上の地図は四条河原町周辺の自転車通行規制図。公式のものではないので細部に漏れがあるとは思うがご容赦戴きたい。本来ならば道路管理者または京都府警が作成し、ネットなどの手段を用いて周知徹底を図るべき性格のものだが、それも見当たらない。いくつかの自転車用京都ガイドブックと、2009年7月下旬の現地踏査で筆者がまとめたものである。
ワインレッドの部分が歩行者専用、これはほとんどアーケード商店街なので当然として、ピンクの部分は軽車両のみ通行禁止の道路。三条通が河原町通と川端通の間、四条通が烏丸通と東大路通の間、河原町通が御池通と仏光寺通の間、概ね8時から22時の間、軽車両の通行ができない。
点線は道路地下を通る鉄道と駅。赤は主要な大規模小売店鋪と公共施設、劇場、神社などを示している。見ての通りここが京都の中心と言っていい。
自動車専用道でもない道路で軽車両の通行規制というのも珍しいが、街の中心街に自転車が入れない街というのも、私は他に知らない。おそらく世界的にも珍しいだろう。
たとえば香港の中環や彌敦道で自転車を見かけることは殆どないが、それは単に海を挟んだ坂の町だから、歩きと公共交通機関ですべて事足りるから、自転車は貧乏人の乗り物だからという香港人の偏見、それらすべてをひっくるめて、街の規模の割に自転車の台数が極端に少ないから見かけないというだけのことで、別に香港特別行政区が自転車の通行規制をしている訳ではない。
世界的にも珍しいこの状況、何故こうなったかを考えると、結局四条河原町という街が駅の乗り換え通路で、道そのものがバスターミナルでありタクシー乗り場で、店があって、そこに一般車がお邪魔している、姿は見えないが路上に鎮座したターミナルビルだからという一点に尽きる。
見よこのバス停の数。もはやこれはバス停というレベルではない。しかも京都市交通局だけでこの数だ。ほかにも京都バス、京阪バスなどがここに発着している。さらにその隙間にタクシーが突っ込んでくる、店の配送車が停まっている、往復4車線の道路は2車線しか機能しない。国際的観光地らしく県外ナンバーの一般車が右往左往している。中には右ハンドル左側通行はじめてという外国人もいる。
祭りがある訳でもなく、事故があった訳でもなく、工事でもなく国賓来日でもないごくありふれた平日の宵の口に、わざわざ四条通に警官が出て交通整理をしているのは伊達ではない。カオスというより、これはもう魔女の大鍋と言っていいだろう。
現地を見て思うのは、正直言って処置なし、ダメダこりゃ、である。
唯一解決策があるとすれば、一般車の乗り入れを規制するしかない。京都市も四条河原町周辺への一般車乗り入れを規制したトランジットモール社会実験を行なうなど、検討は行っているようだが、そこに自転車通行復活の目はない。なにしろ市のwebsiteで公開されている各種文書には「自転車は公共交通のライバルである」「自転車利用者をいかに市営交通に引き込むか」などと公然と書かれている。京都市が基本計画に掲げる、"歩いて楽しい「歩くまち・京都」"の正体はこれなのだ。
立派なお題目だが、市営交通増収のためのスローガンに過ぎない。
今後、自転車通行規制区間が広がることはあっても、1mたりとも撤廃されることはないだろう。
地元のクルマは渋滞を避けて四条河原町に近づかない、自転車は通れないから避けて通るしかない、クルマからも自転車からも嫌われる街づくりが果たして正しいのか、正しくはないと思う。だが、それでも街としてやっていける恵まれた場所、それが四条河原町だ。
やっぱり強いよ京都ブランド。
ご旅行に際しては、レンタサイクルの場合、貸し出しの際に通行規制について説明があるかと思うが、自転車持ち込んで京都観光という場合はご注意を。
評 価→☆☆☆☆☆(理由はどうあれ、自転車関連レビューとしちゃ、星なしは当然でしょ)
参考文献
京都自転車デイズ 光村推古書院
京都散策自転車ノート 京都新聞出版センター