購入価格 単行本定価1900円(税別)
二人の少年(昇平と草太)の4歳から29歳までの25年を綴った小説である。
自転車を題材にした小説ではあるが、すごい自転車乗りが出てくるわけでなく、
すごいレースのシーンが描かれているわけでもない。
小さい頃から自転車選手になるため、努力をし続けるが、結局、自分の夢を
あきらめることになる草太。草太とは対照的に自分がやりたいことがなかなか
見つからない昇平。普通にいそうな少年達が大人になっていく、いつも傍らに
自転車があり、彼らは自転車と共に、挫折を乗り越えていく。
長いストーリーと共にこの小説で楽しめるのは、自転車にのる描写だ。
昇平と草太が4年生の時に初めて二人で海まで自転車で片道20キロを走るシーン、
二人が進学のために上京する時に、千葉から東京へ自転車で走るシーン、
長く付き合ってきた彼女と別れた草太が八王子から日本海まで1日で、
その後八海ラリーという自転車イベントとなる300kmを走るシーンなどは
しっかり描かれていて、風景や峠、その他の景色がリアルに想像できた。
加えて、ロード、マウンテンバイク、ランドナー、折りたたみ自転車、
ハンドサイクル(車いす用の自転車)など様々な自転車がでてきたり、
ロード競技、バンク競技、ツーリング、輪行など自転車のいろいろな
乗り方が紹介されているのも面白かった。
この小説は、もともと「新潮ケータイ文庫」で2002年10月~2004年5月まで
日刊配信された長編小説で連載中は45万アクセスを記録したそうだ。単行本化に
あたっては、かなり短縮したそうだが、それでも413ページの長編だ。
この単行本のエピソードから書き下ろした文庫本版の自転車少年記もあるが、
自転車に関する記述は単行本のほうが多く、自転車が好きな人には単行本の方が
お薦めだ。
価格評価→★★★★☆(1900円はちょっと高い?)
評 価→★★★★★