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特集「自転車ドーピング史」
単なる二次資料の寄せ集めかと思ったら、選手へのインタヴューを行ったというくだりが出てくる。で記事の署名は「text●naco」である。nacoって誰だ?Mas Ciclismoのnaco氏だろうか?フランス人やイタリア人のドーピングに対する態度が少し垣間見えるような記事だがやや突っ込み不足。某氏がどこかで指摘したように、ドーピング問題に関してはjournalist Kikuchiによる大胆な取材の果ての長編ルポルタージュを読んでみたいものだ。
「セイコログ」
アスリート橋本聖子も今では外務副大臣の要職にある。そしてこのコラム「セイコログ」。危惧していた通り、当たり障りのない文章の羅列と、国会議員・橋本聖子のPRページになり果てている。この際、橋本外務副大臣にはこのページからの即時撤退を勧告しておく。国会議員にページを任せるに際して、編集長の岩田氏が何の緊張感も持ち合わせなかったことにも、非常な違和感をおぼえるが。
「最高級ロードバイク試乗 PART2」
CS誌の1月号と2月号の「最高級ロードバイク試乗」を見ると、マスプロメーカーがどういう見栄えのロードバイクを販売しているか、よくわかる。こんな風に網羅的に紹介してくれると、便利だし、重宝する特集である。
他にも読者が投稿でロードバイクの無法ぶりを糾弾していたり、タクリーノ氏の相変わらず面白い連載など、全体として結構楽しめた。
価格評価→★★★☆☆
評 価→★★★☆☆
さて、旧知で、自転車好きの流通業界誌ライターであるKick智君と、ロード大好き中年の家具職人であるOh伊師さんに、この試乗特集や、最高級ロードをどんな風に感じているのかと思い、放談してもらった。
* * * * *
Kick智 最高級ロードを見れば各社が何を考えているのかわかりますね。
Oh伊師 そう?プロフェッショナル・ユースでもある100万円前後の価格帯で馬鹿げたことはできないから、ハズレはないだろうけど、本当に何を考えているのかは、推し量りがたいよ。相変わらず、理解し難いマシンも存在するし。
Kick智 そうですか? ところで最高級バイク。日本では面白いほど売れているみたいですね。
Oh伊師 確かに、欧州へ行っても東京で見るような高額マシンなんて滅多に見ないっていうからね。フェラーリ見るならミラノよりも六本木だし。でも、最高級バイクが売れていたのも去年までの話でしょ?
Kick智 まあ恐らくは。
Oh伊師 思うに昨年までは自転車バブルが膨らんでいたんだよ。夏辺りまではね。エコブームとか、健康志向とかいろんな追い風があって、トレンドに敏感な業界筋の連中も続々参入したよね。そんな空気も手伝って、自転車に乗ってみようかな?っていう人がいきなり高級バイクに手を出そうとしたりするから、まあ恐れ入るよ。
Kick智 欧米などから面白いブランドがどんどん入っていますしね。昔なら50万円以上する自転車なんて、そもそもほとんどなかったと思うんですけど、その辺の価格帯も結構売れていますから。でも、これは所詮トレンド。しかもバブル状態の中でのトレンドです。更に言えば、ファッション以前のファッドじゃないですか?
Oh伊師 ファッドねえ。オレなんか、自転車に50万も100万も出すってどういうことか?って実は思ってたよ。仕事で使ってる軽トラだって、もう10年も買い替えてないからね。自転車が好きでたまらない、コルナゴの最上位機種の中から、自分の身体にどんぴしゃのヤツをオーダーするのがずっと夢だったんだ、っていうようなユーザなら、そりゃ納得だよ。だけどそうでもないだろ?
Kick智 いきなり高級車、ですね。バブルですから勢いが大事。思い入れは二の次です。でもそれは昨年までの話。今年からは地に足の着いた選択ができるように、雑誌も色々くふうしてほしいものですよね。
Oh伊師 話がサイスポから全然離れていると思ったらここで戻ってきたか。離れっぱなしでもいいけど。まあ、いずれにしても何言ってるかサッパリわからん変なインプレ発言してたらオレは許さんけどな。
Kick智 雑誌はさておき、まずはDeRosa行きますか。Neo Primatoは相変わらずですね。
Oh伊師 いきなりスチールかよ。それにしてもNeo Primato。基本的には何も変わっていないね。
Kick智 フレーム価格が27万円ですよ。スチールでこれは高くないですか?
Oh伊師 高いね。プリマートは随分昔だけど15万円位だったような気がするよね。カーボン全盛の今の時代、逆にスチールの名品ってことで箔が付いちゃって、ここは一丁、値段を吊り上げてみましたって所なのかねぇ?こういう良品が手ごろな価格で買えてこそ意味があると思うんだけど、この値段じゃなあ。横尾双輪館でスペシャルチューンしたNeo Primatoがどうしても買いたい!というコアなファンは別扱いだけど。
Kick智 それにしてもこれ、シートチューブサイズが10mm刻みで14サイズも揃っていますよ。
Oh伊師 さすがだよ。でもデローザは他のもそうだろ?問題はフォークだよ。derosanews.comでフレームのジオメトリを調べると、フォークのオフセットが載っていないんだけど、Neo Primatoは各サイズごとにオフセットをちゃんと調整しているはずだよ。ヘッドアングルもね。一方、カーボンフォークのマシンではいちいち作り分けるなんてしないんだよね。誰かもそんなこと言ってたな。
Kick智 つまり最新鋭のカーボンマシンのステアリング特性なんて、出たなりってことですか。
Oh伊師 今頃気付いたふりするなよ。最高級ロードだろうが安物だろうが、ユーザーが順応しなければいけないんだ。面白くない話だけどね。でも、ユーザは、「順応せよ」と宣告されていることに気付いていないのさ。雑誌のインプレも、そんなわかりやすいことに何故か触れないしね。ところが、どうでもいいことはネチネチ細かくインプレするんだ。まあ、いずれにしてもKick智は身長あるからいいんだよ。そのまんまのサイズで買って乗れば、大体ちゃんとしたステアリング特性になっちゃってるんだから。うらやましいよ。
Kick智 実際には、カーボンフォークのオフセットが全部同じでどうにもならないところを、サイズごとにヘッドアングルをあまり変えないっていう荒業でかろうじて切り抜けているんですよね、各社。
Oh伊師 ん?だからサイズが変わってもステアリング特性が変わらないとでもいうのかよ?他の部分にしわ寄せが来てるんだよ。小さいサイズは無理してるんだ。一種類しかないカーボンフォークのおかげで。
Kick智 わかってますよ、師匠。
Oh伊師 師匠って言ったら、森師匠ただ一人だろ。
Kick智 あっ、そうでした。とにかく本末転倒ってヤツですね。ヘッドアングルに合わせたフォークオフセットの調整でトレイルをいいところに持って行くとか、そういうのが重要なのに。これをやめたらNeo Primatoの存在価値はない。
Oh伊師 全くだね。新素材が勢力を拡大してきた頃、ウーゴ・デローザは「素材としてスチールが一番いいっていうのは、変わらないさ」ってどこかのインタビューで答えてたけど、意外と今でもそう思ってるかもね。
Kick智 経営の実権を息子たちに譲り、新素材への取り組みを加速して、デローザも見事復活しましたけど、Neo Primatoはデローザの良心みたいなものですかね。
Oh伊師 そうかも。Neo Primatoって文字もいい。でもバブルも終わったようだし、27万円は高いなあ。オレは国産のハンドメイドで1mm単位で作るよ。
Oh伊師 次はジャイアント。TCR ADVANCED SL 0。相変わらず3サイズしかないね。
kick智 カーボンマシンの総本山。欧州メーカーからの巡礼が引きも切らない。そんなジャイアントのフラグシップですが、3サイズから選ぶほかない、って言うのは入門車と同じですね。欧州じゃ5サイズで展開してるのに。
Oh伊師 3サイズで勝負なんて、30年前の国産量産ロードだ。ジャイアントほどの量産効果が得られるメーカーがこれじゃ、何をか言わんや、だね。コンパクト・ロードと銘打ってスローピング化への雪崩を起こさせた張本人だけど、この3サイズは、スローピングの上に胡坐をかいているって感じだね。
kick池 と言うと?
Oh伊師 スローピング・フレームは何もジャイアントの専売特許じゃない。700C規格でホリゾンタルにすると、どうしても小柄な人の場合、ヘッドチューブが短くなりすぎてうまくデザインできないんだ。サイズで言えば470mm以下辺りのことだけどね。でもスローピングにすれば制約が緩くなる。町工場のレベルとかケルビムなんて、スモールライダーのために30年以上前からやっていたことだよ。で、スローピングにするとシートピラーをたくさん出せるし、そうなると多少のサイズ違いでもそれなりの見た目のバランスが得られてしまうんだ。でも、当たり前だけど、それは見た目であって実質ではない。
kick智 なるほど。それに本家(?)のレベルやケルビムなら3サイズなんてケチなこと言わないですしね。80年代に一世を風靡して一度傾いたアルファキュービックの婦人服なんかは当時、9号の1サイズのみで展開していて、「9号しか作らないのがポリシーです」みたいなこと言ってましたけど、そんな居丈高な匂いすらしますね。アルキューはシャネル辺りを意識してたんですかね?いくら高級でも身体に合わなきゃ意味ないのに。まあ、今じゃジャスコにも入ってますが。
Oh伊師 へぇ~そうなの?益子直美にはムリってことか。
Kick智 そんなに彼女に自転車に乗ってもらいたいんですか?
Oh伊師 まあ、世界最大の自転車メーカー、ジャイアントだ。せめて6サイズ位は揃えてほしいものだね。自分にピッタリじゃないものに何十万も払うなんて、オレには到底、耐えられないし、タダでも乗りたくない。そんなものに乗るくらいなら、SORAで組んだピッタリの廉価ロードの方がいいよ。でもジャイアント。パイプが変な風に湾曲していなくて素直なデザインが好きだけど。
Kick智 なんだ、隠れファンですか。
Kick智 次はピナレロのDOGMA FPXですよ。
Oh伊師 また言っちゃうよ。何だろうねぇ、くねくねフォーク。意匠的な意味以外、まったく無意味だね。でもこういうのを性能的な側面から、ついうっかり褒めちゃうインプレ・ライダーやインプレ・ライターがいるんだよな。こんな造形でエンジニアリング的にいいことなんて何もないのにね。
Kick智 でも、まあ気持ちが重要ってことじゃないですか?こういう魅力的な造形がある。あらゆる形容詞を駆使して効能を表現するライダーやライターがいる。それを信じる人がいる。そして需要が発生する。雑誌で褒めていたからイイものに違いない。高速域での伸びが違うに違いない。なるほど速い。確かに違う。オレは速い!って言う思い込みの好循環。
Oh伊師 ・・・。ま、そういうのも大事かもね。
Kick智 次はスペシャのS-Works Roubaix SL2。名前がRoubaixですよ。
Oh伊師 腕がジンジン来ちゃうね。
Kick智 Oh伊師さんが突っ込み入れたくなるような変な物がフレームにくっついてますよ。ゼルツって言うエラストマーが装着されていて、こいつが振動減衰に寄与するってことになってますね。振動減衰特性がいくら良くても私はあんな石畳を走りたくはないですけど。
Oh伊師 オレも。で、ゼルツ。路面からの細かい振動がガガーッとタイヤから入力されて、例えばシートステーを伝わってケツや手や足の裏に来るのを緩和するってことだよね。こういうデバイスを本気で装着しているんだったら、それなりのデザインになっていなきゃいけない。
Kick智 そりゃそうだ。
Oh伊師 フレームっていう構造部材が振動するとき、振動が大きいところと、あまり振動しないところが現れる。共振していたならなおさら。シートステーという一本の部材の両端は固定されているけど、もし、シートステーの剛性が無限大でカッチカチだったら、ハブ軸に近い側のパイプ方向の振動が上側の端っこにもそのまま来る。
Kick智 くやしいです。
Oh伊師 違うよ。Roubaix SL2のシートステーはゼルツの位置で曲がってるよね。ここは多分、意識的に振動させている部位ってことなのかな?振動するところにダンパが並列で入るから振動エネルギーを熱散逸させて減衰させることができる。
Kick智 ってことはゼルツは本気の振動減衰デバイスとしてまじめにインストールされている、って言いたいんですか?
Oh伊師 単なる推測に過ぎないけど、とりあえずオレはそんな気がするね。ま、気がするだけで、本当に効いているのかどうかはわからないけど。いずれにしてもオレはこのバイク、嫌いじゃないよ。
Kick智 効いているのかどうかわからない、ですか。ま、そうですけど、私は効いていると思いますよ。でも、同じく思うだけ。なるべく正確な理論的背景も知りたいですけどね。こういうのを有難がってやみくもに「効果がある」なんて言い切る勇気はさすがにないです。プレス向けにはそういう資料も用意してほしいですよ。ゼルツ有り無しでの違いを示すようなテクニカルな資料。
Oh伊師 いつから自転車業界ライターになったんだい?ま、そうだよな。こういうデバイスの効果は、データで確認したい。装着した場合としない場合。どう違うんだ?シートポストをパカッと2分割して、中間にフォースゲージを挟んでサドル側に伝達してくる力を測ったらどうかな?それで荒れた路面を走ってデータを取れば面白いだろ。
Kick智 そりゃいいですね。小型の計測装置をバックパックに入れて。あとで周波数軸上で解析して、ゼルツ装着の有無でどんな違いが出てくるのか見てみる。
Oh伊師 そして、その計測の差と、体感の違いを比較するんだ。測定がこれで十分とは言わないけど。
Kick智 面白そう。そういえば以前サイスポに、フレームの至る所に歪ゲージ貼り付けて、データレコーダを担いで走って、フレームの撓みを測ってる人が紹介されてましたよね。あのノリですかね。
Oh伊師 あれは気合入ってたな。たまにはそのくらいやらないと、手を替え品を替えレトリックを駆使してインプレってるだけじゃ、虚しいだろ。
Kick智 インプレ・ライダーの実力が試されちゃいますね。調子に乗ってブラインドテストなんかやっちゃったりして。恐っ。
Oh伊師 インプレ・ライターの実力もだよ。下手なこと言えないってことさ。でも、すごく面白いと思うよ。
Kick智 こういうのを自転車雑誌に望み得ますかねぇ?フォースゲージを挟んだシートピラー、さっそく町内の工場に頼んで造ってもらって、自分たちでやってみましょうか!?シートピラーはアルミ系の無垢材から削り出しかな?
Oh伊師 木じゃ無理だわな。
※ この阿呆談、もちろんフィクションです。