購入価格 ￥4,870
2017年度より新登場した、カンパニョーロの「名無し」チェーンです。
従来のコーラスのチェーンよりコストパフォーマンスに優れています。
○グレード
「11 Speed Chain」とはまたストレートな商品名ですが、これが正式名称なので仕方ありません。
僕は「名無しの11速チェーン」などと呼んだりします。
2016年まで、11速コンポの廉価版としてラインナップされていたATHENAに入れ替わる形でデビューしたのがPotenza11で、
ATHENAはフロントトリプルのコンポとして2017年いっぱいは継続、
2018年にはVeloceと一緒に廃版となりました。
ATHENAとPotenza11には、旧型コンポとの互換性うんぬん以外で異なる点が幾つかあり、
・クランクがワンキーレリースになった(左クランクを外すのにベアリングプーラーが不要)
・カーボンブレーキレバーが選択肢から消えた
・フロントトリプルが無くなった
・ブレーキシューホルダーがシマノと同じ形になった
・Potenza11グレードに相当するチェーンがリリースされた
などです。
ここで言う「Potenza11相当のチェーン」こそが、今回のレビュー対象なのです。
ATHENAの頃は スプロケットとチェーンに「ATHENAグレード」に相当するものが無く、
Chorusのスプロケットとチェーンを代わりに充てる、という状態だったので
Potenza11のデビューは より安価にカンパニョーロのコンポを運用できるようになる事を意味していました。
ありがたい話です。
↑紙媒体の資料が手元に無いので、ウェブ上の2015年度カタログ
2015年から ATHENAグレードのブレーキが消えていた事を初めて知りました。
ピナレロなどの完成車に使われている「名無しのブレーキキャリパー」ですが、
細部の仕上げやブレーキシューの形式など どう見てもPotenza11のブレーキと同じです。
ちなみに 11速チェーンの税込定価ですが、2019年時点で
Record 9,288円
Chorus 7,344円
名無し 5,724円
となっています。店によっては もう少し安いかもしれません。
○RecordおよびChorusとの違い
アウタープレートの肉抜きあり、インナープレートの肉抜きなし、ノーマルピン、というのが名無しチェーンの特徴です。
Record(右)チェーンはプレートの肉抜きなし、中空ピン。
Chorus(左)チェーンはプレートの肉抜きなし、ノーマルピン。
価格が高いChorusチェーンのほうが かえって重い、という逆転現象が起きていますね。
という訳で、現状Chorusチェーンを買うと 重量的に損をする事になるのです。
Chorusチェーンのほうが高耐久長寿命、という感じの付加価値があれば選んでもいいのですが、
名無しチェーンが そもそも長持ちするので、うーん・・・。
○取り付け
シマノのチェーンは、公式マニュアルによれば
①チェーンをリヤメカに通さず アウター×ローに掛ける
②その時の最短長さに1コマ(または2コマ)足す
という手順で長さを決定します。
ワイズロードのサイトが分かりやすいです。
カンパニョーロの場合、
①リヤメカに通したチェーンをインナー×トップに掛ける
②チェーンステー下のチェーンと、アッパープーリーを通ったチェーンとの隙間が8～15mmになるよう調整する
という手順です。
が、この手順のソースは ちょっと前のカンパニョーロの公式マニュアルなので、
ローギヤが巨大になっている最近のコンポであれば シマノ式の方が確実だと思われます。
今回は アウター52Tにローギヤ25Tないし28Tでの使用なので、カンパ式で長さを決めました。
上の画像、チェーンの隙間は約10mmになっており
あと1コマ足すと アッパープーリーと下のチェーンが接触します。
テンション調整で何とかする事も可能ですが、わざわざ長くする意味もないので これでいきます。
アウター×ローに掛けても プーリーは大して突っ張りませんが、ロー28Tのスプロケットに交換する可能性を考慮すれば妥当な長さです。
純正チェーンカッターを持っていない人は、KMCのミッシングリンクを使いましょう。
このとき、
「再使用不可」のものを選ばなければいけません。
RE-USABLEなミッシングリンクは、シマノないしKMCのチェーンにしか合いません。
あとで書きますが、シマノとカンパニョーロはチェーンの厚みが全然違うので互換性がありません。
↑ミッシングリンクの正しい取り付け方向
文字で書くと、
「チェーンステー上側で、右から見た時に長穴が右にある状態」が正解です。
逆にすると 変速時に外れる危険性がある、と言われていますが、
本当に外れるのかどうかは疑わしいところです。
理論上良くないのは分かるのですけど。
工具で挟んだ程度では「パキーン」できないので、
ペダルを足で踏んでパキーン！！しました。
○耐久性
とにかく長持ちします。
レコードのチェーンを10,000km使えると言っている人もいたくらいです(レーサーではない)。
僕はまだ2,000～3,000kmくらいしか使っていないので まだまだ大丈夫ですが、
↑このように 超音波洗浄機にかけては いけません。
ローラーの奥にまで塗り込められた高粘度グリスが流れ出してしまい、
耐久性が著しく低下してしまいます。
このあと 高粘度のチェーンオイルを注しておきましたが、注油頻度は間違いなく高くなります。
○シマニョーロ
ここからが書きたかった事ですが、
シマノとカンパニョーロのスプロケットは寸法がほぼ同じです。
なので、フルカンパで組まれたバイクのスプロケットだけシマノに置き換えても ちゃんと変速します(もちろん微調整は必要です)。
しかし、そこからさらにチェーンまでをもシマノに置き換えてしまうと、変速性能が低下してしまうのです。
↑これが その時の画像です。
スプロケットはCS-R7000 12-25T、チェーンはCN-HG601-11ですが、
どれだけ調整を追い込もうとも チェーンとスプロケットが干渉する「チャラララララ・・・」が鳴りやまないのです。
Tacxのプーリーを純正品に戻す、リヤエンドを修正する(ちょっと曲がってた)、
別のスプロケットやホイールに入れ替える、などなど 思いつく手は全て試しましたが無駄でした。
ここから、チェーンをカンパニョーロに交換するだけで 音鳴りは解消されるので、
チェーンの寸法が無視できないレベルで明確に異なる、という事が判明しました。
ChorusのスプロケットとCS-R7000(同じ歯数)で比較した際の数値ですが
歯の厚みが約1.4mm、歯の間隔が約2.2mmで(少なくとも観測上は)違いが見られません。
やはりチェーンの違いです。
(厳密には、カンパ11速の12-25Tの場合 16Tと17Tの間だけ2.3mmとってあるはずなのですが、
そうはなっていないCS-R7000で変速不良は起きません。不思議です)
先ほどのバイクから外したHG601チェーンです。
これのアウタープレートを、ノギスで挟んで測定します。
0.1mm単位でしか測れない、精度的に やや怪しいノギスですが ご容赦くださいませ。
チェーンの外幅、5.2mm以上5.3mm未満といったところでしょうか。
5.2mm強としておきます。
カンパニョーロの名無しチェーン。約5.1mmです。
サンプル数2で、御世辞にも高精度とは言い難い採寸ではありますが
チェーンの外幅に約0.1mmの幅の違いが確認できました。
あまり画像まみれにするのもアレなので数値だけにしますが、
ここから更に それぞれのインナーリンクの内幅も測定したところ
カンパニョーロは2.3mm弱、シマノは約2.2mと出ました。
アウターリンクの内幅は共に約3.9mmです。
つまりは、シマノのチェーンの方が 外幅が広くて内幅も狭く、
カンパニョーロのチェーンに比べて変速調整が段違いにシビアになるという事です。
で、HGスプロケット＋HGチェーンが要求する変速精度が カンパ11速コンポの限界を越えていたために
調整がちゃんと決まらず、一部のギヤでのチャラチャラ音を許してしまったのでした。
そして、フルシマノコンポの場合 そもそもHGスプロケット+HGチェーンの組み合わせで バッチリ変速できる訳ですから、
この差を一般的に表現するなら「シマノはカンパよりも変速性能が上」となります。
先ほど触れた、再利用できるタイプのミッシングリンクを使ってはいけない理由ですが
ミッシングリンクの部分だけがシマノチェーンの寸法になってしまうため、
そこがスプロケットを通過するたびに「チャラッ」と鳴るので大変うっとうしいのです。
品番で見分けるなら、
「CL555」がカンパニョーロ11速の専用品、
「CL555R」がシマノ11速対応品です。
パッケージから出してしまうと判別しづらいので、参考までに。
結論：カンパニョーロ組のバイクにシマノのチェーンを使ってはいけない。
○まとめ
シマノに比べれば まだまだ高価なチェーンである事は否定できないものの、
それでも従来より ずっと安いチェーンが手に入るようになったのは非常に助かります。
今後もお世話になる事でしょう。
(ホーザンのチェーンカッター欲しい)
価格評価→★★★★☆(ちょっと値上がりしたからなぁ)
評 価→★★★★★
おまけ
KMCの事を調べるのに “聖典”を参照したところ
集団脱字があって驚きました。
