「魔の山」モン・ヴァントゥはフランス南部、プロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール地域圏にある山。
標高は1912m、「プロヴァンスの巨人(Géant de Provence)」という異名を持ちます。
ツール・ド・フランスでは最難度の山岳として幾度となく死闘が繰り広げられてきました。
また、この山はフランスのサイクリストにとってトレーニングのメッカにもなっており、
毎日数多くのサイクリストがこの山を訪れているらしく、一般のヒルクライム大会も行われているようです。
山頂へ通じる道は3種類ありますが、この中で最もハードでレースによく使われているのは南側のカルパントラ(Carpentras)からのコースです。
2009年、ツール・ド・フランスにおいて最後の山岳ステージとなったその2ヶ月後、
カルパントラからモン・ヴァントゥまでのコースを走ってきました。
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出発地のカルパントラは人口3万人程度の町。
町のインフォメーションには、過去モン・ヴァントゥで行われていた自動車レースの資料が展示されていました。

カルパントラからモン・ヴァントゥのふもとの町ベドアン(Bédoin)までは比較的平坦な道で、
周りに畑が広がるプロバンスらしい静かな風景が続きます。

晴天時にはかなり遠くから白い山頂を望むことが出来ます。
ベドアン直前のロータリーには自転車のモニュメントがありました。
ベドアンから頂上へ至る21.8kmの道のりは平均斜度7.4%、標高差1617m。
ただし最初の5.8km、サン・テステーヴまでの平均斜度は3.9%と比較的緩やかであり、残りの16kmの平均斜度は8.9%となっています。

サン・テステーヴ(Saint Estève)からシャレー・レナール(Chalet Reynard)までのおよそ9kmは林の中を走る道です。
この区間は急勾配が続き8%以下にはなりません。
カーブがあまり無く、視覚的な変化が乏しく、心理的に辛いです。
たまに開ける視界から望める山頂を心の支えに登りました。

シャレー・レナール付近まで登ると、次第に視界が開け、モン・ヴァントゥ特有の白い山肌が広がってきます。

ここに来てやっとモン・ヴァントゥに来たという実感が湧き起こってきました。
シャレー・レナールからはしばらく傾斜は緩くなりますが、それでも5~8%はあるようです。
この日は運良く?モン・ヴァントゥおなじみの強風は吹いていませんでした。

この荒涼とした景観にも、夢にまで見たこの山に自分が来た事実にも圧倒されました。
青い空と白い山肌のコントラストが綺麗。
また、ツール・ド・フランスで使われてすぐということで、路面にはたくさんの応援のペイントがまだ残っていました。

この日は日曜ということで特に多かったのでしょうが、たくさんのサイクリストの人たちと追い越し追い越されながら走ると、
いよいよ頂上のレーダー塔が近づいてきました。
あと一息という残り2kmあたりから再び傾斜が急に。
最後の力を振り絞りながら登りました。

最後のヘアピンカーブを曲がると、そこは標高1912mのモン・ヴァントゥ山頂。
まだ9月終わりでしたが気温がかなり低く、肌寒かったです。

しばらく頂上でのんびりと休憩していると、続々と自転車乗りが登ってきました。
とにかく自転車乗りが多い。
女性も多く、年を召した人もいました。

頂上が雲で覆われてきたので、急いで下りの用意をして登ってきた道を引き返しました。
途中、この山で亡くなったトム・シンプソンさんの碑に立ち寄りました。
なにかのイベントだろうか、同じジャージを着たサイクリストの集団がきつそうに登っていたので、
「アレー!アレー!」と叫びながら下って行きました。
頂上を覆いかけていた雲はどんどん厚くなっていき、途中で小雨が降り始めたので、
雨宿りのためシャレー・レナールの売店に立ち寄ってみました。
いろいろとグッズが置いてあったが、その中でも、道ばたに置かれている標識の模型を購入。
この標識はいまも机の上に飾っています。
残念ながら頂上付近は雲が多く、頂上からの風景は見ることはできませんでしたが、
写真を撮りながらゆっくりと2時間弱のヒルクライムは夢のような時間でした。

景観→★★★★★
登坂距離→★★★★★
平均勾配→★★★★☆