購入価格 ¥4000弱(バンドル販売品なので推定)
今年も残すところあと2ヶ月。今年のベスト○○なる企画が巷をにぎわす時期が
近づいてきた。個人的に今年読んでもっともショックだったのは、ツーリング先で
フラッと立ち寄ったブックオフで手に入れた前間孝則著『マンマシンの昭和伝説』と
いう本である。いや~。近所にあるよく知っている工場(単にガキの頃、社会科見学
というやつに行ったことがあるだけだが)について書いてあったのを立ち読みして、
100円だし軽い気持ちで買ったんだが、何が書いてあったか?
太平洋戦争の始まる数ヶ月前まで、『技術提携先』であるアメリカの
エンジンメーカー関係者が『生産指導』に来ていたそうな!え!つまり、
今で言う『現地生産』ってやつだ!その数ヵ月後に開戦?そんな無茶な!
20数年前に、当時流行っていたサリンジャーというアメリカの作家の
小説を読んでいて、太平洋戦争中の話なのに『エアコンのスイッチを入れる』という
フレーズがあり思わずのけぞったのを思い出した。アメリカは、
その頃から、今の日本と同じくらい豊かだった訳だ!
ということは、いわゆる欧米先進国といわれた国々は、われわれの祖父や父の
時代から豊かだったことになる。
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かくのごとく『豊かさ』の歴史が長い欧米では、日本のように高いものが
素晴らしいという考え方が薄いようだ。その商品の価値と値段を
天秤に掛けて、気に入れば買うし、高いと思えばもっと安くて良い品を探す。
日本でも、自動車では、昔はその車種の一番高いグレードが売れ筋だったらしいが
最近はそんなことは無しらしいし、もっと身近な衣料品の分野で考えると
おめかしをしてブランド物のコートを着ていても、下は『ユニクロ』とか『しまむら』ってのも
最近、全く抵抗が無くなった。
しかし、ほとんどの日本のサイクリストの胸のうちには、熱き夢がある。いつかは△△の○○万の
フレームとか、おなじく××の○○万のホイールとか、電動デュラとか、「分不相応じゃん」と
内心では分かっていても、一度は乗ってみたい、使ってみたかったりする
「若い世代は自動車に余り興味を示さない」と自動車メーカーは悩んでいるそうな。
スーパーカーというやつに憧れの視線を送っていたくせに、いざ自分が車を買うとなると
運転席側から助手席を倒せるレバーのついたあざとい『デートカー』を購入するために
色々工面した覚えがある我々には隔世の感がある話だが‥
今から数十年後には、「おじいちゃんの時代は『電動デュラエース』ってやつが憧れでの~」
なんて話をしても、今、自分の子供たちの世代に昔の車の話をしても相手にされないのと同じように、
孫にフンとあしらわれるのでは?思われる
『豊かさ』というやつは年月を経るにつれて、人間の生活を高額なブランド品に囲まれた生活に
向かわせる訳では無く、商品に対して過度の思い入れがなくなって、醒めてくる方に導くようだ。
最近、”cool”という言葉を時々聞くようになったが、英語での語感は知らんが、日本語でいう
「クール」という言葉は、こういった醒めた消費者の感覚を的確にあらわしているように思う
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さて、やっと長い長い前置きが終わって本題に入るんだが、日本のメーカーは、我々がまだまだ
熱い自転車に対して、「クール」になっている欧米の消費者を相手に商売をしている。
当然、日本で人気のものが向こうでは売れなかったり、その逆もあったりする
今はネット全盛時代だから、各メーカー、それぞれの国別にホームページを開設している
たとえば、今回とりあげる猫目にしても、日本のHPの上にあるGLOBAL SITE をクリックすれば
アメリカ向けのサイトが見れる。猫目の場合、さらに Select Your Language というプルダウン
メニューを選択すると、それぞれ各国向けのサイトへ飛べる。(こういう作りになってなくても、
だいたい、co.jp の代わりに、 com とか、その国向けの拡張子を打ち込めば、その企業の
海外向けサイトへ行ける)
こういった海外向けのサイトを眺めると、これからの自転車界の未来が読めるような
気がして(錯覚)、ちょうどタイムマシンに乗ったような感覚?で、ちょくちょく
海外向けのHPを覗くのが趣味になってしまった。(単なるネット廃人)
その中で、前々から気になっていたのが、今回取り上げるHL-EL320である。今回、リアの
ライトとして、日本ではもはや販売されてないTL-LD600Rを入手するついでに、バンドル
販売されている320を入手したので、以下レポートしてみたい
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最近、出番が無くなったHL-EL510を分解したんだが、すごく凝った作りになっている。
上の写真は、510のLEDが入っている部分を、電池室側から見たものだが、真ん中に
見えるグレーの丸いものが、510の電源スイッチである。ユーザーから見ると、
510/520シリーズの電池室は本体の一番後ろにあるのだが、実は、電池室を貫く
プラスチックの棒によって、前部にあるこのグレーのスイッチを押す構造になっている
左から、Hl-El520 320 220
対して、今度取り上げる320はごく常識的に、スイッチ部品はちゃんとライトの尾部に
ある。想像に過ぎないが、320やほぼ構造を同じくする210/220シリーズには、
ライト部底面に穴が開いている。これは、LEDの熱をにがすためか、ダイナモから
電源供給を受けるためのケーブルを通すためか、どちらか、又は両方の理由が
あったのだと思われるが、510,520シリーズにはこういった穴は無い。しかも、
電池室とランプ部の間には、輪ゴムのようなちゃちなものだが、Oリングまで入っている
防水構造になるし、LEDと電池室が離れるから、電池室の過度の加熱も予防できる。
当然、510,520は製造コストが高くつく。現状、大体、2割以上高く売られている。
しかし、自転車に対してクールな消費者が多い欧米では「そんなもん要らんから同じくらい
明るくて安くしろよ!」という要望が多いだろうということで、開発されたライトが
320であるようだ。
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電池室の構造は、210/220にそっくり。ただし、お持ちの方はご存知だと思うが
210/220シリーズは電池を2段に入れることになり、下段の電池が入れにくく
出しにくい。クレームがあったらしく、電池室下部に、電池取り外し用のボタンが
設置されている。このあたりは、日本メーカーらしくキメ細かい配慮である
左側:320 右側:520
ライト前面を見ると520より大きく見えるが、これは、多分、ハロゲンランプの
時代の商品と、余り変わらないような見栄えになるように考えて、つまりより保守的な
消費者をターゲットにデザインされているのではないかと思う。
ライトの口径が大きい分、リフレクターの長さも520より深い。そうしないと、
照射角が同じように保てないのでそうせざるを得ないわけだ。
(照射角度は僅かに320の方が狭い)
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320の照射映像 白い四角いものは我が家の台所のゴミ箱。前のものが5m、後ろのものが10mに置かれている
参考:520の照射映像
明るさは520とほぼ同じ。画面をみると、中心はちょっと320の方が明るく
周辺は520の方が明るいように思うかもしれんが、これはボロのコンデジで撮影
しているため、微妙な明るさ暗さはカメラ側で勝手に補正されてしまうため、夜空の暗さを
基準に撮影後に明るさを補正していることにも起因しているので、撮影者の腕の問題と考えて欲しい
本当の所、どちらかが明るいのか、猫目発表データは、320と520が同じ明るさの国(イギリス)、
320より520が明るい国(アメリカ)と国によって、同じ機種でも明るさが違うので
はっきりしないのだ。
実は LED は、不点灯で無い限り出荷される。ただ、現在の技術ではかなり出来にバラつき
があるため、明るさによって細かくグレード分けされている。そこを利用して国ごとに違う、
前照灯としての基準に適合すべくLEDの使用グレードを細かく使い分けているのかもしれない
右側のブロック塀に人影が見えるが、これは後ろの道路に街灯があるため
撮影者の影が映りこんでいる。周辺光量の無いライトだと、街灯の明るさが勝ってしまう。
つまり、両方とも猫目ライトの欠点、周辺光量の無さは共通している
かって、日本の自動車メーカーが衝突安全性にいち早く着目した海外向けには、
仕様を変更していて非難を浴びたように、「自転車先進国?」向けにはもっと配光が
良いライトを作っているんではないかと疑っていたので、その点ではがっかりした
(いや。疑ったりしてすまん)
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結論から言うと、HL-EL520とほぼ同じ明るさ、配光特性を持ち、防水性が
劣るのが320である。ウイッグルの価格は、アサヒの520の価格よりは安いが
アマゾンよりは高い、微妙なところにある。あとはデザインの好みで決めても良いと思う。
LEDは発展途上のデバイスゆえ、1年違うと大きく変化する。そのため、
520とほぼ同じ時期に発売されている320に、今、手を出さなくても、とも思う。
ちなみに、アメリカでは、520、320とも猫目のカタログから、今秋、姿を消している
ただ、ランプ類は日が短くなると売れるようになるので、本来は夏頃に新製品発表を
するのが理想的なのに、いまだに発表が無いところをみると、次の新製品は
来夏以降となる可能性が濃厚なので、今、ライトが必要で、猫目の製品が
使いたいのならば止めはしない
価格評価→★★☆☆☆(ちと高いかな。)
評 価→★★★☆☆(今となっては平凡な1Wライト。この1年間の趨勢の変化で★1つマイナス)