購入価格 $2,350(2018年末のレートで¥258,500相当)
【総評】
これに乗るには「自転車の乗り方をもう1度覚える」手間が必要です。
その苦労を楽しめて、リカンベントに29erを履かせたいと思うのなら検討しても良いでしょう。
【概要】
米国Cruzbike(クルーズバイク)社の前輪駆動リカンベントです。
完成車とフレームセットがありますが、米国以外はフレームセットのみの販売となります。
S40はエンデュランスバイクと位置付けられており、現行ラインナップ中2番目の空力(シートバックが寝てる)と最大のタイヤクリアランス(スリックなら700x38Cまで)、豊富なダボ穴が特徴です。
メーカーサイト:
https://cruzbike.com/products/s40【動機】
私がリカンベント購入に踏み切ったのは以下の理由です。
・定番から外れた物が好き。
・かつて自転車仲間がリカンベントを所有しており、自力発進までレクチャーして貰った事がある。
・ブルべ(浜名湖200)で向かい風に大いに苦しめられた。
・当時のメインバイク(TNIチタンシクロ)のカスタマイズが落ち着いて自転車弄りの対象が無くなった。
公道ではトップスピードを除けば太めのタイヤの方が利点が多い為、前後700×32C以上を履かせたいと思っていました。
しかし大半のリカンベントは28Cが上限であり、私が知りえた中ではS40が唯一それ以上(38C対応)でした。
構造的に操縦安定性に難があるのは容易に予想出来ましたが、
・じゃじゃ馬の方が飽きずに乗り続けられそうなこと
・チェーンの長さが1本で済む(通常のリカンベントは2.5~3本分を使う)ので伝達ロスが少ないこと
・BBが腰の高さにあって登りでも苦しく無さそうなこと
という利点も読み取れました。
そして「機械的に理想な設計をした結果、ちょっと(どころでは無く)操縦が難しくなったけど、そこは乗り手の腕、いや脚でカバーしてね」という浪漫溢れるコンセプトが見えた気がしたので決定(笑)。
【購入】
大阪のHP-WARKSでも扱っていますが、手持ちの余りパーツで組むのでメーカーサイトで直接注文。
支払いはPayPalを使用しました。
フレームの他にベンチシット(高通気性クッション)、フラッグ、ヘッドレスト用ボトルケージ台座も発注。
半年後にヘッドレストとスカラベバッグを追加で購入しています。
【所見】
クルーズバイクはフォーク側に駆動系がある前輪駆動リカンベントだけを生産している珍しいメーカーです。
この方式の利点はリカンベントとしてはチェーンが最短(市販1本分)で済むので伝達効率に優れ、メンテナンス等も楽になる事です。
また、いざという時はリヤブレーキワイヤーを抜き、コラムを外すことで車体を前後に分割する事も出来ます。
とは言え、フォーク抜き輪行のヘッドではないのでベアリング類の扱いに注意が必要ですし、そもそも車重が素で14㎏ほどある(フレームセットが約6kg)ので輪行向きとは言い難いです(リカンベントとしてはコンパクトに出来なくも無い、というレベル)。
欠点はフォークにクランクがある都合上、ペダリングの反動でハンドルが振られる事と、前輪駆動ゆえグリップが低く、荒れた上り坂で踏み込むとスリップする事です。
特にクランク、つまりBBとハンドルが連動する(連動させられる)というのは重大で、ふらついたので修正舵を当てようとするとペダリングに邪魔されて修正し切れず、余計にふらつくという悪循環が発生します。これは300~400㎞程乗ればそこそこ慣れますが、逆に言えばそれぐらい乗らないと慣れないということです(苦笑)
一般的な車(スズキ・ハスラー)と比べるとこれぐらいの高さになります。
窓の高さに顔が来るのでフラッグ(旗)無しでも大丈夫そうですが、念の為に165cmぐらいの高さに立てています。
※右の画像ではアングルの関係で車体が小さめに写っています。(身長180cm)
【使用感】
・乗車感覚
後輪駆動のリカンベントなら平地での自力発進が出来る程度にはレクチャーを受けていましたが、S40は組み上げ後、1時間やってもダメで、一晩考えて翌日になんとか走れるようになりました。
執筆時点で1000㎞以上乗りましたが、まだ咄嗟の反応に慣れていません。
これがアップライト(所謂、普通の自転車)なら数十年乗っていますが、リカンベント・・・というかクルーズバイクは1年未満なので圧倒的に経験が足りないのだと思います。
そういう意味では、自転車の範疇にありながら別種の乗り物だと考えた方が良いのかも知れません。
・性能
空力は中々良く、向かい風なのか走行風なのか判別出来ないぐらい。逆に言うとそれぐらいは風を感じます。
前方視界は問題無いレベルで不安は感じません。
登りでも逆立ちをするような息苦しさはありませんが、前述の通りハンドリングが不安定でグリップも低いので丁寧なペダリングが要求されます。
38Cスリックを履かせているので空気圧の設定次第では乗り心地も良いし、荒れた路面でも安定しています。
(それでもコケる時はコケますが)
・使い勝手
8ヶ月ほど通勤に使っていますが、スタンドが無いのが不便ですね。
クイックに共締めするロード用が使えるかと思いましたが、前輪はエンドの形状が合わず、後輪は重心から外れ過ぎて倒れます。
仕方が無いので会社の駐輪場にはBIKEHANDのYC-96とYC-97を置いて前後を支えるようにしています。
(前だけだと強風で倒れたので・・・)
今は会社以外の出先での駐輪用に二つ折りのディスプレイスタンドを搭載する手段を考えています。
あとはリカンベントの常として周囲から注目されるというのがあります。
(特殊すぎて「パラリンピックの自転車」と思われている可能性もありますが)
驚かれたり笑われたりするのは構わないのですが、稀に並走する車が居るのが困りますね。これは危険だからマジで止めてほしい。
【構成】
試行錯誤した結果、現時点では以下の仕様になっています。滅多に使わない重いギヤを捨てて、登坂用に軽いギヤを重視。
近所に距離150mで獲得標高24mというふざけた坂(約16%、ルートラボ調べ)があるので、そこを登れる設定です。
クランク :スギノ OX2-901D 175mm ギヤは非純正の42/28t
カセット :シマノ CS-M7000 11S 11-40t
Fディレイラー :シマノ GRX FD-RX810 直付(スギノ MT-OXでオフセット取り付け)
Rディレイラー :シマノ RD-M8000 SGS
チェーン :シマノ CN-HG601
シフトレバー :マイクロシフト BS-M11 左右セット
ブレーキレバー :テクトロ RL520
ブレーキ :TRP SPYRE-C(パッドはシマノのB01Sに交換)
ホイール&タイヤ:ALEXRIMS CXD4 & Panaracer グラベルキング 700x38C
ハンドル :ディズナ ニーザーハンドル LL
サドルバッグ :あさひ Laukku-SB8
【まとめ】
リカンベントに乗れて、更にパナソニック・ロデオを求めるぐらいに変態・異端を自認しているのなら検討しても良いかも。
常識人が手を出すと多分後悔します。
価格評価→★★★★★ 需要の少なさを考えれば立派。
評 価→★★★★☆ 専用サイドスタンドが欲しい。
<オプション>
年 式→2019
実測重量 約14kg