購入価格 ¥0(もらいもの。定価¥7,350)
友人の自転車を組み上げた謝礼として譲り受けた、中古のタイヤです。チューブレスでは珍しいスリックタイヤということで、前々から興味がありました。使用期間1年、走行距離1,000kmほどということでしたが、山はほとんど減っておらず、室内保管されていたものなので、性能面で新品と大きな差はないと考えてよさそうです。
IRCのチューブレスタイヤは着脱が大変との話はよく聞かされていましたので、事前にIRCのタイヤレバーを買っておいたのですが、やや苦労したものの、結局レバーは使わずに、手で着脱することができました。
使用してみての感想は、一言、残念です。こき下ろすのは気乗りしないのですが、何が残念なのかをひとつずつご説明しましょう。
【残念な重量】
1.95サイズの実測重量は、745gと749gでした。ゴツいノブが並んでいるわけではなく、また、サイズ表記にしては細身なのに、この重さでは残念としか言いようがありません。サイドウォールを強化した結果のこの重量なのでしょうが、スリックタイヤの購入者層には、タイヤ自体の軽さを最重要視する人が多いでしょうから、設計コンセプトとユーザー(少なくとも私)の思惑が、乖離してしまっているようにも思われます。
【残念な推奨空気圧】
推奨空気圧の上限が、3.5 bar(50 psi)と低圧です。オンロードでの走りの軽さが生命線であるスリックタイヤでこれでは、さすがに低すぎると言わざるをえません。もっとも、コンセプトは「フィールドを選ばないストリートタイヤ」ということのようですが、ここでも、サプライヤーの意図とユーザーのニーズとのミスマッチが生じているように思います。
【残念なブロックパターン】

低いノブが密に並んでいるブロックパターンですが、それよりも、車のタイヤのように、溝が刻まれているといったほうが、印象としては近いでしょうか。そのパターンですが、ど真ん中に溝が1周ぐるりと刻まれています。こんなことをしてしまっては、いちばん肝心の真ん中のノブが接地した時に変形しやすく、転がり抵抗の増加につながると思うのですが、どうなのでしょうか。同じマーベラでも、生産中止になってしまった1.5サイズには、中央のこの溝がありません。走る前から何やら暗雲がたちこめてきました。
【残念な転がり抵抗】
実走してみたら、予想を裏切られてびっくり、万歳!とはいきませんでした。重さ、空気圧の低さと相まってか、走行感は決して軽いものとは言えません。普段使っている、HUTCHINSON Pythonに毛が生えた程度にしか感じられず、舗装路の峠のタイムアタックでは、平均して1%程度のタイム短縮(あるいは誤差)にとどまりました。また、乗り心地も決してよいわけではありませんし、ハンドリング、グリップにも、光るものは感じられませんでした。
【残念なデザイン】

タイヤサイドに一箇所のみ、何ともやる気のないロゴがひっそりとプリントされています。どうせ真っ黒いタイヤだからといって、グラフィックは手抜き、というのでは残念です。タイヤにクールなロゴがプリントされていると、バイク全体がカッコよく見えると感じるのは、私だけではないはずです。
【残念な耐久性】

タイヤを譲り受けた時点ですでに、センター寄りのノブの付け根には全て亀裂が生じていました。あまりにもひどいので驚いたのですが、友人の話では、「マーベラはどれもこうだけど、それほど気にしていない」とのことでした。仮に走行に影響はないとしても、タイヤは特に安全性が重視されますので、非常に気分がよろしくないのは確かです。この亀裂の凄まじさで、私としてはトドメを刺された恰好です。
【総括】
スリックタイヤということで、走りも重量も軽いものを、というユーザーが多いかと思いますが、どちらもそれほど軽いわけではありません。むしろ、このタイヤは、軽さを犠牲にしてでもタフさを追求しているように感じられます。その意味で、スリックタイヤというよりはアグレッシブなストリート系タイヤと呼ぶべきなのでしょう。もっとも、グリップや操作性が頭抜けているわけでもなく、そのタフさにおいても、ブロックの付け根にヒビ割れが生じるという問題があるわけですが。
総じて、突出したものがなく、高次元でバランスが取れているわけでもない、不満の残るタイヤでした。
現在では、チューブレスのブロックタイヤでも、ドライ・ハードパック用のものなら、軽量化が進み、転がり抵抗もずいぶん低減されていますので、チューブレスのスリックという地位に胡坐をかいているのなら、これもまた残念と言わざるをえません。早急にモデルチェンジすべきでしょう。私はとっとと他のタイヤにチェンジさせてもらいました。
【最後にヨイショ】
メーカーの意図とややずれた形での期待が大きかったこともあり、その反動で厳しい評価になってしまいました。タイヤを譲ってくれた友人には申し訳ない限りです。ただ、最後に付け加えておきますと、このタイヤを乗り継いでいる彼の話では、耐パンク性能は非常に高く、エアの保持も数週間は問題ないとのことで、通勤通学などには適したタイヤと言えそうです。
価格評価→★☆☆☆☆(自分で買ったとしたら、間違いなく後悔したはず)
評 価→★★☆☆☆(特長が皆無の、残念なタイヤ)
年 式→2008
カタログ重量→740g(実測重量:745g,749g)※1.95サイズ