購入価格 1ユーロ(1日)
2007年7月15日からサービスインした「ヴェリブ」。今回、休暇で数年ぶりに滞仏したのでさっそく試してみることにした。
ヴェリブはパリ市が公害対策・エコ運動の一環として立ち上げたシステム。ディーゼル車が大部分のパリは空気の質が非常に悪く(私も今回喉をやられてしまい、挙句に風邪をひいた)、大気汚染は深刻な問題となっています。このヴェリブはクルマに変わるエコな移動の足として注目されているわけです。ちなみに velibとは velo (自転車)+lible(自由な)を組み合わせた造語。なかなかチャーミングなネーミングですね。日本語風に訳すと「気ママチャリ」みたいな感じ?
ヴェリブの基本ルールは、30分以内に次のヴェリブステーションで自転車を解放すること。解放すればすぐに次のヴェリブを借りても良い。30分以内であれば追加料金なしに何度でもヴェリブのレンタルが可能。30分というと短い気もするが、ステーションはかなりの数があるので大丈夫。
パリ市内を歩いていると、こんな感じのヴェリブステーションに遭遇します。写真は Place d'Italie(イタリア広場)付近。
さて、自転車マニア・レビュー俳人(廃人?)としてはパーツをチェックしないわけにも行きません! 気になるヴェリブのスペックは?
まず前面から。なんか宇宙人みたいです。かわいいですよね。
フロントはハブダイナモ。乗車すると前後輪同時にライトが点灯する仕組みです(昼でも)。点灯しないものは故障しているので取らないようにしましょう。タイヤはシュワルベのマラソンが搭載されています。これは興味深いところ。パリは勿論パヴェ(石畳)区間が多いので、厳しい環境を生き抜くタイヤとして評価されたのだと思います。
サドルはバネ付き。
後輪部分。大きな泥よけとディレイラーガードが印象的。
変速はシマノのNEXUS。グリップシフトの三段変速です。こういう選定を誰がどのようなプロセスで行ったのか興味深いですね。シマノもシュワルベも儲かったんじゃないかな? ちなみにヴェリブの運用には税金は使われておらず、JCDecaux(ジーセーデゥコー)という広告代理店が、パリ市内での広告板設置権と引き換えに運用経費を負担して実現したそうです。すごいですね。日本も電通とか博報堂とかやってくれないでしょうか。
ハンドル回りには注意事項等が書かれています。
左の写真は盗難防止ロックとサドル調節の説明。
中央の写真は「出発前に前後ライトを確認してください」と「返却時にはロックを確認し、ピーとなるまで待ってください」というメッセージ。トラブル時のホットラインの番号もあります。
右の写真は「歩道を走りません、信号無視をしません、他人を乗せません、逆送しません」というメッセージ(逆走可能区間は除く)。
では早速レンタルしてみましょう。ステーションの付近に、以下のようなマシンがあります。Borne(ボルヌ)と呼ばれます。フランス語・英語・スペイン語・ドイツ語・イタリア語に対応。場所によっては日本語対応のボルヌもあるとのことです。なお観光客の我々の場合、ICチップ付きのクレジットカードが必須です。カードの表にゴールドの正方形のチップがあるやつです。Visa, Master, Amex, JCBが使用可能。操作はタッチパネルではなく、下のボタンで行います。Aは Annuler (キャンセル)の意、VはValider (有効化、決定)の意。大きな流れとして、「ユーザー登録」と「レンタル手続き」の2つがあります。「ユーザー登録」は勿論最初の一回だけでOK。
全部の画面は撮影できなかったので雰囲気だけご紹介。
基本的な流れとして、まず一年契約にするか、一週間契約にするか、1日コースにするかを選択します。1日コース(24時間コース)の場合1ユーロ。1週間コースの場合は5ユーロ。旅行者の場合は1日コースで問題なし。コース選択後、支払いをし、4桁の暗証番号を設定し、登録者番号をゲットします。暗証番号は忘れないように!
さて、ユーザー登録が済んだらレンタル申し込みをします。画面の案内に従えば迷いません。あらかじめ、レンタルしたい車両の目星をつけておきましょう(番号を覚えておくこと)。中にはサドルが壊れていたりするものもあります。画面上で、レンタル可能なヴェリブの番号が表示されているので、借りたいヴェリブの番号を入力します。その後、すぐ指定の自転車のところに行きましょう。以下の写真で緑色に光っているLEDが、赤色になっているはずです。60秒以内に自転車を手前に引き抜きます。するとレンタル開始です。なお、NAVIGOというカード(かつてカルト・オランジュと呼ばれていた地下鉄・バスの定期券)所有者はもっと簡単に手続きできます。
さて、ボルヌ上部の地図で次の目的地を確認します。紫の小さい記号がステーションです。というか、特に確認しなくとも大体見つかります。パリは小さい街なので問題なし。写真にあるような自転車ゾーンを追っていくと良いでしょう。
ムフタール市場近くで停車中のヴェリブを発見。あと写真にはありませんが乗っている人は結構いました。
こんな感じでステーションがあちこちにあります。
さて、返却です。自転車側面にあるでっぱりをここにガチャンとはめこむわけですね。少し戸惑いますが、落ち着いてやれば大丈夫。はめこんだあと、LEDが緑色になるまで待ちましょう。
きちんと返却できたかどうかを確認することもできます。心配な方はトライしてみましょう。ボルヌに行き、登録者番号と暗証番号を入力します。写真右には「返却は間違いなく記録されました」というメッセージが出ています。1番を押すとレシートの印刷。2番を選択するとその他の操作へ(また借りる場合など)。
ちなみにレシートを持っている手は今話題の「日本手袋工業組合 超極細せんい245本の新感覚手袋」を着用しています。あったかくて、いいものですねぇ! このレシートを見ると、20分間走行したことがわかりますね。
<<総評>>
さて、自転車の外観やレンタルの仕方などをざっと写真つきで説明してみましたが、評価はというと・・・価格的には文句なく★★★★★。1日1ユーロは旅行者にとって破格でしょう。30分ルールの制限があるので、乗りっぱなしというわけにはいきませんが、かなりの数のステーションがあるので遠くに行く場合も乗り継いでいけます。パリは小さい街なので、左岸の端っこ、たとえばイタリア広場から右岸のクリシー広場まで移動する場合でも2回くらいの乗り換えで行けてしまうような気がします。観光名所巡りなどには大変便利。しかし、これはあくまで移動に話を絞った場合の評価。30分という時間は、のんびりポタリングしているとあっというまにすぎてしまいます(歩道通行不可なのでポタリング自体難しいですが)。それでもまあ、十分楽しめます。また、よくこれだけの数のステーションを設置したなあ、と感心するほどあちこちにヴェリブ・ステーションがあります。この思想そのものも★★★★★。
そしてヴェリブ本体の乗り心地は? ううむ、こちらは残念ながら★★☆☆☆。ものすごく重いです。一説によると22kgとか。日本のママチャリ・軽快車より断然重い。ハンドリングもちょっとモタモタ。耐久性重視の設計でしょうから仕方ないところではあるのでしょう。ギア比的には、シマノNEXUSの三段ギアがちょうどよくフィットしている感じ。今後の進化に期待したいところです(数年間は変わらないだろうけど・・・)
今年パリに行かれる方、よかったらお試しください。移動の足としては悪くないと思いますよ。
価格評価→★★★★★ 安い!
評 価→★★★☆☆