購入価格:1ボトル数百円
ナイアシンはニコチン酸、あるいはビタミンB3、ビタミンPPとも呼ばれている栄養素である。TV番組の責任回避の惹句を真似ると「花粉症の諸症状を軽減する効果が期待できる」と知り、2019年3月に服用を開始した。
国内メーカーは生産していないようなので、100mgのカプセルが100個入った海外物を購入。途中から500mg×100の物に切り替えた。カプセルが大きく物理的な飲み難さを覚えたが、すぐに慣れて気にならなくなった。ヨーグルトや乳酸菌サプリメントよりも圧倒的に安く、なによりも「飲んだ実感」が得やすいので一年間続けることが出来た。
完全に主観で記憶ベースの比較となるが『薬を飲んでいる』例年を10とすると『薬を飲んでいない』2020年は
鼻:4
喉:1
眼:8
という感じだった(2020年は花粉の飛散量が少なかったのも影響していると思う)。
花粉の飛散量が「非常に多い」日以外は、1日に洟を噛む回数は片手で数えられるくらいまで減った。たまにムズムズして大きなクシャミが出たが後を引かなかった。
喉の痒さはほぼ消えた。鼻の通りがよくなって口呼吸が減り、喉が乾燥しなくなったのも効いているようだ。ドリンクボトル用の柄のついたスポンジで喉の中をゴシゴシこすりたくなる、あの厄介な痒さはなくなった。
眼の痒さはあまり改善していない。鼻と喉が非常に楽になった分、相対的に眼の痒さが強調されたのかもしれない。ナイアシンが眼には効いていない(後述)とすると、薬も飲まず目薬も差していないので、症状を重く感じるのは当たり前かもしれない。
一年で寛解というわけにはいかなかったが、少なくとも私の鼻と喉には絶大な効果を発揮しQOLが大幅に向上した。天気が良い日に自転車に乗ると、翌日までまったく使い物にならず、唸りながらゴミ箱をティッシュで埋めることしか出来ないポンコツになりさがっていたのが、鼻がグズグズしてるだけの人間として生活できるようになった。ポケットティッシュとゴミ袋を持たずに通勤できるようになった。花粉症に悩むすべての自転車乗りはすぐ購入して明日から服用を開始……する前に、レビューを最後まで読んで欲しい。
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ナイアシンの過剰摂取は「ナイアシンフラッシュ」という症状を引き起こす。
空腹時に水で服用し20~30分すると喉の奥、後頭部、耳の中や裏がピリピリしはじめ、それが顔、首、肩、背中、胸、腕へと下がってくる。唐辛子がたっぷり入った激辛系の食べ物を食べた時の「毛穴が開く感じ」から辛さと熱さを引いたような感覚だ。顔や首、手、関節の内側が斑に赤くなり、我慢できるレベルの痒さを感じる。真冬の風呂のような血流増加に伴う痒さだ。フラッシュが強いと悪寒と脱力感を覚える。だが同時に、アルコールのほろ酔いみたいに気分が高揚して饒舌気味になる。粘度の低い、いわゆる水洟が出る。徐々に紅潮は落ち着いていき、2時間ほどで終わる。
ナイアシンフラッシュは、抹消血管が拡張し、細胞からヒスタミンが放出されて起こる(らしい。血管が拡張するからヒスタミンが放出されるのか、ヒスタミンが放出されるから血管が拡張するのか、それぞれ独立した事象なのかは調べられなかった)。ヒスタミンが放出されて減っていくので花粉症の症状が軽くなる(効果が期待できる)という理屈だ。鏡で確認しても眼は充血していないので、理由は不明だが眼には効果がないのかもしれない。
導入にあたって100mgから服用量を増やしていってフラッシュが起こる量を確かめようとしたのだが、そんな必要もなく最初からフラッシュした。フラッシュが「癖になる」という人もいれば「耐えられないほど不快だ」という人もいる。私の場合は、はじめのうちは「不快だが構えないでも耐えられる」くらいだったが、慣れてくると「フラッシュしないと物足りない」ようになった。
フラッシュ中は顔や身体が真っ赤になるため、同居人には予め説明しておいた方が良いだろう。蕁麻疹やアナフィラキシーショックと勘違いされかねない。逆に学校や会社から早退したいときに悪用できる、かもしれない。
空腹時に水で服用するのは理由がある。ナイアシンは糖質、脂質、たんぱく質の代謝に使われるので、 満腹で服用したり、あるいはプロテインパウダーを溶かした牛乳で飲んだりしたら、代謝に優先的に使われてしまい、フラッシュが起きにくくなってしまうのだ。食前に服用してフラッシュの兆候があっても、カレーライスを食べると治まったりもした。
ちなみに「ナイアシンアミド」ではフラッシュは起こらないそうなので、購入時には間違えないようにしてほしい。ナイアシンの他の効能を求めているのならともかく、花粉症対策ならフラッシュを起こす必要がある(はずだ)。
体質改善を謳うサプリや漢方、健康食品の類には即効性がなく、継続して服用することで少しずつ体質が変わっていく。そんなイメージがある。なので「本当に効いているのか? 意味があるのか?」と疑念を抱いてしまう。特にスギ花粉症のようにシーズンがはっきりしていて「効果が分かるのは一年後」というスパンだと、途中で何となく飲むのをやめてしまうと予想できた。だがナイアシンは毎回のように「いま飲んだ錠剤が効果を発揮してこのようになっている」と実感が得られるので続けることが出来た。
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一年間の経過をざっくりとまとめる。
2019年3月:
100mgではじめて、途中から200mgに増量した。花粉症の薬と併用してほぼ毎日服用していたが、空腹時だと確実にフラッシュしていた。
2019年4月:
200mgを数日おきに夕飯前に服用していた。フラッシュは起こるが、徐々に軽くなっていった。
2019年5月~7月:
200mgだとフラッシュが軽く思えてきたので300mgに増量。ニードル脱毛に通っていた時期は、血行が促進する運動や入浴を控えるようにいわれていたので、飲まない日も多かった。
2019年8月~10月:
1カプセル100gの物を2ボトル飲みきり、増量したかったので1カプセルで500mgの物に変更。500g服用すると最初こそ強めにフラッシュしていたが、数回で軽くなった。
2019年11月:
500gでも首と胴体しか紅潮しなくなったので1000mgに増量。
2019年12月~2020年1月:
1500mgに増量。シーズンインが近付き花粉の飛散情報が気になりだす。
2020年2月:
暖冬で飛散開始が例年よりも早かったが、症状が軽くて確信が持てなかったのでツイッターを「花粉」で検索していた。花粉症の自覚症状がない日でも、フラッシュでの赤みと痒みは1月より強かった(体内のヒスタミンが増えていた?)。
2020年3月:
花粉予報が「非常に多い」日中に外で活動する(≒自転車に乗る)と症状が出るが、不幸中の幸いで、在宅勤務だったり、出社しても人の出入りが少ない(=花粉が持ち込まれない)環境だったのでそれほど悩まずに済んだ。
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/allergy/pollen/data/cedar.html飛散した花粉の数と自覚症状を照らし合わせると、150個/cm2が閾値だったように思える。東京で春一番が吹いた02/22は、ナルーマスクを付けていたとはいえ自転車で外を走ったので、特に症状が重かった。
ナイアシンは肝臓に負担をかけるという話もある。健康診断の結果が出たらレビューを追加するつもりだ。
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さて。
「ナイアシン」や「ナイアシンフラッシュ」で検索すると花粉症以外にも多種多様な、多種多様過ぎる効能があるとされているので、私個人の実感を添えて簡単に紹介する。
・冷え性:末端、特に手の指の血行は良くなり、違和感を覚えるほど暖かくなった
・美肌:フラッシュが治まった直後は肌がモチモチしている。皮膚の新陳代謝も活発になった(単刀直入にいうと垢、特に耳垢が増えた)。
・美髪:白髪は減っていない。むしろ増えた気がするが順当な老化の一環とも思える。ハリやコシやキューティクルについては分からない。
・睡眠障害の改善:寝つきと寝起きは良くなった。夕食後のコーヒーをデカフェに変えたのと、フィジカルトレーニングを増やした影響かもしれない。
・食欲不振:食欲は増したが、ナイアシンの効用なのかトレーニングでの消費を補うためなのかは分からない。
・悪玉コレステロールの減少:健康診断結果待ち
・善玉コレステロールの増加:健康診断結果待ち
・中性脂肪の減少:健康診断結果待ち
・二日酔い予防:分からない
・薬物依存:分からない
・大腸がんの予防:分からない
・不安症:分からない
・パニック障害:分からない
・アルツハイマー病の予防:分からない
・鬱病:分からない
・統合失調症:分からない
・放射線被爆:分からない
そろそろ眉毛が唾でべちょべちょになり、傾げ過ぎた小首の筋を違えた頃だろうか。「日本で流通がないのは高価な向精神薬を売りたい精神科医と製薬会社の陰謀である 」などと書いているサイトも見掛けた。本レビューも含めて情報は鵜呑みにせず、自分自身で判断して欲しい。
価格評価→★★★★★
評 価 →★★★★★