多摩湖サイクリングロードは私が一番好きなサイクリングロードだ。
純粋なサイクリングを楽しむためではなく、多摩湖周遊コースを試走のために利用させてもらっている。
試走といっても、タイムトライアルではない。私は暗闇を求めて多摩湖に向かう。
ハンドル回りのレイアウトの肝はライトだ。何メートル先を、どのくらいの明るさで照らせば安心できるのか。安全に走れるのか。個々人の脚力とスタイルに左右されるので、自分自身で確かめるしかない。
だが、都心に暗闇は多くない。どこであっても街灯や自動車のライトが道を照らしている。川沿いのサイクリングロードは暗くはあるのだが、対岸のビル群や空(夜空は意外と明るい)のおかげで、闇とはいえない程度の暗さだ。
多摩湖サイクリングロード 。
その中でも多摩湖の北側は、民家もなく、商業施設も数えるほどだ。横断歩道もない。鬱蒼と茂った木が夜空の明るさを遮る。
適度なアップダウンとカーブが連続しているので、平坦な直線だけでは得られない、暗闇への気付きがあるのだ。
深夜帯は交通量も極めて少ない。一周する間に五台、車が通れば多い方だ。
南から村山下ダムを渡って北側に行くと、まだ多少明かりがある。
半時計回りに進んで、コンビニ(サンクス西武園西店)を過ぎると、そこから暗闇がはじまる。
西武ドームまでまったく街灯がない。もし翌日に何のイベントもなかったら、西武ドームも詰め所のような建物にぽつんと明かりがあるだけだ。
村山上ダムの立体交差では下の道路に街灯がある。そこから南側に回るまでは、もう街灯はない。
村山中央病院の手前から街灯が増え始める。このあたりから『宿泊施設』(二重鍵括弧の意味は察して欲しい)と民家が増え、濃密な暗闇は失われる。夜明け頃には散歩やジョギングを楽しむひとの姿も見受けられる。
暗闇を求める上での難点は、ひとりで走らなければならないことだろうか。連れ立って走ると、仲間のライトで余分に明るくなってしまい、自分のライトのテストとしては不十分になるかもしれない。
容赦なくへばりつく蜘蛛の巣。草むらをがさがさ揺らす野生動物(猫? アライグマ? ハクビシン?)。神社。『宿泊施設』の廃墟。雰囲気もたっぷりだ。あなたが男性で、東京の23区西側〜青梅あたりに住んでいて、本格的な夜間走行の前にテスト走行をしておきたい。あるいはさわりだけでも体験しておきたいのであれば、多摩湖サイクリングロードをおすすめする。
評 価→ ★★★★★