購入価格 US$2,900(Open Cycleから直接購入)
日本語でほぼ全くレビューがありませんので、投稿します。購入して3年になり、アメリカでダーティカンザ、グラインデューロ(カリフォルニア)を含むグラベルレースを数本走っています。日本のレースも走りました。長期レビューとして読んでください。
・ジオメトリ
Open UPを語る上で絶対に外せないのが、ジオメトリです。2020年の今ではあまり珍しいジオメトリではありませんが、タイヤクリアランスを確保するための極端に下がった(湾曲した)チェーンステイの元祖は、Open UPです。また、ロードバイクとほぼ変わらないジオメトリを採用したグラベルバイクも、やはりOpen UPが業界初です。
サイズ選びはロードバイクと同じ感覚で行って良いと思います。迷ったらOpenに直接聞けば、設計者のGerard Vroomen(サーベロ創設者)が直々に返答をくれますのでオススメです。自分はSpecialized Tarmac 54サイズ、Canyon Sサイズに乗っていますが、Open UPはMサイズでした。
なお、ロードバイクのようなジオメトリなので、ポジションの決め方も普段乗っているロードバイクに準じて、少しずつ変更を加えていくのが良いようです。自分の場合はハンドル位置を5mmほど上げて、STIをしゃくり気味にしています。ステム長さ、サドル位置はロードバイクと同一です。
このフレームの前はグラベル用として、CXバイクに乗っていたのですが(サンタクルズのSTIGMATA)、それと比較するとピーキーさが減り、ロングライドに適したエンデュランス系ジオメトリであることが分かります。ただし、スプリントなど短距離高出力はStigmataのほうが(CXバイクだけに)適しているようです。もっとも、グラベルレースでスプリントすることはほぼありませんので、そこは設計の取捨選択でしょうか。細いタイヤ(30c程度)を履けば、ロードのグループライドでも困ることはありません。信号スプリントは負けますが、そこ以外で不利になることはありません。むしろ距離が伸びたり、路面が荒れてくると、Open UPの快適さが勝ってむしろ有利です。
・乗り心地
ロードバイクほど固くありません。でもツーリングバイクのような大型トラックのような「おおらか」な乗り心地もありません。Specializedのルーベのような乗り心地をグラベルで実現、とでも言っておきます。Dirty Kanza 200で身体に痛みも出ることなく走りきりましたので、乗り心地は良いと思います。
ロードのグループライドの場合は、それなりに鈍重さが出てきます。フレームは1kgを切る超軽量級ですが、登りのアドバンテージは感じません。可もなく不可もなし、でしょうか。下りはロードバイクと同じ感覚で下れます。平坦もまず問題ありません(脚力は別として…)。実業団レースや、ツール・ド・おきなわに出るようなフレームではありませんが、ブルベにはかなり向いていると思います。
・その他
シートポストは基本オフセットがゼロのものを選ばないとポジションが出ません。これはシートアングルが立っていることに起因します。コンポ載せ替えの際は、シートポストのオフセット量にご注意ください。あと、極端に下がったチェーンステイの弊害で、クランクとチェーンステイの間がかなり狭いです。Stages、Pioneer、4iiiiのパワーメーターは全て使えません。ここはOpen CycleのHPで色々情報が出ていますので、調べてみてください。また、Rotorなどコンパクト(50/34)の楕円チェーンリングを使う場合は、インナーチェーンリングとチェーンステイのクリアランスが1~2mmしかありませんので、現物合わせで取り付けてください。これを解消するために、WolftoothのEclipseチェーンリング(32T)を使うという手もあります。Open Cycleは1xを推奨しています。
ダボ穴はありません。フェンダーなどはフレーム固定タイプを選ぶことになります。
Open UPはスペシャル完組モデルを除いて、フレーム売りのみになります。したがって、使うコンポ選びからホイールまで全てライダーが決める必要があります。自分でバイクを組めない方にはそれなりにハードルが高くなりますので、日本代理店のアバブサイクル系列のショップで買うのがベターかも知れません。自分は自分で組んだパターンですが、初めての油圧ブレーキという所以外は、特に困ることはなくすんなり組めました。Open UPだからといって特記すべき事項はありません。
面白いところでは、直接購入の場合は、Paint Readyモデルが用意されています。これはフレームのクリアコートも塗られていない、生のカーボンフレームのままでの販売です。当然、ペイントをしないと外は走れませんので(カーボンに含浸された樹脂が紫外線で劣化する)、自分でカスタムペイントをしたい、という場合は購入後そのままペイントできますので、オススメです。自分はPaint Readyで購入して、カスタムペイントを施していいます。愛着100倍です。
非常に細かい点としては、トップチューブにベントーボックスタイプのトップチューブバッグをボルトオンで取り付けられますが、他のメーカーに比べて、ステムからボルト位置までが若干「遠い」です。なので、例えばトライアスロンのフレーム用トップチューブを取り付けると、バッグとステムの間に1~2cmくらいの隙間ができます。なんでこんな微妙に遠い位置にボルト穴を設定したのか理解に苦しみます。この変なボルト位置に対応したトップチューブバッグには、Revelate Designのボルトオンタイプ(Mag-Tankなど)があるだけです。他にもあるのかもしれませんが、自分は把握出来ていません。
さらに超マニアックな点としては、アイスランドの変態サスペンションLauf CyclingのGritがそのまま使えます。日本でも使っている人を見かけたことがあります。自分はRedshiftのステムサスペンションです。
さらにさらにマニアックな点としては、Di2用にボトムブラケット下部にあるシフトケーブル通し用の穴を塞ぐカバーが別売されています。あと、フレームには予備ディレーラーハンガーが1つ付属します。自分のように知らずに予備を買って、いきなりディレーラーハンガーストックが2個になってしまわないようにしましょう。フロントディレイラーハンガーは、1xで運用する場合、取り外し可能です。あと、クランク付近にあるチェーンプロテクターは付属しません。チェーン落ちするとクランクとのクリアランスがかなり狭い弊害で、フレームにチェーンが絡みついて大きくキズを付けることがあります(涙)。楕円チェーンリングを使ったりして、チェーン落ちの可能性がある場合は、チェーンウォッチャーは必須と言っておきます。
・まとめ
販売開始から数年が経過していますが、2020年もトップレーサーがバリバリグラベルレースで使っています。1台でロードからグラベルからバイクパッキングまで何でも出来るバイク、グラベル「レース」バイクとしてオススメできる選択肢と思います。キビキビした動きはなく、スプリントもモッサリしていますので、シクロクロスには向いていないと思います。ぜひPaint Readyフレームを買って、自分好みのバイクに仕立て上げましょう。お金があれば更に軽いUPPERも良いですね。
価格評価→★★★★★(←直接購入すれば、トップレベルのフレームとしてはリーズナブル)
評 価→★★★★★(←グラベルバイクとして)★★★★☆(ロードバイクとして)
<オプション>
年 式→2018
カタログ重量→ 実測990g(ペイント済み・フレームのみ、サイズM)、実測390g(U-Ternフォークのみ)