購入価格 ¥完成車付属
馬鹿野郎!!
どいつもこいつも軽量性とか剛性とかまっすぐ走れないとか己の失敗を機材のせいにばかりしている弱腰野郎ばかりだ!
たとえR500だろうがSPINFORCEだろうが、魂をこめて踏めばそれがライトウェイトにでもBORAにでもなるんだよ!!
断わっておくが、俺が言いたいのは「エントリーモデルにはR500で充分」とか「車格に合っていない」とかそんなことを言いたいのではない。
これは俺の過去の経験について語らねばならないようだな・・・
それは俺がクラブチームでレース参戦し、いくぶん経験も積んでようやく着順に絡めるようになってきたころのことだ。
俺はフレームを新調したので、合わせるホイールを物色していた。
「今度のフレームは白基調だから、押し出しの強いフルクラムがいいかな。それとも軽量なデュラの新作か・・・」
俺がその台詞を言い終わらないうちに、どこからともなく飛んできた剛腕パンチが俺の眉間をとらえ、「ロードバイクパーツカタログ2011」とともに俺の体は宙を舞った。
「馬鹿野郎!お前の新車にはR500という立派なホイールがついているじゃないか!それをお前は1kmも走らせることなく終わらせてしまうつもりなのか!」
剛腕パンチの主はとおる。
このチームのエース格だが、俺はこいつが苦手だった。
「つよし、お前の走りはこずるい。確かにトレーニング理論や機材、戦略にはお前は詳しいが、走りに魂がこもっていない。何が何でも勝つという気概がない。負けた時の言い訳をいつも何か持っているからだ。」
ここまで言われて俺も堪忍袋の緒が切れた。
「そこまで言うなら勝負しましょう。もし俺が勝ったら、俺の走りについて今後何も言わせませんよ」
そしてレース当日。
スタート位置に並んだ俺のマシンに周囲の視線が集まる。このレースにR500で臨む選手は多くはない。
スポークは丸く、のっぺりと黒く、心なしかほこりがつきやすい。
リムのデザインも高級感は皆無であり、その地味なオーラは俺の周囲に並ぶカンパニョーロやライトウェイトの中にいると、逆に目立っているようにも思えた。
号砲が鳴り、一斉にスタートする。
やはりスタートダッシュでは重さを感じる。
30km/hまでに若干モタつきを感じ、35km/hに乗せるには明らかに足に重さがかかる。
しかしある程度速度が乗り、周囲の空気の流れができてくると、ホイールのハンデは感じられなくなる。
ホームストレートに帰ってくると、ピットで俺のWH-7850-C24-CLを振っている男がいる。
たけしだ。たけしは今回、レース直前に体調を崩し、メンバーには入っていなかったのだ。
―――つよし、使うか?―――
たけしの眼はそう言っていた。
たけし、ありがとう。だが、俺は約束通りR500で勝って見せる。
俺は軽く左手を上げてつよしに会釈すると、補給だけを受け取った。
周回を重ねるごとに、俺の脚に明らかな疲労感が襲ってくる。
このコースは一周約3kmのサーキットだが、ホームストレートに出る前に高低差50mほどの上りがある。
こう聞くと大したことはなさそうだが、100km走れば獲得標高は1650m、なかなか馬鹿にならない数字だ。
特にR500を履いている今日は、上りのたびに集団の後方に下がってしまい、その後のホームストレートで追い上げる、という展開を繰り返し、それがジワジワとボディブローのように俺の脚を蝕んでいたのである。
そしてその周回。ついに俺は先頭集団の最後尾から上がれないようになってしまった。
まずい。
集団から脱落してしまう。
レースでは、いったん集団からチギれてしまったら終わりである。
なんとしても喰らいつかなければ―――!!
デヤァァァァァァァァー!!!
落雷のような気合がサーキットにこだまし、周囲を圧倒する。
上りでの下ハン加速。俺は最後のカードを惜しみなく切る。
血管の浮きだした腕が弓なりにしなった上半身を支え、自由になった背筋は狩りをする野生動物が疾走するかのように躍動する。
もう後はない。この力がどこで尽きるかわからない。しかし最後まで踏み切って見せる!
いつしか俺は、加速のたびに、登坂のたびに、足かせとなっているはずのR500のことも―――いや、そればかりではなく効率的な走りも戦略も、そしてとおるとの勝負のことさえも―――忘れて、ただ無心に全身から力を絞り出していた。
そして最終周回のホームストレートに入った。
たけしはまだ俺のホイールを握りしめている。
使わない!絶対に!!
俺はピットには一瞥もくれずに走り去った。
ふいに、俺の目の前に影が躍った。とおるだ。
「つよし、俺が引く。ゴールスプリントを獲ってこい!」
―――!?―――
俺は耳を疑った。
「何を言っているんですか!?ここまできて、敵に情けをかけるようなまねを―――」
「違う。そうじゃない。今のおれは、もう勝てないんだ」
聞けばとおるは、半年前にヘルニアを患い、もう今までのようにハードなトレーニングはできない身体になっていたらしい。
若さも健康もある俺が、機材や、科学的トレーニングとやらにうつつを抜かして、全てを燃やし切っていない様を見るのが我慢が出来なかったのだそうだ。
「つよし。今のお前は、心身ともにカンピオーネにふさわしい。行け!!」
俺はとおるから受け取った想いをありったけの力でペダルに乗せ、ホームストレートに躍り出た。
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要点をまとめます。
【スタートダッシュ】
★★☆☆☆
やはりモタつきます。
【巡航性能】
★★★☆☆
よく「重いリムは初速は悪いがいったん速度が乗ると維持がラク」と聞きますが、そうかなぁ・・・
私はWH-7850-C24-CLの方が、速度維持もいいように感じます。
【ヒルクライム】
★★☆☆☆
重さなり。
【ダウンヒル】
★★★★☆
こちらは、重さのおかげで安定感を感じる。
いつも「まっすぐ」「安定して」回ってくれているような感じがする。
ジャイロ効果が大きいのかな。
【ブレーキング】
★★★☆☆
普通によく止まります。
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価格評価→★★★★☆
評 価→★★☆☆☆