも容易にアクセスできるという利点があるのです。多少大雑把にパッキングしても、デッドスペースを簡単に減らすことができるわけです。それでも、30リットル程度のザックに2気室が必須かといえば、それもまた疑問なわけでして・・・・・・。
うーむ、決め手に欠けます。ここは店頭で実際に手に取って確かめてみるしかない、ということで出掛けました。
【サイズ】
で、店に行って実物を見てみると・・・・・・。SA20とBAA25が隣接して並んでいたのですが、実際手に取ってみるまで2つのザックが別のサイズとは気付きませんでした(2つのザックはデザインも酷似しています)。どちらもSA20だろうと思っていたのです。つまり見た目のサイズは、パッと見ただけでは識別できないほどのわずかな差なのです。カタログ値でも厚み以外は同じ45×24です。
また、VAUDEのバックパックは、表記より実際の容量がずいぶん小さめだと思います。AeroflexとF.L.A.S.H.の構造上、ザックが弓なりに反っているためでしょうが、deuter Trans Alpine 25と同容量とはとても思えません。同じ店に陳列されていたdeuter Super Bike 18-EXP(18+4リットル、サイズ:51×31×16)と見比べてみましたが、カタログ値通り、全長はBAA25のほうが明らかに短く、マチを開放しない限りは容量にもそれほど差はないように思われました。皆様もご購入の際は、この点に十分留意なさってください。
で、決断の時が訪れましたが、結局BAA25のほうを選択しました。ちょっとした泊りがけツーリングや、日帰り~一泊登山での用途を想定していたのですが、どちらのザックも予想以上に見た目は小さかったので、SA20では必要なものが詰め込めるのか不安になり、BAA25を選んだというわけです。
全長はそれほど長くはありませんので、ヘルメットとザックが干渉するということはありません(ただしMTBでの使用)し、幅も広くはないので、担ぎの際に邪魔になるということもありません。それどころか、サイズが大きいにもかかわらず、HA14より身体にフィットするように感じられました。当方身長176cmですが、背面長がHA14では短すぎるのかもしれません。ベルトの厚みなど他の要素も絡んでいる可能性は十分にありますが、付記しておきます。
以下では、各装備についてレビューします。
【Aeroflex】
やはり、このシステムは素晴らしいです。私の感覚では、背中の不快感が明らかにdeuterのエアストライプより少ないです。ザックが背中にピッタリ張り付くように安定しているにもかかわらず、不快感が少ないことに驚かれるかもしれません。ライディングでもトレッキングでも、背中が汗でぬれてパンツから下着までずぶずぶというということが少なくなりました。いやあ、ほんと素晴らしいです。
AeroflexとF.L.A.S.H.システムに起因すると思われる、HA14で指摘したギシギシ音もこちらのモデルではほとんどありません。
【F.L.A.S.H.】
小型のHA14ではそれほど恩恵は感じられなかったのですが、ちょっと大きめのこのザックではその効果を実感することができました。
ショルダーベルトの出代(ザック表面への露出量)をS~XLの間で調節(無段階)することができるシステムです。これとは独立して、ショルダーストラップの長さも変えることができます。これらの細かい調節機構のお陰で素晴らしいフィット感を得ることができます。体格が標準から離れる方は、ショルダーストラップのみの調節だと、ザックの身体への収まりが悪く違和感を覚えるはずです。
この機構のお陰で走行時には肩・背中・腰の全体で背負っている感じがしますし、歩行時はしっかり骨盤に荷重をかけることができます。10kgを超える荷物を背負って半日歩いてもザックの重みによる上半身の不快感というのは全くと言っていいほどありません。漕いでよし歩いてよしで、これまた素晴らしいです。
【ヘルメットホルダー】
別体の布切れの四隅にあるフックをザックに引っ掛けて使用します。小さい布切れですが伸縮性があるので、ぴっちりヘルメットを収めることができます。ただ、フルフェイスは厳しいかもしれませんし、荷物が多くてザックが膨れている場合はヘルメットの収納に苦労します。使用しないときは、このホルダーはザック本体に接続されていませんので、紛失には注意が必要です。
【ベルト、ストラップ】
やや分厚いショルダーベルトとヒップベルトです。Super Bike SLは分厚過ぎて、使いはじめは肩周りに若干ながら圧迫感がありました。HA14はというと、ペラペラで腰がないという感じでした。一方、このBAA25はちょうどいい肉厚で肩周りに違和感がありません。 また、がっしりしたヒップベルトにはクッション材が入っており、フィット感の向上に寄与していると思われます。
HA14のレビューでは、「チェストストラップ長が短く、大柄な人には厳しいかもしれない」という旨の記述をしましたが、BAA25では問題ありません。
【ミニポーチ】
ザックと同色のポーチが付属します。お洒落ですね。私の場合出番はあまりないのですが、特に女性なら小物類の整理に重宝するかもしれません。なおフックで荷室内の上部に吊るすことができますが、外れやすいです。
【レインカバー】
ド派手なオレンジのレインカバーが底部に格納されています。反射材はもちろんついていますし、リングにテールライトを引っ掛けることもできます。また、レインカバーを被せるときはヒップベルトを通しますので、めくり上がりにくいのではないかと思います。防水性については未確認ですが、いかにも浸みてきそうな生地ではあります。
【ポケット】
天井面、背面上、背面上の裏、背面下、ヒップベルト左側、左右サイドメッシュポケットと計7つありますので、収納を考える楽しさが広がり、旅気分を大いに盛り上げてくれます。出発前夜に、何をどこに入れようかと考えながらパッキングしている時の高揚感は堪えられないものがあります。 なお、サイドメッシュポケットには2箇所穴が開いていますので、小物などをうっかり入れないように注意が必要です。
【エクスパンダブル】
マチを開放して容量を増やせる構造ですが、ザックの下部ではなく上部にマチがありますので重量バランスがよいです。HA14ではマチが下方に付いており、相当上手にパッキングしないと下に荷物が溜まってしまうのが不満点の1つだったので、この違いは有難いところです。
【デザイン】
強烈な個性があるわけではなく、むしろ凡庸と言ってもいいくらいなのかもしれません。しかし、それでいてそこはかとなく奥床しい魅力があります。deuterがどことなくレーシーで男性的な感じを受けるのに対して、VAUDEのほうはお尻(底部)が大きいためか、ちょっぴり女性的な印象を受ける愛らしいデザインでもあります。VAUDEは普段使いにも耐えそうな汎用性があるように思います。
【その他】
反射材が背面の3箇所(中央のベルトにはテールライトを装着できます)と、左右ショルダーベルト、それから先述のサイドメッシュポケットの下部にあしらわれています。前・後・横と全方位をカバーしているわけで、なかなか良心的です。テールライトを忘れてしまったときや下山が遅くなって車道を歩く際にも安心感があります。自転車用ならではの配慮と言えるでしょう。
また、ハイドレーションパック対応です。HA14のレビューで指摘したすぐ伸びきってしまう上側のホース留めにはどうやら改良は加えられていないようで、ここだけは残念に思います。数回使用しましたが、今現在目につく欠点らしきものといえば、これだけです。
【最後に】
傑作です。好きです。ただのザックなのに、自転車と同じように目に入るところに置いていつまでも愛でていたくなります(笑)。今年の夏から秋にかけてのほとんどの山行で寝食を共にし、さらに愛が深まりました(笑)。しかし、deuterのザックもまた素晴らしいので、これはやはり好みの問題ということになるかと思います。バックパック購入の際は是非とも店頭で手に取ってじっくり検討されてみてはいかがでしょうか。
価格評価→★★★★☆ 値は張るがよいもの。
評 価→★★★★★ 末永く愛用したい。
年 式→2010
カタログ重量→1,130g