[MTB] brodie calryst (88')
いままで乗ったMTBでどれがベストかと聴かれると間違いなくベスト5に入るフレーム。
その昔、BMXリオにいらしたMさんが個人輸入で購入したものを一台分けていただいた。そののち日本にも正式輸入されることとなり、フレームだけで28万円、いくらバブル期といっても代理店調子に乗り過ぎである。
ロッキーのブリザードに似たスローピングフレームで、今でいうところの丹下プレステージ同等のバテットパイプで構成されている。フレーム重量は概ね2.4kg程度だったと記憶、お世辞にも軽いとは言えないがトレイルでのハンドリングが素晴らしく、リアバックの粘りも程よく大好きなバイクでした。細身のチュービングの端部はいろいろな方向に潰されていいぇとても丁寧に溶接されています。ミヤタのリッジランナーとか、アラヤのラグドフレームとか、BSのMB-○○くらいしか見た事の無かった僕には、これが本物のレーシングフレームなんだと興奮を隠せない仕上がりでした。
でも、まだまだこういう製品が飛ぶように売れる時代ではないし、そもそもMTBの競技も固まっていない時代なので、結局売れ残ったものを購入。軽量フレーム故転倒時に低くセットしたハンドルバーの端部がヒットしてトップチューブと接触、あえなくトップチューブが凹んでしまったけど、そんなの無問題、そもそも白地にカッティングシートでbrodieのロゴが貼付けてある様なフレームだし、代理店のアホみたいな価格設定も島国根性丸出しなんで、使ってなんぼ、凹んでなんぼだと思って乗り回してました。
パーツセッティングはシマノのXT、ホイルはRM17のハードアルマイト。タイヤはフロントがパナのティンバックツーで、リアが三ツ星のヒルトップ5100。当時は実質これしか選択肢が無い時代だったけど、それ故にマウンテンバイクに乗るという行為にあまりヒエラルキが無くて、安比に行けば大竹さんも柳原も僕らと大差の無い構成のバイクに乗っているから、競技そのものが機材の勝負ではなく、純粋にスキルの勝負だったとも思えてきます。コーナーでこけるのはそいつが下手だからし、仮に転んでしまったり、DHで後ろの人に抜かれてしまってもどこか得意なセクションで決めればそれでいいって感じ。そういうことはタイムが一番かどうかとおんなじくらい大事されていた時代だとも思います。
とはいうものの、やはり、少しだけアッセンブルには気を使って、クランクはサンツアーのXCプロ、デカペダルも回りのいい旧サンツアーのXCプロ、BBは同じくサンツアーのグリスガードを使ってました。外見上はどうでもいいくらいの微細な差異でしかないのですが、そもそもほとんど同じ様なパーツ構成のバイクが多いので、勢いこうした細部の差がスタート地点での待機中、見知らぬライバルとの暇つぶしの話題になっていました。当時も変速系はシマノしかあり得ない感じでしたが、シフトはサムシフター。これも左右逆勝手に使い、レバーを親指に下に押し込むと大きなギア板側に変速する様に工夫。コレ当時、グレッグヘルボルトの世界戦の写真を見てまねました。とにかく情報量の無い時代ですから、マウンテンバイクアクションの写真を食い入る様に眺めてトップライダーの工夫を分析して試したものです。この状態で多分12kgくらいのバイクだったと記憶しています。
昔話をもうすこし続けると、当然、フォークもリジットでクリップレスペダルが唯一の最新鋭パーツという感じ、brodieに関して言えばフォークはアルミクラウンに六角ボルトでクロモリ製のブレードがねじ止めされているだけ(これはあくまで見た目だけのことで、実際は接着剤も併用していたはず)、ガレ場では手にヂンヂン来る触感。こいつで、午前はヒルクライムをして、午後はタイヤを履き替えてダウンヒル。昼食時にはバイシクルポロをするというのは90年くらいまでのMTBレース会場のごく普通の風景でした。ヘッドはノーマル、ステムもクイル、当然むちゃくちゃ緩むしすぐ壊れるので、リテーナを外してバラ球にした状態でリテーナ状態よりも球を一~二個多く詰め込むも、競技前にポジションをセッティングし直す際におはじきみたくベアリングの球を地面にぶちまけたり、、、それを横でみていた他県のショップの方がなくなった球を工具箱からさっと手渡してもらったり(なんで持ってんだよ)、今思い出しても、このバイクで走った経験が楽しく思い出されます。
このバイク、随分気に入っていたのだけど、愚かな学生故リアブレーキがUブレーキであることでだんだん使い勝手に不都合を感じ、他のに買い替えてしまって手放しまいました。今でも後悔しています。
夜中に大学の研究室でbrodieのサイトを発見し、辞書と首っ引きでかなりブロークンな英文を書いて、paul brodieにメイルをかいたらなんと本人から「日本でも俺のバイク乗ってる奴がいるのか、楽しんでね」という様なメイルを頂いたりしたのも良い思い出です。あのころ世界は狭かった。なんだかおっさん臭いのですが、まだまだ競技人口も少なかったし、競技といっても今の様な形式化されたものではなく、遊びの延長だった気もするし、なにせ競技人口が少ないのでレース会場に行くのは、普段会えない知人に会いにいく様な感覚だったりしてとても懐かしいです。
同種のフレームとしては、バンクーバーのオフロードトード/マングースのアイボックシグネチュア/そして何と言ってもマウンテンゴートのウィスカートレイルあたりが幅を効かせていたと記憶,これらはトップも長くホリゾンタルに近いクラシックなスケルトンでしたが、ブロディやブリザードはトップが大胆にスローピングしており、異彩を放ってました。
こんなことを思い出すとイテモタッテモいられなくなり、最近ロッキーのブリザード買おうかなと画策中。
価格評価→★★★★★(プライスレス) 評 価→★★★★★(ハンドリングが良く、当時としては軽かった)
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