購入価格 ¥330、000-
今年(2013年)から愛車となった一台。
デビュー当時から「円断面チューブ」に「ラグ接合」という、個人的嗜好に直球ストライクな構成だったので非常に気になっていたのですが、初期のカラーリングがどうにも自分にはそぐわない気がして、手を出せませんでした。
その後、上記の個人的嗜好だけで乗っていたコルナゴEPSに「見た目が似合いそう」という理由だけでR-SysSLを履かせてみた結果、車体が高剛性になりすぎて自分には乗れなくなってしまった為、R-SysSLの使用を断念。
貧脚でこのホイールを生かすには、フレーム側でこの剛性をいなす必要があると考えた結果、再びこのフレームが候補に浮上。
‘12のサイクルモードでカラーがマットブラックにモデルチェンジしていたのを目にして、これなら問題ナシと発注の運びとなった次第です。
パーツ構成は以下の通り。
コンポ:7800DURA-ACE
ホイール:MAVIC R-SysSL
ハンドル/ステム:FSA K-Force400mm(C-C)/OS99(100mm)
シートポスト:GDR(キャンペーン期間中に注文した為に付属)
比較的細身のラグドフレームという構造から、ちょっとクラシックっぽい雰囲気に仕上げたいと考えた結果、コンポについてはシルバー色で固めようと、あえて7800系のパーツのデッドストックを探して組み付け。
ただし非力な自分にノーマルクランクはキツいので、ここはスギノのOX801D(50/34)にしています。
まず特筆するべきは、フレーム各部の精度の高さ。
私は自転車の改造・組み上げについては自分で行っていて、所有する車体はロードを含め全てそうしてきました。
それらと比較するとMETEORは、これまで手を入れたどのフレームよりもパーツの組み付けが気持ちいい位にスムーズで、その精度の高さにおいては同じく自身で組み上げたコルナゴEPS以上-というより比較にならない程に品質が高く、この辺りは「国内メーカー」の底力を感じさせてくれます。
まぁ、そもそもフレームに各部分(フォーク含む)のクオリティチェックシートがくくり付けられている段階でこの辺りの管理の徹底と、そこからの自信が伺えるともいうものでしょう。
そして実際に乗ってみた印象としては、確かに他メーカーのそれとは一線を画した乗り味といえます。
結論からいってしまえば、何故にデビュー当時の各メディアのインプレの評価がほぼ否定より(毎年恒例のインプレ本にいたっては「スタンダードを目指した上で性能の向上を図りたい」とまで書かれる始末)だったのか、自分としては理解できない程にいいフレームです。
乗り心地については、必要以上の高弾性カーボンを採用しなかった効果か、やはり振動吸収が高くレースマシンとしてはかなり快適な部類であると感じられます。
とはいえ、ただコンフォートという訳ではなく、路面の状況を的確に掴む為に必要な剛性感は確保されており、「とにかく柔らかい」というイメージで乗ったとしたなら、「思ったよりカタい」と感じるかもしれません。
ただ、これで「乗り心地が悪い」と思われるのであれば、フルサスのDHバイクかモールトンにでも乗るべきで、ロードには乗らない方がいいのではないかと個人的には思いますが・・・。
コーナリング性能は、ストレートフォークらしいクイックさがあり、自分の好みには合っています。
ただし剛性とフォークコラム径の違いなのか、下りで加速した後のコーナリングについてはコルナゴEPSのレールに乗っているかの様なイージーさと比べると、ややアンダー傾向になるので若干のテクニックを必要とします。
走行性能の面では、よく加速やスプリントが苦手といった評価を目にしますが、この点については確かに一般的な高剛性フレームのノリで一気に高回転でペダルを回す様な踏み方をするとBB周りのウィップとタイミングが合わず、つんのめる様な感覚があり思う様に車体が前に進まない状態になってしまうのは事実でしょう。
ただ、漕ぎ出しでフレームにじわっと力をかけてから回転を上げていく様に踏んでいくと、一瞬の間の後に一気に加速を始めるので、踏み方を意識して乗れば加速・スプリントも問題なくこなす事が出来ると思います。
巡航や上りの局面では、回転系・パワー系のどちらの走り方でも違和感なく進んでくれますし、シッティングからダンシングへの移行もスムーズで、特に疲労が溜まってペダリングのリズムもバラバラになってしまっていると、EPSの様な高剛性のフレームではダンシングでBBに撥ね返される様なカタさが感じられ、かえって脚の疲労を助長してしまいニッチもサッチもいかなくなってしまうのですが、METEORではそんな時でもスムーズにダンシングができるので「もうひと踏ん張り」という時は本当に助かります。
また走行後についても、元々がステージレースを走る事を念頭に置いている為か、距離をこなした後に残る疲労感はEPSのそれと比べると、格段に楽です。
特にEPSの時は50kmを超えると途端に脚が動かなくなってしまったR-SysSLとのマッチングについても狙い通りで、このホイールで200kmを無事完走し、その後もそれほどひどい筋肉痛にならずに済みました。
これまでMETEORで2500kmを走って自分が感じたのは、メーカーHPにもあるキーワードの「人車一体」という言葉に違わない質の高い乗車感。
そして「しなり」がこの感覚をもたらすのに必要不可欠な要素であるという実感です。
他社のプロ仕様のフレームの多くが「効率的に走る」為の方法論として、チューブの大径化・異型加工の採用やBBを独自規格で大型化したりする等、剛性を上げる方向の選択をしています。
これはペダルへの入力をロスなく後輪に伝える事、つまり「いかに車輪(後輪)を回すか」という事にその回答を見出した結果であるといえるでしょう。
それに対してMETEORは比較的細身かつ円形加工のチューブを採用し、あらゆる方向に対して自然な「しなり」を生み出す事で、どんな踏み方に対してもフレームがその入力をスムーズにペダルへと導いてくれるかの様に感じられます。
つまり「効率的に走る」為には「ペダルへの入力をロスなく後輪の回転に変換する」事が不可欠であり、グラファイトデザインはそこから更に突き詰めた結果として、「いかなる入力もペダルの回転に変換する」という回答を導き出したのではないかと思えます。
グラファイトデザインがメーカーのコンセプトとして「init.=initialize」つまり「初期化」という言葉を掲げていますが、METEORにおいてはこの事こそが、「初期化」の最たるものであると、個人的には考えています。
ともかく長々と勝手な事を書き立ててしまいましたが、自身の結論としては「長く付き合える一台」である事は間違いがなさそうです。
価格評価→★★★★★(←性能からすれば十分に見合った価格)
評 価→★★★★★(←30万以上出して素人が後悔なく乗れる稀有なフレーム)
<オプション>
年 式→2013年
カタログ重量→ 1120g