購入価格 1本¥50〜1,260
ネジ・ボルト。
多様な仕様・サイズ・素材のものが氾濫していますが、現代の工業製品にあってこれらをまったく使用しないものはほとんどないでしょう。自動車1台に使われるネジやボルトの数は数万本にのぼるとどこかで聞いたことがありますが、自転車だって100は下らないでしょう。スポークとニップルも広い意味ではボルトと同じ構造ですから、200近いかもしれません。しかし、量産することが前提となっているパーツやフレームには往々にして鉄製のネジやボルトが使われます。安価でしかも強度は十分、各メーカーが行う耐久試験をパスし強度基準もちゃんと満たしているはずですから、これらのボルトやネジをわざわざ交換するのは、非合理で愚かなことなのかもしれません。
しかし、合理的なこと以外を否定してしまっては世の中の楽しいことはほとんど消えてしまうことでしょう。
ボルトチューニング。
妖しく輝くチタン合金製のボルト。
量産品では決して味わえない、ボルトが吸い込まれるように滑らかに締まっていく感覚。
アルミや樹脂ボルトのありえないほどの軽さ。
自己満足の蠱惑的な世界がここにあります。
様々なボルトを使った私からみて、これならお勧めできるというものをここにご紹介します。
チタンボルト
★★★☆☆
Toronto Cycles
http://www.torontocycles.com/Jersey Cycles
http://www.jerseycycles.com/どちらもeBay出身で、兄弟で運営しているショップです。
切削・加工の技術はいまいち。まれにハズレというかちゃんと精度が出ていないものが混じったりするので、ステムやシートポストに用いるボルトをここで調達するのはお勧めできません。このショップの魅力は他では扱っていないサイズ・形状のものが豊富にそろっている点。
特にディレーラー周り。例えば、写真のチタン合金製ディレーラー用アジャスターボルトとリミットスクリュー用M3キャップボルト、EastonやThomsonのシートポストに使われるバレルナット。他ではお目にかかれません。
送料がリーズナブルなのも魅力。
参考価格:Toronto M5テーパーキャップ15mm $2.50
Jersey M5テーパーキャップ15mm $2.60
★★★★☆
Bike Hardest
http://www.bikehardest.net/j15/en/このショップもeBayのPowersellerです。実はリンク先のサイトが立ち上がった直後、初めて日本向けに出荷したのは私のオーダーでした。支払時に送料とかVAT控除の自動計算に不具合が噴出し何度もやり取りを繰り返した、私にとっても思い入れの深いショップであります。オーナーのMartinは熱心で誠実だったのですべて解決してくれました(現在は日本からも問題なく注文できるはずです)。このショップは、多分自前で製作してないんじゃないでしょうか。それでもボルト類の精度は上々で、シートポストカラーやブレーキワイアークランプなど比較的負荷のかかるところに使用しても問題は出ていません。TiNやDLC、陽極酸化処理など様々なコーティングが用意されているのも他にはない魅力。送料がDHLでちょっと割高なのが残念。
参考価格:M5テーパーキャップ15mm €2.90 (incl.VAT)
★★★★☆
Pro-Bolt
http://www.tastynuts.com/Home 日本にも代理店があるようですがやる気あるのかないのか良く分からないですね、存在感がありません。
もともとモーターサイクル向けのカスタムボルト製作・卸をやっているショップですが、自転車用パーツもじわじわと拡充しています。切削技術のレベルは相当高く、写真のM5ボルトに遺憾なく発揮されていると思います。転造スレッド・ワイアリング用穴、フランジ加工、ヘッドの肉抜き、中空加工等なんでもござれ。値段も安い方だと思います。切削レベルは高いんだけれど、コーティングが雑なのが惜しい。実用上は問題ありませんが。
余所と違って、時折在庫整理セールをやるのでこまめにチェックすることをお勧めします。
小物ならエアメールで発送してくれる(1ヶ月位かかりますが)のも嬉しい。
参考価格:M5テーパーキャップ15mm £3.60 (ex.VAT)
★★★★★
β-Titanium(ベータチタニウム)
http://www.b-titanium-online.com/ チタン合金ボルトの最高峰が欲しかったら、ここと後述のタキオンを覗いてみましょう。
鉄ボルトの10倍に上らんとする価格設定ですが、モータースポーツで鍛えられた本物のレーシングスペックボルトが手に入ります。
特にサイズやヘッド形状のラインナップの幅広さは圧倒的で、M4のナベ・サラボルトを常時ストックしているオンラインショップは他にないと思います。私はストック品しか購入したことがありませんが、図面からのワンオフ作成や各種追加工もしてくれるそうです。
参考価格:M5テーパーキャップ15mm ¥976
M6テーパーキャップ15mm ¥1,144
タカダエンジニアリング(タキオン)
http://www.takada-eng.co.jp/shopcart/html/titanium.html β-Titanium同様、タキオンもモータースポーツとの繋がりが非常に深いショップです。特に切削・研磨の技術は他から頭一つ抜きんでており、仕上がりは目を見張るほど美しい。残念なのは在庫販売ではサイズ展開が狭いことです。M6〜しかありません。β-Titanium同様にカスタム作成もしてくれるそうですが本業はあくまでレース部門で、小売りはそのお裾分けという感じでしょうか。
参考価格:M6テーパーキャップ15mm ¥1,260
アルミボルト
★★★★☆
Carbon Ti
http://www.nano-bike-parts.de/Ergal-ScrewsTune
http://www.bike24.com/1.php?content=8;navigation=1;product=8758;page=1;menu=1000,5,128,68;mid=109;ID=2758d32637096796fd5b25e5e101551a
リンク先は参考まで。マニアックなチタン・カーボンパーツが名を馳せるCarbon TiとTuneですが、アルミボルトのラインナップが充実しているのは多分あまり知られていないでしょう。そもそも強度的にかなり弱いのでアルミボルトは需要が少ないのですが、ボトルケージの取付、ディレーラーのリミットスクリューやワイアークランプ等上手に弁えて使えば、結構軽量化に役立ちます。M5やM4を作っているメーカーがほとんどなく、M6以上なら先述のPro-Bolt等でも作っていますが、M6サラボルトの様な特殊形状やM5以下のサイズはこの2社くらいしか作っていません。
参考価格:M5テーパーキャップ14mm €1.47 (incl.VAT)
カーボンファイバーボルト
★★☆☆☆
Schmolke
http://www.nano-bike-parts.de/Schmolke-Carbon-Schrauben_1リンク先は参(ry
最近では各メーカーフラッグシップのフレームを買うとボトルケージ用のボルトがカーボン製だったりしますが、一般向けに販売しているのはここくらいしかないでしょう。医療用に作っているメーカーはあるらしいですが、そんなものは当然流通していません。値段がたわけているのと、強度がやっぱりアルミ同等(スレッド部の強度は多分Reny程度)とのことなので、ヘッドセットのコンプレッションやディレーラーのワイヤー周り程度しか用途はなく、本数にするとバイク1台で5本くらいでしょうか。アルミとの重量差は2g未満ですし、どうしてもカーボン製を使ってみたいという方以外には到底お勧めできません。しかもM5はフランジボルトで外径が9mmありますから、場所によっては使えません。かくいう自分もフレームについてきたものがケージと合わず、そのままパーツボックスの肥やしです。
参考価格:M5フランジ20mm €9.50 (incl.VAT)
その他、樹脂ボルト等の特殊ボルト
★★★★★
ウィルコ
http://wilco.jp/products/index.htmlネジコム
http://www.e-nedzi.com/ ナイロン系、ポリアミド系等様々なエンジニアリングプラスチック製のボルトや、セラミックス、極低頭などの特殊形状、はては原子炉で使う超耐熱ステンレス合金インコネルまで、幅広い工業用ボルトを小売りしてくれます。セラミックやインコネルのボルトに用はないでしょうが、Renyのボルトなんかはケーブルガイドやセンサーブラケットの固定など、締付トルク1Nm程度なら十分耐える強度を持っています。お勧めはしませんが、試しにリアディレーラーのハンガー固定に低強度Locktiteと併用で使ってみたところ一応使えました。特殊形状でかつ非鉄素材製ネジは、この2社を当たっても見つからなければもう諦めた方がいいかも。
参考価格:ウィルコ βチタン合金 M4サラボルト15mm+頭 10本¥1,200
ネジコム Reny M5極低頭ボルト12mm 20本¥1,040
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他にもチタンボルトではPoggipolini(ポジポリーニ)あたりが有名どころでしょうか。しかし現物見た感じでは、β-titaniumやタキオンよりいいとは思えませんでした。おまけに国内では輸入代理店が手を引いたらしく、入手するのは困難だと思います。個人的にはMettec
http://www.mettec.com/category/List_Of_Stocked_Titanium_Fasteners が気に入ったのですが、小ロットでの小売りを断られてしまいました。写真が下手くそなので分かりにくいでしょうが、M5のソケットヘッドに鍛造加工がしてあります(黒く変色している部分)。こんな手の込んだボルトは余所じゃ手に入らないので、ぜひとも欲しかったのですが…残念無念。
しかし、最近のトップグレードコンポはそもそもチタンやアルミボルトで武装しているので、あまり出番はないというのが実情でしょうか。メーカー毎にもボルトに対するコストのかけ方は様々で、Shimanoはグレード問わず強度面での妥協一切無し、おまけに最初からモリブデン系の緩み止め剤まで塗っておいてくれる親切さ。仕上げも結構綺麗です。カンパのコンポを所有したことはありませんが、ハブに使われているセットスクリューやレコード用スペアパーツのボルトを見た限り結構雑な仕上げだな、と感じました。最新のSuper Recordとかではどうなのか分かりませんが。でも、カンパのボルトが折れやすいとかなめやすいとかいった話も聞かないので、見た目が武骨なだけなのかもしれませんね。SRAMは、所有しているRedに限っていえば切削技術も強度も申し分ないと思います。テンションプーリー用のスクリューなんか、わざわざ中空加工までしてありました。ハンドル・ステム等のメーカーで好印象だったのは3T。丁寧に切削・研磨されているので、良いサプライヤーがついているのでしょう。逆に芳しくなかったのはDedaや今は無きITM。スレッド剥離、破断の経験ありです。
チタンボルトやその他軽量ボルトへの交換は楽しいものですが、あくまでも安全第一。鍛造したチタン合金(いわゆる6/4チタン)は、比強度は抜群ですが絶対的な破断強度について盲信するのは危険です。ここに上げた★x4以上のチタンボルトは、私が実際にシートポストやステムに使用して安全であることを確認していますが、そもそも体重が50kgと軽くパワーも情けないからたまたま大丈夫だったのかもしれませんよ? 誰が使っても大丈夫!!と太鼓判を押せるものではありません。それと当たり前のことですが、アルミやカーボン、樹脂ボルトをストレスの大きい場所に使うのは絶対に止めましょう。その辺は自己責任ってことで、ひとつ。
製品に対する個人的評価は各項目の★をご覧下さい。
価格はそれこそサイズや形状でピンキリな上、客観的にはどれも必要性のない出費ですから…
しいて付けるならどれも★☆☆☆☆でしょうか。