購入価格 ¥モニター
台湾のU-Chien Enterprise
http://www.e-chien.com.tw/english/index.htmlコアなサイクリストでもおそらく知らないであろうこのメーカーから、
サイクルベース名無しへとメールが送られたのが事の発端。
変わったモノもあるんだなぁと思っていたら、いろいろとご縁があって
へっぽこレビュアーを自負する私がモニターをさせて頂けることになった。
ではまず、箱。
この時点で違和感を感じるだろう。
オープン!
アボリジニの投擲武器…そう、ブーメランにしか見えない。
クランクの形状を工夫することで、通常のストレートクランクでは得られないメリットを得る製品…らしい。
メーカーサイトには図や数式を並び立てた解説があるが、
正確さに疑問が残る点が何点もあり、正直胡散臭い。
とくに、湾曲によって重心がずれて云々…の記述は怪しい。
左右クランク全体で見たら打ち消しあうし。
さて、このクランクで特徴的なのはなんといってもその外観。
形状から察するに、踏みおろす力を一部クランクの変形に費やし、
その復元力を下死点で利用することで、滑らかなペダリングを実現するものと思われる。
もう怪しさ全開だが、私はこれを評価したい。
「かくあるべき」という保守的な視点では、進歩はありえない。
もう見るからにダメそうだけど、新たな可能性に賭けた心意気は素晴らしいと思う。
スローピングフレームもデュアルコントロールレバーも、最初は否定された。
もしかしたらこのクランクも…
そう、今から20年後、「大昔はクランクがまっすぐだったんだよ」と語られるようになるかもしれない。
…少々大げさか。
閑話休題。まずは体重測定。
右クランク368g
左クランク361g
スパイダーアーム210g
ボルト類80g
BB262g
アウターリング(53T)108g
インナーリング(39T)38g
なんだこれ。重っ!総重量は1427gにも達する。
105グレードのFC-5650がBB込みで900gを割り込むことを考えると、
この重さがわかっていただけるだろうか。
スクエアBB、クランクも中実でカーブしているんだから重くて当然とも思えるが。
なお、この箱にはチェーンリングが付属していなかったが、
後日チェーンリングだけ送ってもらえた。
BBはFSA製だったので、チェーンリングもFSAかもしれない。
何はともあれ組みつけてみた。
先ほどの重量に加え、いまどきスクエアテーパーBBなのが不安を煽る。
クランクはまっすぐという認識があるので、もの凄い違和感を感じる。
ダイナミックな曲線が目立つカーボンフレームならまだマシだったのに…
だが、クランクだけ見ると全くイケてないわけでもない。
バイクに跨り走り出すと、微妙な違和感。
クランク長が172.5mmから170mmになったからだけではない。
そう、実はこのクランク、トリプル用なので無駄にQファクターが広い。
左クランクにいたってはBB軸が丸見えで不安。
スクエアテーパーだけあって、ホローテックIIのような剛性は無い。
信号待ちでブレーキをかけながら踏み込むと、BB軸ごとクランクがたわむのが目に見える。
普通に走る限り、特に湾曲クランクの恩恵は感じない。
ビンディングを脱着するときなど、靴とクランクが擦れる場所が違って違和感を感じる程度。
所詮、見掛け倒しだったかと帰路につき、自宅前の坂道をいつものように登り始める。
せっかくなのでアウタートップに入れて、ダンシングで上ってみた。
体重だけでは到底トルクが足りないので、思い切り体をひきつけて上って行く。
いつもに比べて、妙に下死点がスムーズ。
下まで踏み切ったとき、スッと足が後ろに動く感じ。
クランクの復元力が活きているのかな。
坂道に限らず、スプリントなどダンシングで重いギヤを踏み倒すときに効果が実感できる。
踏力を一度溜め込んでから放出する。どこかで聞いた気がする。
そうだ、柔らかいクロモリフレームと同じじゃないっけか。
リヤ三角が変形してなんたらかんたら・・・と理屈で知っているだけだが。
とにかく、アルミフレームに高剛性クランクで育った身にとっては面白い乗り味だし、
ダンシングで高トルクをかけてすいすい上って行けるのはいいが、
いかんせんデメリットが多すぎる。
軽量高剛性の時代に、重くてわざわざ剛性を落としているわけで、
ことレースでは500gの重量と引き換えに得るものは少ないと思う。
だが、泊りがけのツーリングで自転車に荷物を積んで走ることを考えたら、
案外このクランクが合っているかもしれないと思った。
確かに重いしロスも多いが、長距離走るなら疲れないかも、と。
価格評価→★★★☆☆ 参考価格を見る限りお得ではない。
評 価→★★★☆☆
実測重量 1165g(BB除く),1427g(BB含む)