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momochi_gyugund氏の衝撃のデビュー作。第3回CBN芥川賞を受賞。発表時のタイトルは「ANCHOR RNC7 Equipe (イリュージョンブルー 530mm」で、「群輪像(ぐんりんぞう) 2010年8月号」に掲載された。発売後一年間で100万部を超えた自転車文学の金字塔的作品。
https://cbnanashi.net/cycle/modules/newbb/viewtopic.php?topic_id=5317&forum=49&post_id=12156#forumpost12156【あらすじ】
自転車選手を目指しアルミのキャノンデールCAAD8で日々鍛錬を積んでいた青年が、懇意にしていたショップのショーウィンドーでたまたま目にしたクロモリのANCHOR RNC7 Equipe (イリュージョンブルー 530mm)に心を奪われてしまう。店主の反対を押し切って妖車「イリュージョンブルー」を手にした青年momochiは、やがて「めぼしい自転車乗りが通りがかったら、追走」する「ロードバイク辻斬り」としてロードバイク乗りのあいだで恐れられる存在となった。向かうところ敵なしのmomochiとイリュージョンブルー号。しかしある日、彼は同じように「HTC電話リンリン号」に憑依されたManxmanと運命の対決を果たす。死闘の果て、momochiは自転車の価値とは何か、自転車乗りの真骨頂とは何かを理解する。monochiとManxmanの出生の秘密、山麓でヤマメを焼いて暮らす初老の男の謎の過去、「イリュージョンブルー」をめぐるスパイ活動……日本中のロードバイク乗りを熱狂させた伝説の作品!
【第3回CBN芥川賞選考会における模様(抜粋)】
第3回CBN芥川賞の選考は、某月某日、東京・お茶の水の渋峠ホテルにて行われた。選考委員は、マスカニコフ・チタンスキー(帰化ロシア人, 90歳)、芭亭歩増太(ばーてーぷ・ますた, 69歳)、細 達夫(ほそ・たつお 120歳)、菊池 洋(きくち・よう 150歳)、三浦キョンシー(170歳)、石原慎太郎(いしはら・しんたろう 300歳 東京都知事)。選考委員長は石原慎太郎氏。
芭亭歩「私はmomochi_gyugund氏の『限りなくイリュージョンに近いブルー』を推しますね。受賞作はこれ以外に考えられない。」
チタンスキー「ダー。私もそう思います。チタンパーツのような鈍い輝きを秘めた美しい作品です。」
三浦「『馬鹿野郎!』ではじまる自転車小説というのは、はじめてだな。これだけでもすごいことだよ。」
芭亭歩「閉塞した自転車文壇を打破するには、こうした特異な才能が正当に評価されることが必要だと思いますね。細さん、菊池さん、石原さんがなぜそれほど頑強に反対されるのか、さっぱり理解できませんよ。」
石原「私はね、絶対に反対だね。自転車文学はもっと保守的で右翼的でなけりゃダメだ。こんなチャラチャラしたタイトルの、何ですか、自転車辻切りの話なんて、文学以前だね。私はねぇ、『立ちあがれ自転車』を推すよ。吉本隆司(よしもと・たかし)君のね。吉本君は、菊池君のお弟子さんだしね。」
菊池「そうです。俺も吉本の『立ちあがれ自転車』が受賞すべきだと思います。」
三浦「オレは反対だ! ロードバイク奉行所がウェストポーチの自転車乗りを取り締まるとか、ノーブレーキピストを打ち首獄門にするとかいう時代小説だろう。どうでもいい小説じゃねぇか!」
細「しかしですね。私も、『限りなくイリュージョンに近いブルー』の受賞には反対です。正直、困るんですよ、こういう人の存在は。振動吸収とか、剛性とか、カタログスペックについて、擬音語を駆使して描写する私らの自転車小説を否定しているわけですよね、この人は。」
芭亭歩「そういえば、細さんはデビュー作の『なんとなく、カッチリ』以来、一貫して意味不明のカッチリとか、パリッとかカチッとしたとか、クックッとか、斬新な擬音語表現で日本自転車文学の最前衛におられることは間違いないと思います。何を書いているのか全然わかりませんしね。」
細「なにを貴様、喧嘩を売ってるのか! ガス管くわえちゃうぞ!」
チタンスキー「まあまあ細さん落ち着いて。あなたの『なんとなく、カッチリ』も発表当時は物議をかもしたじゃないですか。センセーショナルでしたよ。(※チタンスキー氏、手の中でMKSチタンベルをいじり回しており、議論にはあまり興味がない模様)」
三浦「細さんの『なんとなく、カッチリ』と、菊池さんの『ハブの歌を聴け!』より断然おもしろいよ、この『限りなく・・・』はね。」
芭亭歩「石原さんの『自転車の季節』よりおもしろい。正直、読んでいてこんなに熱い気持ちになったのは三浦さんの『男なら勝負しろ!』以来でしたね。」
三浦「お前、嬉しいこと言ってくれるな。あとでウィグライ・プロを一箱やるよ!」
菊池「芭亭歩さん。あんたね。『優雅で感傷的な日本ロードレース』がちょっと売れたからって天狗になってるんじゃないの。自転車文壇はね、保守的で反動的なものなのよ。俺みたいに女子ケイリン選手と駆け落ちして自殺未遂したり、細さんみたいにすぐガス管くわえたり、石原さんみたいに銀座のバーで女の太もも撫でまわしながら純国産ランドナーについて演説ぶつような人間のものなの。君らみたいな、なんていうの、『名無派』だっけ、そういうチャラチャラした若い連中はね、100年早いの。わかる?」
(司会) ではそろそろお時間ですので、選考員の皆様、受賞作を決定してください。
芭亭歩「私は『限りなくイリュージョンに近いブルー』を推します。」
チタンスキー「私も『限りなくイリュージョンに近いブルー』を推します。」
三浦「『限りなくイリュージョンに近いブルー』だね。次点は自転車二十一氏の『小さい青い袋の実力』かな。ウィグライプロの実力が十分に伝わってくる物語だったよ。」
石原「吉本君の『立ちあがれ自転車』。それ以外は認めないよ私は。」
菊池「俺も『立ちあがれ自転車』が受賞すべきだと思います。あんなにどうでもいい内容を扱った小説はそれだけで高評価に値しますよ。」
細 「私は片山左京くんの『パヴェの中心でサポートカー来てくれと叫ぶ』を推します。」
(司会) では多数決で、第3回CBN芥川賞はmomochi_gyugund氏の『限りなくイリュージョンに近いブルー』に決定いたしました。
石原「よし。じゃみんな、飲み行こうか。銀座の『赤い水玉』でパーッとやろう。」
(了)
価格評価→★★★★★
評 価→★★★★★ 自転車文学界期待のスーパーノヴァ
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年 式→2010