購入価格:¥861 (@近所のホームセンター、エアゾール70ml入。ブラックのみ少し安い¥820)、専用クリーナー・ソフトリムーバー¥537、各100ml缶入。
Arione 00のセンターにデーンとやたら目立つイエローラインを消したくて、染めQに挑戦。のグレー・ブラック中心に暗色系を数種、それとギンギラ銀というアルミシルバーに近い色、それとクリアーを仕入れてみました。
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結局使用したのはギンギラ銀+クリアー。センターライン部分の他は染め直ししていません。
のっけから脱線しますがFi'zi:kサドルのマーキングはアセトンで簡単に落とせます。今回使ったArione 00は一部バックスキン風仕上げの素材が使われているので、溶剤で溶けたペイントが滲んで汚れてしまうのが心配でした。そのまま上塗りしようかとも考えたのですが、染めQの性質上デカールにシリコンが含まれていると染まらないので、やはり落としておくことに。溶けて少し滲んでしまった部分はやはりアセトンを含ませた布や綿棒で丁寧に拭えば綺麗になります。microtexはアセトンで縮んだり風合いが変わるような事はありませんでしたが、本革や他社のLorica素材などに溶剤の類を使う場合、裏の方の目立たないところで大丈夫かどうか試してからにしましょう。
サドルのど真ん中で失敗ややり直しはしたくないですし、前もって仕上がりを予想する為にサドル表皮と同じmicrotexのハギレでテスト。おなじみFi'zi:kバーテープ、ホワイトの切れ端です。
染め直す色の候補として調達してきたのは、(トーンが明るい順に)シルバー・ロイヤルグレー・エスプレッソブラウン・ブラックグレー・ブラックの5色と上塗りするためのクリアー。どれも隠ぺい力の強い色なので不要だとは思いましたが、念のためベースコート(エアゾール70ml入¥645)も買っておきました。下地になるハギレはペーパータオルに専用クリーナーを染み込ませたもので拭い、脱脂してあります。専用クリーナーはタミヤのエナメル塗料用シンナーと同じ様な匂いがして揮発がゆっくりなのも似ていますね。試してはいませんがもしかしたら代用できるかも…
さて、染め上がったテスターがこちら。
左上から時計回り方向にブラックグレー・ブラック・ロイヤルグレー・シルバーで塗り分け。一度全体にブラックグレーを吹き、その上にマスキングしながらブラック→ロイヤルグレー、シルバーの順で吹いています。仕上がりを比較するために左のブラックグレーだけマスキングして後の色にはクリアーを吹いてみました。下のハギレはエスプレッソブラウンで、同じくベースコート・クリアー無しの吹きっぱなしです。すべて重ね吹きは2回。一回目は軽く砂吹きの状態にして2~3分ほどフラッシュオフタイム(溶剤を揮発させる為の放置時間)を取り、2回目に2往復を目安に吹いてみました。ハギレとノズルの距離は15~20cm程度。乾くとトーンが一段暗くなりますので、吹いた直後の状態で仕上がりを予想せずにフラッシュオフさせながら吹きましょう。一気に仕上げようとすると染め上がりにムラが出来る上、シボが目詰まりしてペンキでベッタリ塗りたくったような残念な質感になりやすいです。
テスターを作ってみてわかったことがいくつかあります。
・吹きっぱなしではツヤはほとんど出ません。クリアーを塗っていないブラックグレーやエスプレッソを見ればわかりますね。
・重ね塗りは3コート、各レイヤーはしっかり乾燥させながら薄く・均一にを心がけて。2コートだとところどころ染めが甘い部分が出てきます。暗い色なら2コートでもムラは目立ちませんが、ロイヤルグレーやシルバーのような明るめの色ではムラが目立ちやすいようです。
・専用クリーナーは筆などを使ってたっぷりしみこませ、シボの隅々まで脱脂する。テスターの段階では、脱脂はペーパータオルに含ませたクリーナーで何往復か拭うだけでしたが、どうやら完璧を期すなら筆か刷毛でたっぷりと塗り込んでから拭う方法が良いように思いました。というのも、光を水平に近くして透かさないとわからないレベルでなのですがシボ(表皮の肌理)に所々染まりきっていない部分ができてしまい、発色が良くない部分があります。サドルの方は筆でしっかり塗って脱脂したところ、より発色が良く染めムラもほぼ無くなったように思います。
・シルバーは染料が定着するのが遅く、吹きっぱなしだと移染やかすれが出来やすいので、クリアーで保護しておいたほうがよさそう(他のメタリック色も多分同様)。エアゾールを吹いている最中も染まり具合が判断しにくい(というか全く染まっていないように見える)のですが、溶剤が飛ぶと色が出てくるというちょっと特殊な染まり方をします。エアゾールは吹きすぎないよう注意!
10分程乾かすと指で触ったり軽く擦っても落ちない程度に定着します。長期的な耐久性や耐候性はまだわかりませんが、しっかり染まっていてツメを立て擦っても落ちないのを見る限り、問題ないように思えます。クリアーを重ねるとツヤはでるのですが、厚塗りができないのでエナメル的なツヤにはならず、発色が僅かに暗くなってオイルを塗ったような質感が出ます。つや出しだけなら靴用のカルナバワックスなどでも出せると思いますし、一度塗ってしまうとクリアーだけをきれいに落とすことはできなくなるので、ずっとツヤをキープしたい場合やメタリック系の色が移染したりかすれたりするのを防止したい場合用、と考えた方が良いでしょうか。
エアゾール缶の印象ですが、ノズルの出来はそこそこで割と細かい霧が噴霧できます。当然ガンとコンプレッサーで吹くように細かな霧が安定して出せるわけではありませんが、単純な線なら割と鮮明に塗り分け出来ます。普通の塗装用マスキングテープできちんと塗り分けられますし、アルファベットや単純なロゴ程度ならステンシル風の仕上げも可能だと思います(あまり細かなイラストを入れるのはさすがに滲むので塗料原液とエアブラシでも使わないと無理ですが)。サドル表皮にラインを入れるとかパネル単位で染め変える程度の単純な塗装ならエアゾールで十分です。ただこのエアゾール、ちょっと癖があります。通常の塗料スプレーと比べ染料に対する溶剤の量が相当多く、特にシルバーで顕著だったのですが、最初は攪拌が足りなかったのか!?と思ってしまうくらいでした。ですがそれで常態のようで、吹いてすぐは染料が全然出ていないように見えてしまうようです。少し待っていると溶剤が飛び染料本来の色合いが徐々に出てきますので厚塗りしたくなるのをグッとガマンしましょう。一度に厚塗りしてしまうと滲みやタレを起こしやすくなります。
それと70ml缶の内訳ですが、おそらく2/3近くを溶剤とガスが占めており染料はごく僅かです。缶の注意書きにも塗装可能面積0.2~0.4㎡と書かれているのですが、本当にあっという間に吹ききってしまいます。サドル丸ごと塗る場合70ml缶1本ではまず足りないのでご注意を。
まとめると、専用クリーナーでしっかり脱脂しておけば手軽に染め直しができる、面白い商品だと思いました。エアゾール缶もちょっとした癖さえ抑えておけば特に扱いにくい部分もなく、仕上がりの品質にも満足できると思います。カラーバリエーションが多く、大きな缶だけでなく小さな缶もあるので複数の色を揃えやすいのも○。工夫を凝らしながら、自分だけのカスタムレザークラフトを作っている気分が味わえます。今回は使いませんでしたが、エスプレッソブラウンはなかなか味のある深い色が出ます。下地に明るめのブラウンを入れ、エスプレッソを塗った上からサンドペーパーやバフなどで擦れさせクリアーでつや出ししてバーニッシュ仕上げ、なんていうのも出来るかも?
欠点といえば、普通の塗料と比べると少し割高な点でしょうか。とは言えホームセンターなどで簡単に手に入る、革にも使える塗料の中に染めQに対抗できる程バリエーションがあるものなどありませんし、プロに依頼して表皮張り替えをしてもらうよりははるかに安く気軽ですし・・・できれば、染料原液と溶剤を(単価・流通的に)もう少し買いやすくしてくれると、エアブラシやスプレーガンを持っている人はコストを下げられて有り難いです。
価格評価→★★★☆☆(もっと単価を下げられると嬉しい)
評 価→★★★★★(仕上がりには満足、作業自体も楽しめます)