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サドル沼、ライト沼、軽量沼、シューズ沼、チタン沼(!?)……自転車関係には「沼」がたくさんある。要は、「これ!」いうものが見つからず、色んなものを取っ替え引っ替え使っている状態のことだ。
私は最近、世にも珍しい「泥除け沼」にハマった。
■発端
事のキッカケは「TOT」である。TOT=Tokyo-Osaka-Tokyo―――今年走った、東京と大阪を往復するイベントの名前だ。TOTの走行距離は1100km。走行時間はどんなに短く見積もっても3日掛かる。
経験上、3日連続で「雨に降られない」ことは有り得ない。どこかで必ず雨に降られる。
雨のロングライドで一番厄介なのは「レーパンのパッドが濡れる」ことである。レーパンのパッドが濡れると、繊維が毛羽立ち、股ズレの大きな原因となるからだ。これを防ぎたく、泥除けの導入を決意したのであるが……良いものが見つからない。
ブルベを走る人であれば、既に「マイベスト泥除け」を見つけている人も多いはず。ブルベはどんな天候でも開催される。自転車の装備は自然と全天候型になる。その中で必然、泥除けの選択も行うわけだ。
ただ、自分はブルベにはほとんど出ない。ロングライドを設定するのは「雨が降らない」と解った日だけ。つまり、これまで私の自転車には泥除けは不要だったのである。しかし、今回のTOTでは泥除け必須。1000km走っても問題の起こらない泥除けを探し出さなければならない。
かくして、泥除け探しの旅が始まった。
■要件
先に述べたように、「1000km走っても問題の起こらない」泥除けが必要だ。そのための要件を少しブレイクダウンしてみる。
1. フレームに取り付けられること
→私の乗るRoubaixはフォーク、ステーが特殊形状(ゼルツ入り)。付かない泥除けも多い。
2. 後輪の水の跳ね上げを防いでくれること
→これも必須。付けても尻が濡れるような泥除けは不要だ。
3. 軽いこと
→長く走るなら軽い方がストレスが少ない。
4. ズレないこと
→振動でずれてしまう泥除けも多い。ズレたら用を成さない。
輪行が前提ならば、これに加えて「取り外しが容易なこと」が挙げられるのだが、今回は往復コースであり輪行はしない想定。上記の4つの観点で泥除けを比較してみることにした。
■候補
今回、候補に挙がったのは以下の6製品。
①あさひ ハネンダー
②Acor イノベーティブリアフェンダー(リアのみ)
③Flinger SW-670FR
④SKS RaceBlade
⑤Crud RoadRacer mk2
⑥Zefal CROOZER ROAD(フロントのみ)
結論から言えば、この中で実際に本番で使用したのは以下の製品だった。
フロント: Zefal CROOZER ROAD
リア: Flinger SW-670FR
■比較
本レビューではリアについての比較結果のみ述べる。フロントの比較結果は、そのうちZefalのCROOZER ROADのレビューで書くこととしたい。
結果だけ見れば、②を選ぶべきである。事実、本番では②を使用するつもりだった。
しかし、実際に使ったのは③であった。理由は単純、本番前に②が壊れてしまったから。角度調整のためにネジを締めこんだら、いとも簡単に泥除け部分にヒビが入ってしまい……。確かに②は良かった。軽量だし、実は性能に関しても悪くない。ただ、耐久性は良くなかった。その点、③はブルベ専門誌「ランドヌール」における、ブルベ参加者たちの使用率も高い。恐らく、耐久性には問題は無いであろうことが想像できる。

こうして、③を採用して、1100kmの旅路に臨むこととなった。
■レポート
TOTのスタート地点である東京・日本橋に行って驚いた。
……泥除け付けてるの自分だけだ……
それもそのはず、TOTが行われる三日間は、東海道全域晴れ予報であった。こんなことは滅多に無い。喜ばしいことだが、何か損をした感じもした。レインジャケットと、レインパンツを持参しているのも自分だけ。皆、驚くほど軽装である。こちらなんて、サドルバッグやトップチューブバッグも全て防水仕様にしてきた上に、アイウェアのレンズには撥水スプレーを吹いてきたと言うのに……。
しかし、スタートから400km。予報に反して雨が降り出す。四日市より西は雨雲に覆われ、3時間ほど雨が降り続いた。10月の夜、雨具も無しに走り続けては体が冷えてしまう。結局、他の参加者は全員、雨宿りを余儀なくされることとなった。
そんな中一人「時は来た!」と妙にテンションの上がる私。雨の中を走り続ける。慣れない土地での雨の中のナイトランは初めてだが、全く問題は無かった。一番の懸念であった「レーパンのパッドの濡れ」は、レインパンツとSW-670でガード。しっかりと役割を果たしてくれた。
結局、ゴールに至るまで雨が降ったのは、この3時間のみであったが、重量も軽いSW670はロングライドでストレスになることも無かった。ちなみにカタログ重量は250gだが、実測では168g。なぜ上にサバ読んでるのか分からない。
一見、柔らかそうなのでタイヤと接触しそうだが、絶妙な硬さでタイヤとは接触しない。跳ね上げについても尻・頭の方向は完全にシャットアウトしてくれる。ズレることもほとんどないし、絶妙な柔軟性で壊れない。
SW-670を選択したのは正解だった。
■総評
地味なパーツである泥除け。実は奥が深い。晴れれば必要ないが強い雨が降れば、走り続けるのに必須。何時間も走り続けるロングライドにおいて、これは大事な意味を持つ。
なお、今回の要件としては無視した「取り外しが容易なこと」であるが、これについてもSW-670は優秀である。ワンタッチで外れる機構になっているため、輪行時は外して袋に放り投げておけばいい。柔軟性があるので、壊れることはないはず。
唯一の弱点は、「太いタイヤが付けられない」ことだろう。この泥除け、取り付けのための金具がブレーキアーチの下を通る。23Cタイヤなら問題ないが、25Cタイヤの場合はタイヤと金具が接触してしまう。太いタイヤを使うロングライダーは要注意だ。
価格評価→★★★★★(SKSやAcorに比べると激安)
評 価→★★★★☆(太いタイヤが付かない・・・)
<オプション>
年 式→2011
カタログ重量→ 250g(実測重量 168g)