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日ノ尾峠は、阿蘇市と高森町を結ぶ旧街道の峠。
有名な国道265号線箱石峠が根子岳の東側を通るのに対し、日ノ尾峠は西側、高岳と根子岳の間を通っている。
道自体はアスファルト舗装とコンクリ舗装が織り交ぜられた一車線道路で、どちらかというとグラベルバイク向けだがロードでも普通に通れる。
ただし、大雨が降るとちょくちょく通行止めになるようだ。
特筆事項として、高森町側を通過する際にはご当地特別ルール厳守と牛さん遭遇イベント発生への心構えが必要。
~スペック~
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宮地駅側
距離 8.3[km]
標高差 445.8[m]
平均勾配 5.4[%]
高森町側
距離 5.6[km]
標高差 349.0[m]
平均勾配 6.2[%]
宮地駅標高 538.6[m]
高森町側入口標高 635.4[m]
頂上の標高 984.4[m]
全長 13.9[km]
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私がこの峠の存在を知り興味を抱いたキッカケは、地理院地図Web版を眺めていたら阿蘇五岳(あそごがく)を貫くポジションに堂々と峠名が載っているのを見つけたためだ。黒線と白線で宮地と高森がつながっている。
ナニコレ超行ッテミタイ。
早速情報を収集すると通行に際してのご当地ルールと歴代の通行止め情報を得られた。箱石峠に比べて中岳火口に近く火山灰の影響も大きいので、事前の情報収集が大事な道のようだ。その中に最近通られた方の情報が何件か出てきたのでグラベルロードで行ってみることにした。
まずは北側のスタート地点であるJR宮地駅に赴く。
蒸気機関車用の転車台がある事で有名な阿蘇神社の最寄り駅だ。
近くにはコンビニもありますし、阿蘇神社周辺は湧水だらけなので給水にも困らない。(給水無料)
宮地駅までは二重峠やミルクロード経由で自走するか輪行でも行けます。(豊肥本線は2020年8月に復活。)
宮地駅をスタートして踏切を渡り、駅舎とは反対側に回り込む。
阿蘇市一の宮運動公園の横を通り過ぎると"日ノ尾峠"と"九州自然歩道"の案内標識がセットで見つかるはずだ。
あとはこの標識をたどれば日ノ尾峠へ道なり一本道。
森の中に入ると同時にコンクリ舗装が現れる。
道は緩い弧を繋げた如何にもって感じの古道レイアウトだ。
最初は森の中を進んでいくので時折畑や民家(別荘地?)が現れる程度であまり景観は無い。
豊肥本線と接近する区間もあるようだが森の中故に気付く事は出来なかった。
ある程度上の方まで来ると右手にパッと原野(放牧地)が広がる。
バックに聳え立つのは阿蘇五岳(あそごがく)最高峰高岳。
道の行く手には別荘地と根子岳。
民家から壁掛け時計の時報が延々と聞こえると思ったら、それは壊れた時計ではなく本物のカッコウの声だった。(飛んでるのも目撃。)
これはもうヒルクライムなんてやっている場合じゃない。
今すぐペダリングを止め、足を地面に付き、カメラを取り出すべきだ。
やがて民家がなくなる辺りに林道の始点の標識。
ここから森と原野が交互に現れるようになる。
原野は大雨が降った時にだけ水が流れる枯れた川と溶岩で出来た荒々しい土地が草原と低木に覆われており、そこに巨大な刷毛で線を引いたように道が付いている。
道路を通すための造成は最低限しかされていない印象だった。
土地が主役で道路はオマケ。
クルマもほぼ来ない。
雨が降ると100%水没する道登場。
交差する小川は天然の枯山水だ。
道っぽいけど道じゃないよ。
道と並行するメインの川も枯れている。
雨が降れば根子岳から水が駆け下りてくるのだろう。
水が無いのに謎の迫力を感じる。
やがて尾根道のような場所に出る。
写真右手方向を良く見ると箱石峠を行く車が見える。
正面は宮地。
左手は先程の原野と高岳。
阿蘇にこんな景色があったのか。
峠の手前に来るとまた森の中へ。
堆積した落葉が適度に湿っていい感じ。
グラベルバイク万歳。
峠はこんなとこ。
登山道への入り口がありますが、どのコースも崩れてますよ、という案内看板が立っていた。
本来は登山客の入山ポイントなのですが、誰も居なかった。
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さて、高森町側へ下ります。
こちら側は森の中ばかりで時々根子岳や高岳を見上げるタイミングがあるかなという様相。
北側と比べて大人しめですが南側には一撃必殺の強烈なインパクトを誇る牛さん遭遇イベントが待ち受けている。
阿蘇界隈の原野は基本的に立入禁止でそこに居る牛への接触も禁止というルールになっているのですが、放牧地を貫く一般道であるこの道は少しルールが異なるようだ。
要点だけ要約すると、
・ゲートは開けたら閉める
・ゲートが開いてたらそのまま通過
・牧草地には進入禁止
・警笛の類で牛を驚かすの禁止
・牛に触ったり食べ物あげたりしちゃだめよ
・ゴミ捨てんなよ
ということらしい。
実はこの時も後ろからやってきたクルマが一台、私を追い抜いて放牧地を通過している。
やはり通れるらしい。
ゲートが現れました。
この時は中に牛がいたが何故か開いていた。
ゲートの足元には見慣れぬ形のグレーチングがあります。
クルマのタイヤはハマりませんが、牛さんの足はハマるので脱走できないという仕組み。隙間は結構大きく人間の足もハマるので自転車で突破するのも微妙。大人しく押して通過。
牛は広い放牧地を自由に歩き回っているので本当に遭遇するかどうかは別の話だよなと考えつつ、鮮度が高そうな牛のう〇こを優先的に回避しながら坂を下る。残念ながら乾いたう〇こまでは回避できないので、アレは草だ、アレは奈良の東大寺近辺に落ちてる鹿のう〇こと実質同じだ、などと思う事にする。
繰り返しますが、牧草は進入禁止です。(新鮮なう〇こが隠れてますw)
そしてブラインドコーナーを抜けた瞬間、木陰で休憩中の牛さんにエンカウント。
お、おぅ…本当に遭遇するとは。
まずは冷静にブレーキをかけ、う〇こが落ちてないのを確認して地面に足を着く。
牛さんは変な格好で現れた人間を珍しがってめっちゃ見てくる。(好奇心旺盛な模様)
とりあえずこの状況を後世に残すため写真を撮る。
黒毛和牛と阿蘇のあか牛ですね食ったら美味…などと考えるのは今はやめとこう。
牛さんは人間観察に満足して目線を落とし始める。
何もしてこなさそうなのでこちらもゆっくり目線を手前まで持ってくる。
その空間に柵が無いのを確認。
本当にあの間を通るのか?
牛さんを脅かさないように自転車を押して歩いてこの群れの中を通り抜けた。
牛さんは横になったまま休憩続行。
何も起こらなかった。
やがて反対側のゲートに到着。
ここは洗い場付きのゲートだが自転車で入ると沈没するので大人しく隣のゲートを開けて通って閉めた。
ゲートを抜けるとキャンプ場。
この道を道なりに下れば国道265号線の高森町町民体育館付近へ合流します。
新しくできた綺麗な道と以前からある細い道がありますが、どちらを通っても大丈夫です。
無事生還。
~総評~
活火山を貫くアドベンチャー系の峠。
景色はどれだけ控え目に言っても最高としか表現しようがない絶景。
ロードでも走れますがグラベルかMTBで行く方が楽しめると思います。
ちょくちょく通行止めになるらしいので通れるときに通るのが吉。
特筆事項として、牛さん遭遇イベントに対する事前の心構えとご当地ルール厳守が求められます。
私にとって阿蘇の牛さん達は、好奇心溢れる目でサイクリストを観察してくるおとなしく愛嬌のある動物という認識ですが、牛さん初遭遇の方や動物耐性の無い方にとっては南側の走行はかなりハードルが高いと思われます。
そんな場合、北側だけでも十二分に楽しめる道ですのでご無理はなさいませぬよう。
あ、動物耐性があっても接触するのはダメよ。
価格評価→★★★★★(通行無料)
評 価→★★★★★