購入価格 ¥5000円くらいだったと・・・
馬鹿野郎!さっきから黙って聞いていれば 自転車専用品には理由があるとか、ホムセンで代用品を探すのが通だとか、エンジンオイルを流用するのが経済的とか、好き勝手ばかりを言いやがって・・・自転車における潤滑の本質は、そんなことじゃないんだよ!魂を込めて踏み倒せば、たとえそれが歯磨き粉でも潤渇するんだよ!自転車雑誌の広告に踊らされて、物事の本質が見極められないやつらがはびこってるようだな。 どうやらこの流れは、俺の体験談から潤滑の何たるかを伝えなければならないようだな・・・
あれは10年程前のことだ。俺は野球の全日本代表候補であったが、オフトレーニングのため導入したロードバイクにのめりこんでいた。
「今日走るコースは海沿いだから、FINISHLINEのクロカンルブかな。
いや、ワコーズのメンテルーブがいいか・・・おっと、その前にチェーン洗浄だ」
その日も俺は地元の海岸線で、強烈な向かい風と戦っていた。
ゴォォォォォォーーーー!!
玄海灘から吹き付ける強烈な潮風が、俺の体を押し戻そうとする。自転車乗りにとって向かい風は巨大な壁だ。「ふ・・・並の自転車乗りなら、ここでくじけるところだろうな・・・」
オリャァァーーーーー!
俺は体幹の筋肉を総動員し、下ハンを握りエアロポジションをとった。それとともに腰はサドルの上を30ミリほど後退し、よりクランクにトルクをかけるペダリングへと移行した。俺の強靭な広背筋はモリモリと音を立てて隆起し、後ろ姿でさえも不動の力強いオーラを放っている。太腿四頭筋がオランダの空にひらめく風車のごとく力強く回転し、風を掻き分け、前へ前へと自転車を押し出してゆく。
はるか前方に地元ショップの走行会の集団が現れた。みると、どいつもこいつも注油がなっちゃいない。「ブハハハハハ!、あいつのチェーン、油切れを起こしてきしんで音立ててるぜ!」
「こいつはプーリー真っ黒だぜ!ふき取りを怠るなんて初歩の初歩!しょぼすぎ!!ププッ」
こんなことでは脚力を効率よく駆動力に変えることは出来ない。俺の敵ではないな。
俺は完全に無音のままのチェーンで、あっという間にそいつらを抜き去った。
「な、なんという剛脚・・・さすが『九州のピストル野郎』とよばれるだけのことはある」
という驚嘆の言葉が後方から聞こえた。
「フハハハハハ!!!どうやらこの海岸線も制圧したな!
おっと、海岸線を走ったら防錆のためにチェーン洗浄と注油をしないと・・・」
おれはおもむろに愛車のRNC7を道端に停め、チェーン洗浄の準備を開始した。
自転車の下に新聞紙をしくのには意味がある。それは、製品裏に表示してあるこのマークである。
口を大きく開けて横たわるお魚が何ともショッキングである。この製品に限らず、ディグリーザの多くはそのままたれ流すと環境負荷が大きい。廃液は新聞紙に吸わせて、燃えるゴミとして出すのが正解である。また、この廃液は、あらゆるものに染み込んで、容易には落ちない。室内で洗浄を行う人は、廃液をたらすことがないよう注意が必要である。
デヤァァァァーーー
俺の持つFINISHLINEのチェーンクリーナーがうなりをあげ、
チェーンにこびりついたガンコな油汚れを落としていく。
「ふっ・・・並の自転車乗りならここで満足するところだろうな・・・」
ウオォォォォーーーーーー
チェーンクリーナー本体からにごった色の液体が飛沫となって飛び散り、車輪の下の新聞紙に黒い染みとなって吸い込まれてゆく。クランクからは墨汁のように液体がしたたり落ち、チェーンのピンの間までもきれいに洗浄されたことを物語っている。ここまで完璧に洗浄せねば、完璧な潤滑は得られないのだ。
チェーンの水気をウェスでぬぐい、FINISHLINEのテフロンドライルブを1コマ1コマ注油してゆく。
最後のふき取り作業に入るところで、ひとりの自転車乗りが俺を抜いていった。
「ふっ。このあたりでまだ俺に勝負を挑むものがいるとはな。よし、ふき取りはあとまわしだ!」
るがぁぁぁあーーーーーーーーー!!!
走り出すや否やインナー・トップのダンシング8回でトップスピードに乗せると、シッティングに切り替えて猛追を開始した。「博多のバハモンテス」と怖れられる俺の猛追に耐えられる者などいない・・・はずだった。さいごの50メートルがどうしても詰められない。
「ばかな・・・俺より重いギアを踏んでいるというのか・・・」
ガチャーーーン!!!
俺は最後の手段に出た。フロントをアウターに上げたのである。
ギャアァァァーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!
その時、信じられないことが起こった。俺のトルクに耐え切れず、チェーンが切れてしまったのである。時速50km超からの落車。しかし俺はとっさに道端の草むらへとエスケープし、奇跡的に軽傷であった。
道端に投げ出され、呆然と俺は呟いた。「ばかな・・・俺のマシンのメンテはいつも完璧なはず・・・さっきのふき取り作業を怠ったのがいけなかったのか・・・」
「大丈夫ですか?」ふと気付くと頭上に人がいた。さっき俺をちぎっていった男だ。我に返った俺は、男に疑問をぶつけた。
「い、いったい君はどんなオイルを使っているんだい?そ、それと使っているディグリーザと、注油頻度も教えてもらえるとありがたい」
その瞬間である。俺を助け起こすために差し伸べられた右腕から太い血管が浮き出し、渾身の力を込め固く握り締めた拳が俺の顎に向かって放たれた。不意を突かれた俺はなすすべもなく吹き飛ばされ、「つまんでご卵」の看板にブチ当たって崩れ落ちた。
「馬鹿野郎!それだけの脚力がありながら何が注油だ!!ディグリーザだ!!!お前に足りないのはオイルではない!高率のよい走りでもない!!!『年間3万キロ走れば速くなる』という信念なんだよ!!!!」
朦朧とする意識の中、俺は亡きおじいちゃんの言葉を思い出していた。「つよし、『理屈上手の行い下手』じゃよ」そうだ。最近の俺はFINISHLINEだのワコーズだの、潤滑の効率を追い求めてばかりで実走距離が激減していた。雑誌の宣伝文句を真に受けて脳内妄想で満足している者と、ごたくは述べずとも年間3万キロの剛の者。勝負は走る前に決していたのだ・・・
自転車乗りとして強くなりたければ、四の五の言わずただ走る。それだけなのである。
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【追記】
ディグリーザ
これ、なかなか減りません。用法の欄に「20倍に薄めて・・・」とあるので、薄めて使うのがその理由。私は年に3回程度チェーン洗浄をする程度の頻度ですが、このボトルを購入して4年使い続けています。
洗浄器本体
私の記憶が正しければ・・・2、3回使ったあたりでチェーンの出入り口付近に配置してあるスポンジ(チェーンをこする&密封性を高める目的?)がディグリーザのためか劣化して割れ始めました。で、1年経過あたりで完全にボロボロになってしまったのでスポンジは廃棄しました。で、今に至る。
洗浄効率は若干落ちているのかもしれませんが、気になりません。普通に使えています。ただ、ディグリーザの樹脂への攻撃性に留意して、使用後は速やかに真水ですすいで、さかさまにして乾燥させるようにしたほうが、洗浄器全体が長持ちするでしょう。
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価格評価→★★★☆☆(高いなと感じる。あと、耐久性が・・・)
評 価→★★★★★(めっちゃ綺麗になります)
<オプション>
年 式→2005年
カタログ重量→ g(実測重量 g)
上の追記です。
誤解を招く表記をしてしまいました。
このセットに最初から付属しているディグリーザは、
エコテック2ディグリーザー(120ml)
です。
私はこれを使い切ったあと、
(エコテックディグリーザは希釈用ではないので、それなりにどんどんなくなります)
上記のバイオソルベントを購入した次第です。
また、このセットの付属品は
エコテック2ディグリーザー(120ml)
テフロンプラス・ドライルーブ(60ml)
です。