購入価格 工賃込み¥15,000
これを購入したのは最近ではなく、もう1年以上も前の事になるのですが、
どのような効果が表れるのか長期的に調べてみたかったので、今までレビューにはしていませんでした。
本格的に自転車に乗り始めるよりも前から抱えていた身体的な悩みがひとつありまして、
何かと言うと「膝の曲がる角度が左右で全然違う」という事です。
普通に生活している限りでは気にならないのですが、膝を大きく曲げ伸ばしする動作、
例えば急な山道を歩いて登ったり、階段を1~2段飛ばしで上がったりする時に、
「足の向きが左右対称の時は左膝が内側に入る」
「膝の角度を左右で合わせると左足が外側を向く」
といった症状が無視できないレベルで表れます。
歩くだけならまだマシです。登山で脚を痛めた試しはほぼありません。
これが自転車になると、ビンディングペダル上での足の向きを左右で変えられませんから、
一方の膝の角度を他方の膝に合わせなければいけなくなります。
僕の場合、左膝の曲げ伸ばし角度を右膝に無理やり合わせてペダリングし続けていたため、
長時間走り続けると左膝が痛みだします。
シューズの角度を左右で変えておけば(左足つま先が外を向くようにクリートを振っておけば)
多少なりとも改善するのではないだろうか、などと考えた事もありましたが、
クリート角度という二次元的な調整だけではどうにもできませんでした。
↑当時履いていたスペシャライズドのシューズです。
苦肉の策として、LOOKの赤色グリップ無しクリートを導入した事もありました。
https://cbnanashi.net/cycle/modules/newbb/viewtopic.php?topic_id=15479&forum=65↑LOOKの赤クリートのレビュー
LOOKペダルのKEO2 MAX以上のグレードは、可動域の広いクリートを使った時の
クリートとペダルの摩擦がシマノSPD-SLよりも少ない事を知っていたので、
KEO2 MAXを赤クリートで使う事で膝へのストレスを軽減しようと企んでいた、
というのが赤クリートのレビューの趣旨なのです。
ペダルに付属している灰色クリートに比べればだいぶ改善できたものの、
いつまでも可動域が広いクリートを使い続けるのもどうなのか、
ここぞという場面で力の限り踏み倒したくても、赤クリートではちょっと・・・。
そこで、シューズの買い替えに際してカスタムインソールを作る事で
なんとか解決できないか、と考えました。
新たに購入したのはジロのエンパイアですが、別にこれである必要性はありません。
単純にデザインが気に入っただけです。
フラッグシップモデルのエンパイアSLXやACCにしなかったのは、
敢えてミドルグレードのシューズにとどめておいて
差額をインソール代に充てたかったから、というのもあります。
○インソール作成の手続き
カスタムインソールを作れる店は、まずスペシャライズド取扱店であるのは勿論
その中でも限られた22店舗しかありません。
BOLTやシマノシューズの熱成型と違い、専用機材がないと施術できないからです。
施術してもらう時は、シューズとインソールを持ち込む必要があります。
カスタムインソールの輪郭はサイズ以上に大きいので、
シューズ付属のインソールがないと正確な大きさに切り出せません。
成型のプロセスを詳しくは覚えていないのですが、施工前にまず膝と足裏の角度を測られます。
スペシャライズドからは、カント角を調節するためのスペーサーが単品販売されていまして、
膝の屈伸角度の左右差をスペーサーで埋める事が出来るようになっているのですが、
インソールの成型でカント角の微調整もまとめて行ってしまうようです。
↑メーカーサイトより。
足を置いている青いところは「負圧成型器」と呼ぶそうで、
細かいビーズが入っている内部の空気圧を下げる事で足の裏にピッタリと密着させるのだそうです(逆だったかもしれません)。
インソールは足の裏に押し当てて成型するのではなく、
まず足の裏の形に固まった負圧成型器に押し当てて大まかな形が出来上がります。
直接足型を取るよりも、フィット感が強くなるのかもしれません。
上の画像でも伝わるかもしれませんが、負圧成型器でカバーできるのは土踏まずより~踵までです。
拇指球~つま先は範囲外なので、最終的には成型器と足裏でインソールを挟んで
圧縮して仕上げます。
面白いのが、従来型のカント調整スペーサーでは拇指球直下に挟み込むタイプのものが多いのに、
カスタムインソールに盛り込まれるカント調整は土踏まずより後ろで完結しているという点です。
なにかスペシャライズドなりの考えがあるのでしょう。
僕のように、持ち込まれるシューズがスペシャライズド以外のものであるケースも多いでしょうから、
不必要に拇指球側の圧迫感を増やすのを嫌ったのかもしれません。
あるいは、実使用時に圧力がかかる範囲で成型しても経年使用で潰れてしまうとか。
○出来上がったインソール
完成品がこちらです。
「BODY GEOMETRY」の「G」の辺りから拇指球直下にかけて大きく湾曲していて、更に土踏まずの内側3分の2くらいが
約1cmほど反り上がった状態で固まっています。
扁平足の人なら、もっとフラットな形に仕上がるはずです。
踵のまわりはガッツリと盛り上がっていて、いかにもホールドの強そうな(実際強いのですが)感触です。
ジロのシューズは、スペシャライズドに比べて踵のホールドが弱いので、これだけでも勧められる良い動機になります。
当然ながら、インソールの上に足を乗せると1mmの隙間もなく密着します。
赤いところはポリアミド繊維か何かでしょうか?
非常に硬質で、手で思いきり曲げてもビクともしません。
踵のところに至っては、丸く仕上げてあるのも手伝って、破壊せずに変形させるのが不可能なレベルで硬くなっています。
スバル360のボンネットを薄い金属板で成形するのに、
球的な曲面にする事で飛躍的に強度を上げたエピソードがありますが、それを思い出しました。
青い円盤はスタビライザーで、これを貼りつける事で足全体の安定感が向上するのだそうです。
これを付けるか否かで料金は変わらないので、フィッターさんに一任したのですが
「膝の角度の左右差が大きいので付けた方が良い」と言われました。
おぉ・・・そんなに酷いのか僕の脚は。
よく見てみると、スタビライザーの貼り付け位置そのものが左右で全然違います。
これも、カント角の調整に一役買っていそうです。
成型にかかる時間は、30~40分ほどです。参考までに。
○使ってみた感想など
これを作った直後に、100km/2,400mのポタリングに出掛けたのですが(ポタリングとは…)、
1時間ぶっ続けで立ち漕ぎ、向かい風の吹き荒れる中でヒルクライム、など
相当な無茶を強いられたにも関わらず、膝は全く痛くなりませんでした。
帰宅後も膝に異変が見られなかったので、これはイケると思い
LOOK KEOの黒クリート(0°)を「左右同じ角度で」取り付けてみたところ、
膝が悲鳴を上げる事は一度もありませんでした。
なんたる事だ!今まであんなに苦労を重ねたのが嘘のようだ。
スペシャのステマではなくて、マジです。
今までも黒クリートの使用を試みた事は何度もありましたが、
何をやっても20kmくらいで左膝が痛くなるので、絶対にロングライドには使いたくなかったのです。
もうすぐ使い始めて1年半になります。
ソールは非常に頑丈で、ヘタる事もなく今でも良い仕事をしてくれています。
○競合製品
これを見て、スーパーフィートを連想する方もおられるでしょう。
割と最近になって、自転車関連の問屋さんが取り扱いを始めたのもあって
輪界での認知度が上がってきているらしいです。
↑こんなん
実は、僕はスーパーフィートを持っています。
5年くらい前に買ったもので、当時は自転車用としてではなく登山用として使っていました。
こいつをビンディングシューズに入れて使った事もあるのですが、根本的な解決には至りませんでした。
既製品をそのまま転用しているだけなので当然ですが。
スーパーフィートは、スペシャライズドよりも昔からカスタムインソールの販売を行っています。
しかも、メーカーサイトには「プラスチックスタビライザーが後足部の安定を実現」などと記載があり、
おまけに これは特許を取っているそうです。
権利問題にうるさいスペシャライズドが特許を侵害するとは考えにくいですから、
スペシャライズドのインソールはスーパーフィートの技術供与が基になっているのか、
もしくは既にパテント切れになっているのか。
興味が尽きませんね。
○まとめ
こういう製品に疎い人が見れば、やはり価格の高さに驚く事でしょう。
ですが、特に自分のような関節の動作に難がある人は、買っても絶対に損しないと思います。
一生ものとはいかないでしょうが、貧弱な製品には見えませんので、
1週間に500kmの走り込みを毎週、とかしない限りは相当に永く使えるはずです。
価格評価→★★★★☆
評 価→★★★★★