購入価格: ¥13,000くらい (税込)
標準価格: ¥16,470 (税込) ※2016年7月現在
『こぎやすさと快適性を高いレベルで両立したサドル』
■ ロードバイクでARIONEを試してみた
ロード用の定番サドル「fi’zi:k ARIONE」は、私が初めて買ったサドルだ。サドルの良し悪しはわからないので、質感の高さやデザインで選んだ。最初はクロスバイクのGIANT SEEK R3に取り付けていたが、後にシングルスピードのGIANT FIXER Rに付け替えて現在に至る。
昨年、私はGIANT DEFY1 DISCというロードバイクを手に入れた。この自転車には同じくfi’zi:kのARIANTE R3を取り付けており、快適な走行を楽しんでいるが、好奇心からFIXERに付けているARIONEも試したくなった。DEFY1 DISCに取り付けて走ってみたところ、ARIONEのよさを再認識。あらためてARIONEのレビューを書きたい衝動に駆られた。
GIANT DEFY1 DISCに取り付けたARIONE
■ ポジションの出しやすさ
さて、フラットな座面のARIONEは、比較的ポジションの調整が楽だ。実際、ALIANTE R3からARIONEにサドルを付け替えたところ、多少の微調整を覚悟していたが、こぎやすくて快適なポジションを一発で出すことができた。ある程度自分のサドルのポジションを把握しているなら、ARIONEのポジション出しにそれほど苦労はしないと思う。
一方、ALIANTE R3のような座面がS字のサドルは、尻の収まりがよい部分を探すのが難しい。角度や前後位置がわずかにズレるだけでも、坐骨が痛くなったり尿道に圧迫感が生じたりしやすく、個人的にはポジションの調整がシビアだと感じている。
フラットな形状のARIONEは、サドルの前後位置が少々ずれても、坐骨や尿道への圧迫感が生じにくい。加えて、サドル先端をやや前下がりにしておけば、尿道のしびれを回避しやすくなる。尻を前後に動かしやすいことも考慮すると、ARIONEはポジションの調整がそこそこでも、それほど違和感もなく乗れてしまうサドルだと思う。
ARIONEをやや前下がりでセッティング
■ 自転車との見た目の相性
ARIONEはロード用のサドルではあるが、実際にDEFY1 DISCに取り付けてみると、あまり似合っていないと感じた。DEFY1 DISCはいわゆるエンデュランス系のロードバイクで、ARIONEのようなシャープな形状のサドルよりも、前後に短いか厚みがあるサドルの方が見た目の相性がいいと思う。
ARIONEはピストバイク(シングルスピード)の定番サドルでもあり、FIXER Rにもマッチする。一方、クロスバイクのSEEK R3には、DEFY1 DISC以上に見た目に違和感がある。これはSEEKがMTB由来のゴツイ形状をしているからだ。これらのことからいえることは、ARIONEは細身もしくはシャープな形状のフレームの方が似合う傾向にあると感じている。
SEEKには前後に長いサドルは似合わなかった
■ ペダリングのしやすさ
ARIONEをDEFY1 DISCに取り付けると、ペダリングしやすいことにあらためて驚かされた。こぎやすさはサドルの細さだけでなく、サドルの両端のしなり(WING FLEX)が効果を発揮していると思う。全体的にサドルシェルのしなりが大きいサドルだが、腰や体軸がしっかりと安定して、ペダリングのロスが少ない。
ALIANTE R3の方が、サドルシェルのしなりを大きくして快適性を重視している分、ペダリングではARIONEの方が優るという印象。さらに、ARIONEはフラットな形状と表皮の滑りやすさのおかげで、スムーズに尻を前方に動かして加速しやすい。
サイドのしなりやすさは、指で押してみてもわかる
■ 乗り心地・快適性
シャープな外見のARIONEは硬そうなサドルに見えるが、全体的にパッドの量が多く、尻の荷重を分散しやすくなっている。同じfi’zi:kのサドルなら、パッドの量がTUNDRA2よりも多く、ALIANTE R3よりもずっと多い。サドルの高さや角度次第ではあるが、尿道や坐骨に対してサドルの硬さをダイレクトに感じにくい。
大きな特徴がサドルのしなりの大きさ。左右だけでなく、サドル中央から後方は体感できるほど上下によくしなる。このしなりは圧迫感を和らげ、地面の不快な振動を減衰してくれる。DEFY1 DISCに搭載された前後にしなる「D-FUSEシートポスト」との相性もよく、荒れた路面でも突き上げを感じにくく快適だった。ちなみに、ARIONEを装着したDEFY1 DISCで走ったのは50kmほどで、全く痛みは出ていない。
シングルスピードのFIXER Rは、主にジオメトリの関係で地面からの突き上げが大きく乗り心地が悪い自転車だが、100km程度のロングライドを何度か行うことができたのは、ARIONEの貢献がかなり大きい。サイクリングロードを100km走る際は、サドルから腰を下ろすことが少なくなるが、ARIONEなら尻を前後に動かして乗る位置を変えることで、尻の一点への圧迫を回避できる。FIXER Rで100kmを走って、尻にほとんど痛みが出なかったのは、ARIONEの快適性の証明にもなったと思う。
後部のしなりは、実際の走行でも体感しやすい
■ 個人的には一番乗りやすいサドル
クロスバイクの価格に対して、13,000円のサドルを買うのは正直ためらったが、これは本当にいい買い物だった。優れた質感と高いデザインは自転車のルックスに大きく貢献し、性能面ではこぎやすさと快適性を高いレベルで両立させている。表皮のマイクロテックスは汚れや破れに強く、数年使っていることを考えれば、思い切って買ったのは正解だった。
見た目の相性の問題でシングルスピード以外の自転車には取り付けていないが、個人的には一番乗りやすいサドル。エンデュランス系とはいえロードバイクで試すことで、ロード用の定番サドルであることはようやく理解できた。個人的にはオススメ。
価格評価→★★★★☆ (買う価値のある素晴らしいサドル)
評 価→★★★★★ (こぎやすくて快適。デザインも素晴らしい)
<オプション>
年 式→2012年(多分)
カタログ重量→ 230g