購入価格 ¥ 65000円くらい。おそらく定価そのまま。地元のショップで。
馬鹿野郎!
円高が進んでいるから心配はしていたが、なんだこのふいんきは!
ライトウェイトとかボーラウルトラとか、何で一気にハイエンドなんだ!
えらそうにいう俺だが、昔はお前らと同じでコンプレックスのかたまりだった。
どうやら、説教するよりも俺の過去の経験を話した方がよさそうだな・・・
それは俺が就職したて、初の転勤を迎えたころのことだ。
月収はわずか十数万円。家賃や食費を引くとわずかしか残らない。
それでも俺は就職記念に以前からあこがれのあったクロモリホリゾンタルのGIOS AIRONEを手に入れたのだ。
シンプルな青いフレームはdesigned in italyで、おそらくmade in 中国他、よくて台湾。
地味なデザインはGIOSの他のモデルとの見分けもつかない。
コンポーネントはSORAで、デュアルコントロールレバーですらなかった。
その割にホイールは奮発して、RS80を購入した。
俺の通勤路は、ちょっと遠回りをすると標高200m程度の峠がある。
通勤バイクにちょっといいホイールを履かせておけば、仕事の前後のトレーニングにも身が入ろうというものだ。
購入に際して、対抗馬となったのはライトニングのアルパインだ。
「アルパインもおすすめですよ。軽いし、RS80よりも1万5千円ほど安いし。ただし、アルパインの軽さは、たぶんにハブの軽量化によるものですよ(アルパインのリムは400g、RS80は380g。公称。)」
「通勤用なら充分、というかオーバースペック。でもこの値段はいいと思う」
「(私が週末用バイクにWH-7850-C24を使っているのを知っているから)リムが同じRS80で走り慣れておくのは、トレーニングとしては理にかなっている」
「地元の大学の自転車競技部の部員がお客として来るが、何人かがRS80を使っている。雨が降っても構わず酷使するが、リム、ハブともに耐久性は良好」
といった店長さんのアドバイスをもとに、RS80を選択した。
新車がうれしくて、通勤用のはずが休みのたびにあちこち遠出にもかりだしたものだ。
RS80の走りは良く、上位機種ということになるWH-7850-C24と遜色がなかった。
おそらく、目隠しをして乗ると、違いを言い当てることはできないであろう。
リムが同じなので当然と言えば当然だが、ホイール交換をしてもブレーキシューの調整がいらないのもいい。
「調整はしていますが、フレなど出たら持ってきてくださいね」
と店長さんは言ったが、2年10000km乗った今でも初期フレすら出ていない。
依然としてきちんとセンターが出ており、回転も滑らかである。
ちょっとショックだったのは、スポークが少々サビやすいことだ。
ポツポツとまだら状のサビを、購入1か月くらいの時点で発見して、ちょっとヘコんだ。
今では全体的にくすんだ色になったが、表面が薄くサビたらそれ以上は進行していないような気がする。

そんなある日、ショップの主催で走行会があると聞いた。
憧れの高級車やめったに見られない外車が集まると思った俺は、期待に胸を膨らませて、愛車AIRONEで意気揚々と出かけていった・・・
しかし、いざ会場についた俺は、所狭しと並ぶ高級車や名車にすっかりびびってしまい、自分の自転車がとてつもなく恥ずかしく、場違いに感じたのだ。
そのとき、デローザKING3のオーナーらしき中年のおっさんが、俺に話しかけてきた。
男「おい君。そのAIRONEは君のバイクかね」
俺「ハイ、いえ、ちが、違います。これは俺の連れのバイクで・・・」
男「じゃあ君は何に乗ってるの?」
俺「はあ、あの、えーっと、ああ、あでぃくとです」
男「そうか、いいバイクに乗ってるね。よければこっちでみんなと一緒にお茶でも飲まないか」
そういう男に頭を下げると、俺は逃げるように愛車AIRONEとともにその場を立ち去った。
「ちくしょう。こんなとこに来るんじゃなかった。金持ちリア充のおっさんどもに俺の気持ちが分かってたまるか!」
ギュギュギュギューーーン!!
頭に血が上ったまま下りのカーブをハイペースで攻める俺。
いつの間にか限界を超えたタイヤが悲鳴を上げ続けているのにも気がつかなかった。
ウワァァァーーー!!
そしてついにコントロールを失った俺は草むらにコースアウト。
しかも落車の衝撃でハンドルの取り付け角度が歪んでしまった。
初心者だった俺はどうしていいかわからず、途方にくれて愛車のそばに佇んでいた。
すると、さっき話しかけてきたおっさんがデローザのKING3を駆って下ってくるところだった。
男「君!どうしたんだ!?それは友達のバイクなんだろ!?」
俺「いえ、本当は俺のなんです。みんなすごい高級車なのに、かっこ悪くて・・・」
その時だ、その男の容貌は鋭く豹変し、荒々しく隆起した腕から繰り出されるストレートパンチが俺のあごをとらえ、俺はあかつきの空を舞った。
男「馬鹿野郎!!自分の愛車をかっこ悪いとは何だ!それでも自転車乗りか!
外車であろうが国産であろうが、新車であろうがぼろぼろであろうが、同じ自転車だ!!
どこまでも青いこの空を共有してることに変わりは無い!心のしがらみは捨てるのだ!」
そういうと男は、ジャージを脱ぎ捨てて見事なまでに鍛え上げられた肉体をさらけ出した。
40過ぎほどの年齢に見受けられたが、その足は例えるなら象の足のように太く、腕は丸太のようであった。
ヌォォォォォォーーー!!
男はすさまじい咆哮を上げると、気合もろとも俺のハンドルのゆがみを修正した。
その瞬間、俺の心のゆがみも修正された。そして悟ったのである。自転車に貴賎はない。
どんな自転車にもそれぞれの魅力があり、思い出を宿しており、それらは何者にも変えがたいものだ。
それに優劣をつけるのは、乗り手にすぎない人間のねたみや劣等感でしかない・・・
俺はそのことを教えてくれたその名も知らぬおっさんを、改めて心から尊敬するようになったのだ。
いつしか俺は、若いころ教師だったというおじいちゃんの言葉を思い出していた。
「つよし、『天は人の上に人を造らず』じゃよ。」
そうなのだ。同じように、自転車屋も、自転車の上に自転車を造らず、なのである。
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要点をまとめます。
【スタートダッシュ】
★★★★☆
R500などと比べると、差は歴然。キュッと前に出る。30km/hを越えるまでの加速がラク。
【巡航性能】
★★★☆☆
普通・・・かなぁ。
【ヒルクライム】
★★★★☆
WH-7850-C24と同等。
軽快です。
星4つなのは、まだ上があるだろうということで。
【ダウンヒル】
★★☆☆☆
私が下りを怖がるのはホイールのせいではない、と思う。
ただ、重いホイールの方が安定して下りの直線を飛ばせる。
まわりの人にあまり同意を得られない話なので、話半分で聞いてください。
【ブレーキング】
★★★☆☆
普通によく止まります。
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価格評価→★★★★★
評 価→★★★☆☆