購入価格 ¥700円/L
『水汚れは水で洗え。油汚れは油で洗え。』
これは洗浄理論の基本中の基本の言葉だ。
パーツクリーナの洗浄力に満足できず、ディグリーザ使ったらアルマイトが剥げ、灯油や溶剤の残留が気になって神経をすり減らしていた私はこの言葉に救われた。
この教えに素直に従っていつも使ってるチェーンオイルでチェーンを掃除してみたらめっちゃ綺麗になった。油で洗うのめっちゃ効くやん。
でもチェーンオイルはランニングコストが高かったので添加剤無しのベースオイルでクリーニングしたいなと思いました。
チェーンオイルはモノによっては洗浄剤が添加されて洗浄力が高められていて、例えるなら石鹸水と水道水みたいなものなので付加価値はあるけど…って思惑はあったけど価格差2倍以上はザラなので今回はコストを優先…。
で、よくよく考えたらベースオイルって要は潤滑用の鉱物油ですよね。
ホームセンターで一番安いマシン油を買ってきました。
粘度が色々ありますが、使えそうなのはVG10~VG46の範囲内。
シャバシャバのVG10やVG22は漬け置きやボトルシェイク向けで、チェーン洗浄器との相性も良い。
少しトロみのあるVG32とVG46はウエスとオイラーを使った普段使いのチェーン掃除向けという印象。
それ以上の粘度ではネバネバして拭き取りにくいから使わない方がいいです。
でも、あくまでも私の印象なのでお好みで選んでもらって大丈夫です。
いきなり大きなボトルを買うのに抵抗のある方は100円ショップのミシン油や万能油でも同じことが出来るのでお試しスターターキット(?)としてどうぞ。(実験済みです)
【実際の作業の様子】
今回は日常メンテレベルの非分解のチェーン掃除を例にご説明します。
使っている道具は鉱物油が入ったオイラーとチェーンオイルとウエスだけです。
洗浄前の状態がこちらです。

河川敷のダートを含む110km(晴天)を走ったチェーンです。
何度かマシン油でクリーニングされた個体なのでそんなに汚くは無いですが距離相応の汚れは拾ってきた模様。
①まずはチェーンを含む駆動系の全パーツをウエスで乾拭き。

②垂れない程度にたっぷりとチェーンにマシン油を注油。

※片手でカメラ持ってるのでイメージ図とお考え下さい。
※普段はウエスを下に添えてます。
③クランクをゆっくり回転させてマシン油を馴染ませつつ、汚れを溶かしつつ、浮かせつつ、という作業をします。
ミッシングリンクを目印にチェーンを10周以上させるもしくはクランク20~25回転ぐらいでいいかと思います。
変速しながらクランクを回すとチェーンがウエスのように各部の汚れを集めてくれるので尚良いです。
オイルが馴染んで減ったような状態になった場合は途中で継ぎ足してもらってもOKです。むしろマシン油をケチらないのがコツ。
チェーン洗浄器にマシン油を入れたりブラシ等を併用するのもOKです。
揮発したりしないので心行くまでじっくり汚れを浮かせて下さい。
なお、ケイデンスは50rpm以下を目安にして下さい。飛び散ります。
もし床や壁やフレームやブレーキに飛び散ってもアルコールティッシュや石鹸水やパーツクリーナで簡単に取れますので落ち着いて除去してください。
④ウエスで駆動系に付いた汚れた油を拭き取ります。

チェーンはこの写真のように下から押し上げながらクランクを回すとコマが回って中から汚れが出てきます。私はレーンチェンジしながら拭けるだけ拭いて最後はウエスでチェーンを握って拭き上げるという順番でやってます。写真の黒い筋がレーンチェンジの痕跡です(笑)
スプロケはウエスをふわっと丸めてポンポンするだけでもそれなりに有効。もちろん歯の間にウエスを差し込んでもOKです。
チェーンリングやプーリーはウエスで挟んで拭き取ります。
拭き取りは最初の方はざっくりでも構いません。油が出てくる量が減ってきたらどんどん追加の油を塗ってまた馴染ませて拭く、という作業を繰り返す方が結果的に速く綺麗になります。
ある程度汚れが取れてきたら徐々に拭取りのしっかり度を上げていくと、汚れた油と綺麗な油の入れ替わりが促進されて最後の仕上がりがより綺麗になります。
⑤ 工程②~④を何回か繰り返します。
回数制限は無いので好きなだけやって頂いて構いませんが、私の経験上3回やれば大体仕上がります。
雨天走行後など汚れが固くなってる時でも4回で何とかなる印象です。

3回やった後のチェーンの写真がこちらです。
⑥駆動系の外観が綺麗になって、染み出てくるマシン油の黒色が薄くなって、チェーンを手で捻じってもジャリジャリ言わなくなったら(=コマの中の異物が無くなったら)仕上げの乾拭き。
ウエスで駆動系に付いたマシン油をしっかり拭き上げます。

しっかりと言っても乾拭きで出来る範囲で十分です。
※写真は使い回しですw
⑦いつものチェーンオイルをいつものように塗布します。
工程⑥のオイルが残ったままでも大丈夫です。どうせ主成分は一緒なので混ぜてヨシ。
チェーンオイルの塗布は添加剤を足すイメージで十分だと思います。
ちなみにですがチェーンオイルを塗布し忘れてもマシン油は本来潤滑油なので何の問題もありません。塗布し忘れたまま走りに行っても次のメンテナンスまで気付かないというかそれすら通り越して未来永劫気づかない可能性があります。大丈夫です数百km走ったぐらいじゃダメージなんて出ないから。
⑧工程③~④と同じ馴染ませ拭取り作業をもう一回やって作業完了。
という流れです。
全工程は慣れれば10分ほどです。
他の使い方として、前述のボトルシェイクの他その気になればパーツクリーナの代わりとしてどこにでも使えます。
例えば、ウエスにマシン油を染み込ませてパーツを拭くというのも有効です。普通に綺麗になります。
グリスが充填されたパーツのクリーニングにも有効で、マシン油をかけてから少し動かしてやる事でグリスを溶かして除去する事が出来ます。ベアリングの保持器のような複雑なパーツの奥に入り込んだ汚れたグリスも周囲のシール材に気を使うことなくじっくり溶かし出せます。
溶かした後は乾拭きしてそのまま新品のグリスを充填してOKです。主成分は同じ(以下略)
ただし、ブレーキ周りなどパーツクリーナでしかクリーニングできない箇所もあるので注意。
作業後は汚れと油が染み込んだウエスが残るのでそのまま燃えるゴミで捨てるだけ。
ある程度の量の廃油が出た場合でもウエスに染み込ませるか廃油パック(工業用でも食用油用でも可)に入れて燃えるゴミで廃棄すればOKです。
手に付いた油は普通の手洗い石鹸で洗えば1回で簡単に落ちます。
爪の間にも残りません。
【メリット】
洗浄力は灯油相当なので必要十分。
パーツクリーナが使えるところならブレーキ以外ならどこでも使える。
マシン油はゴムや樹脂を攻撃しないので残留しようがどこかに入り込もうが気にしなくて良い。
クリーニング後のマシン油の除去は乾拭きで十分。チェーンオイルやグリスと混ざっても主成分が同じなのだから何も起こりえない。
もし注油し忘れてもマシン油は潤滑剤なので何の問題もない。下手したら次のメンテまで気づかない。
スプレーじゃないのでミスト化せず吸い込まないので臭いも少ないし健康にもよろしい。
マシン油は防錆性分でもあるので水系洗剤みたいにメンテ中に錆が浮いてくるなんて事は絶対にありえないし長期保存にも対応している。
乾拭きで極薄の油膜を作っとけば塗装面のワックス代わりにもなるぞ。
【デメリット】
私としては特にないです。
考えうることとしてマシン油とチェーンオイルが混ざると添加剤の濃度や粘度が変わる懸念があるのですが、そこまで大きな差は感じないですし駆動系はパーツクリーナでクリーニングしてた時より滑らかになってるので気にしていないです。異物除去効果のほうが勝る印象です。
あとはワックス系やドライ系の潤滑剤との相性ですが私はウェット派ですので分かりかねます。
【経過観察】
マシン油洗浄を試し始めてすぐの頃は、走り始めて数kmでチェーンが黒くなる現象がまだありました。しかし、チェーン内部の硬い汚れが溶け出ると同時にチェーンがウエスのようにスプロケやチェーンリングの汚れを回収しているようにも見えました。その証拠に走行後に再びマシン油でクリーニングするとドバドバと汚れが出てきて気持ちいい(笑)
走行とメンテを繰り返すうちに徐々に汚れの量は減っていき、3回目ぐらいで汚れの量が安定しました。
安定後の走り始めはスムーズを通り越してヌルヌル状態。
例えるなら正にブリヂストンサイクルのアルベルトの踏み心地。
シマノ105はいつからベルト駆動になったのだろう。
いやいや、ふざけてませんよ大真面目です。
路面から砂やホコリを巻き上げない限りはいつまでもチェーンは黒くならなず、走り始めの感触の持続時間が大幅に伸びた。
変速スピードはあまり変化を感じませんでしたが、シマノの異物混入に対する設計が優秀すぎて元々スムーズだったので差が出なかっただけかと。
最終的にロード2台とグラベル1台に順番にマシン油メンテを施工したのですが経過は同じでした。
このように良い事や新たな発見が沢山ありました。
【何が起こったのか】
メンテ後の自分の手を見ていてハッとしました。
パーツクリーナ使った後って手が黒くなりますよね。
洗っても落ちないやつ。
チェーンオイル(鉱物油)に溶けた汚れがパーツクリーナ溶液に変わって蒸発すると落ちにくくなる。
それがパーツクリーナでクリーニングした後のチェーンのコマの中。
マシン油でチェーンをクリーニングしてる最中は手が黒くなりません。むしろ綺麗になっていきます。(各写真に写ってる私の手をご参照ください)
マシン油には揮発性は殆どなく拡散性があるためこうなります。
チェーンオイル(鉱物油)に溶けた汚れを鉱物油で洗い流す。
泥水に水道水をかけるのと同じ。
これがマシン油でクリーニングするということです。
なお灯油でも同じ事が出来るんですが別の物質ですからね…。
【ランニングコスト】
チェーンメンテナンス時のマシン油の消費量を量ってみたところ大体15~20ccぐらいでした。

このちっさいオイラーで2.5~3回ぐらいクリーニングできます。
20ccずつ消費したとして1リットルボトルが50回走行分に相当します。
サンデーライダーならほぼ1年分です。
私がホムセンで買ったGREEN ACE さんのエアーツールオイルは1リットルのボトルで700円。

こんなパッケージです。
エーゼットさんの水置換剤入りエアツールオイルでも800円。
他の粘度や製品でも大体こんな値段です。
探せばもっと安いやつもあるんじゃないでしょうか。
計算しますと、
メンテ1回当たり14~16円です(爆)
単純な単価では灯油の方が安いのですが、灯油の場合は洗浄後にパーツクリーナなどで灯油を除去する必要があるので総合的にはマシン油とそんなに変わらないかむしろ高くなる場合もあるかと思います。乾くのを待つのも面倒ですし、マシン油と同じ洗浄クオリティを灯油と年間数本のパーツクリーナで実現出来るとは到底思えないし、毎回チェーンを外してボトルシェイクとかやりたくない。
パーツへの残留リスクも背負いたくないし心配しながら作業したくない。
もっとズボラに作業したい。
という訳で私の中ではマシン油に軍配。
~まとめ~
ちょっと考えてみれば原理は至極単純明快。泥水に水道水をかけるのと同じ事。ホムセンや100均等で入手可能な安価なマシン油を自転車のパーツ洗浄に使ったらメチャクチャ綺麗になりました。しかも、パーツ類への攻撃性皆無で、残留しても大丈夫で、耐摩耗潤滑効果と防錆効果も付いてきて、その気になればチェーンオイルと兼用できる。飛び散った際の除去も廃棄も比較的簡単で臭いも少なく健康にもよろしい。
様々な場面で他の洗浄剤と置き換えられ、ズボラな作業を実現する激安クリーニング剤の存在に気付いてしまいました。(本来は潤滑剤です)
他のクリーニング剤から移行した場合やメンテをサボりまくってコテコテの状態からスタートする場合、パーツから汚れが排出されるまで時間がかかる場合がありますが回数を重ねる毎に確実に効いてきます。
革命的なケミカルに出会ってしまった気分です。
ただのお安い鉱物油ですけどね。
価格評価→★★★★★(灯油とセール品のパーツクリーナのコンボにすら軽々と勝利してみせた戦慄のランニングコスト)
評 価→★★★★★(爆安洗浄剤 兼 潤滑剤 兼 保護剤。万能過ぎて笑いが止まらない。)
<オプション>
既に投稿済みの工具のメンテナンス法も原理原則は同じです。
良かったらこちらもどうぞ。
https://cbnanashi.net/cycle/modules/newbb/viewtopic.php?topic_id=16344&forum=106