購入価格: ¥39,218(税込)
標準価格: ¥52,800(税込)
『リムハイトの高さが高速巡航と見た目に貢献する』
■ Fulcrum Racing 4 DBとは
Fulcrum Racing 4 DBは、ディスクブレーキ対応のロードホイールだ。2016年モデルはエントリーグレードがRacing 5 DBのみだったが、2017年モデルはRacing 4・5・6・7 DBの4つが加わった。この中でRacing 4 DBは35mmのリムハイトが最も高いモデルだ。
ディスクブレーキの制動力に対応する”モノブロックハブ”、アダプターの交換で様々なフレーム規格に対応する”ワン・ハブ・フィット・オール”、クリンチャータイヤとチューブレスレディタイヤの両方に対応する”2WAY-FIT-READY”が4〜7まで共通する仕様。ローターの規格はASF(センターロック)のみで、ハブとリムの材質はアルミである点も共通だ。Racing 4 DBはストレートプルスポークを採用し、Racing 5・6・7 DBと異なりアシンメトリックリム(非対称形状のリム)は採用されていない。
2016年モデルのRacing 5 DBからの変更点も多く、スポーク本数が21本から24本になり、フロントの反ローター側とリアのローター側のラジアル組は廃止された。スポークレイアウトは2:1だが、”2:1 TWO-TO-ONE”の表記がカタログから消えている。また、フロントのローター側とリアのフリー側のフランジがやや小さくなり、”オーバーサイズフランジ”ではなくなった。
付属品はマニュアルとアダプターで、クイックリリースレバーは付属しない。アダプターでQR、12mmスルーアクスル、15mmスルーアクスルを選ぶことができ、リアエンドも135mmと142mmを選べる。リアは10mmスルーアクスルにも対応が可能だが、アダプターは別売りになる。
Fulcrum Racing 4 DB(左)、モノブロックハブ(右)
付属品 ※写真にはないが15mmスルーアクスルのアダプターも付属する
■ 購入のきっかけ
Racing 4 DBはシンプルなデザインと高いリムハイトのかっこよさに魅かれて購入した。2016年モデルのRacing 5 DBのデザインも気に入ってはいたが、やはり35mmのリムハイトは圧倒的にかっこいい。また、リムハイトの高さの割には軽量であり、チューブレスレディタイヤにも対応していることも購入の決め手になった。
35mmのリムハイトとシンプルなデザインがかっこいい
■ アダプターとディスクローターの取り付け
(アダプターの取り付け)
出荷状態のRacing 4 DBは、フロントが12mmスルーアクスル(100mmエンド)、リアが12mmスルーアクスル(142mmエンド)になっている。フロントはアダプターを手で引き抜いて交換するだけで、QRや15mmスルーアクスルに対応が可能。リアも同様にアダプターを手で引き抜いて交換するのだが、135mmエンドのフレームで使う場合はフリーボディーのロックナットを薄いものに交換する必要がある。
ロックナットの交換には17mmレンチと20mmレンチを用いる。ローター側のアジャストメントリングナットを20mmレンチをかけ、フリーボディーのロックナットを17mmレンチで時計回りに回せば外れる。ロックナットは逆ネジになっており、硬く締まっているので注意が必要だ。これらのことは付属のマニュアルには載っておらず、フルクラムのホームページで確認しなければならない。ちなみにロックナットを外せば、フリーボディーの交換やDRPキットの取り付けも可能だ。
ロックナット時計回りに回せば外れる(左) ※実際の作業ではアジャストメントリングナットとレンチの間には傷つかないように布を挟む
ロックナットを交換して135mmエンドにした後に、アダプターを手ではめればQR仕様になる(右)
(ディスクローターの取り付け)
FulcrumのASF(センターロック)は、ロックリングの締め付けにスプロケ工具ではなくBB工具を用いる。シマノのTL-FC32のような薄くて柄が短い工具よりも、BBの全周を保持できるタイプの工具の方が作業しやすい。
BB工具を用いてロックリングを締め付ける
■ インプレッション
Racing 4 DBの走行中に感じた印象は以下のとおり。自転車はGIANT DEFY1 DISC、タイヤはPanaracer GRAVELKING 700×28(クリンチャー)。2016年モデルのRacing 5 DBと比較しながら評価してみたい。
比較対象のRacing 5 DB(2016)
(剛性感)
Racing 5 DBよりもリムハイトが高くなった分だけRacing 4 DBの方が硬いホイールになるだろうと考えていたが、実際に乗ってみるとそうでもなかった。縦方向はやや角の取れたマイルドな剛性感があり、横方向は自転車を大きく傾けてもヨレないだけの十分な剛性感がある。Racing 4 DBが硬いホイールであることは確かだが、Racing 5 DBと比べても体感できる剛性感の変化はわずかであり、乗り心地が極端に悪くなるような過剰な硬さは感じなかった。
(漕ぎ出し)
リムハイトの割に軽いホイールだが、軽量化されたのはリムではなくハブだと考えていたので、漕ぎ出しの軽さにはあまり期待はしていなかった。実際にはRacing 5 DBと漕ぎ出しの軽さに差はあまりなく、少なくともゼロ発進でストレスは感じない。Racing 5 DBから大きな変化はなかったが、前後で2kg近くある完成車付属のホイールからアップグレードをすれば、相当大きな変化を感じられるはずだ。
(加速・反応)
このホイールはかかりがよく、ペダルを踏み込むと即座に車体がスッと前に出る。ホイールに力の伝達ロスが小さく、狙ったスピードにすぐに到達しやすい。また、多ノッチのフリーボディーのおかげで、踏み込みの際の遊びが少ない。私が乗るDEFY1 DISCはエンデュランス系で加速や反応が得意ではないが、Rading 4 DBはこれらの弱点をだいぶ補ってくれる。この点はRacing 5 DBと同様だった。
(巡航・エアロ効果)
Racing 5 DBとの最も大きな違いを感じたのが巡行性能の高さで、30km/hを超えるスピードの維持が明らかに楽になった。30km/hを超えてからのスピードの伸びも素晴らしく、脚がよく回って気がつけば40km/hに達していることも。短時間ではあるが40km/hの維持もでき、リムハイトの高さによるエアロ効果を多少なりとも感じることはできたと思う。
(乗り心地)
エンデュランス系のDEFY1 DISC、700×28Cのタイヤと組み合わせたかぎりでは、ライド中は終始乗り心地が良くて快適。Racing 5 DBよりもリムハイトが高くなった分だけ乗り心地が悪くなると考えていたが、空気圧が同じなら乗り心地の良さもほぼ同じだった。ただ、乗り心地が同じならよく進むのは明らかにRacing 4 DBの方だ。
Racing 4 DBは低圧でももっさり感が少なく良く進むので、幅広い空気圧の設定でさまざまな乗り味を楽しめる。乗り心地と転がりの良さを両立するのは、リアの空気圧が5.5〜6barくらい(体重67kg、フロントは0.5bar程度下げる)。5bar以下にすると転がり抵抗が増すが、ふんわりとした乗り心地になり、多少は荒れた路面にも対応できる。7bar以上だと跳ねて乗り心地が悪くなりグリップ力も下がる。
(登坂)
Racing 5 DBよりもカタログ値で20gしか軽くなってないので、登坂での印象はRacing 5 DBとほとんど変わらない。短い坂ならスピードで一気に登りきれるが、低いスピードで長い坂を延々と登り続けるならもっと軽いホイールの方が良さそうだ。現行モデルのRacing 5 DBの方が、リムハイトが低い分だけ軽いので登坂に向いていると思う。
(コーナリング)
このホイールの横の硬さを最も感じる瞬間がコーナリングだ。自転車を急激に大きく傾けても反応がワンテンポ遅れることはなく、キレのあるコーナリングを楽しめる。Racing 5 DBよりもさらにロスを感じにくなったような気がするが、両者に大きな差はないと思う。
(ダンシング)
Racing 4 DBの横剛性の高さなら、ダンシングでホイールがヨレてロスすることはないと思う。ただ、油圧用デュアルコントロールレバーのST-RS505が重いため、ダンシングで左右に素早く切り返すのが難しく、ダンシングではこのホイールのメリットをあまり感じ取れていない。
(ブレーキング)
Racing 5 DBと同様に、油圧式ディスクブレーキの高い制動力でもまったく問題はない。DEFY1 DISCは前後QR仕様だが、強くブレーキをかけてもホイールがずれたことはない。ただ、ホイールを斜めに取り付けたりクイックリリースレバーの締め付け加減を間違えたりすると、パッドとローターが干渉してシャリシャリと音鳴りすることがある。これはホイールではなくフレームの規格の問題だが、パッドとローターのクリアランスが均等になるようにホイールを取り付ければ、快適にブレーキ操作ができる。
(横風の影響)
川の土手などで横風に煽られることはあるが、横風の影響はリムハイトが30mmのホイールとあまり変わらないような気がした。よほど強い横風でも吹かないかぎり、自転車が大きく振られることはなく、挙動を安定させることは十分に可能だと感じた。
(ラチェット音)
粘度の低いグリスが多めに入っており、使用開始直後はラチェット音がほとんどしないが、グリスが馴染んでくるとラチェット音が大きくなる。だが、爆音というほど大きな音ではなく、足を止めれば心地よいラチェット音を楽しめる。
■ 防水性・防塵性
回転性能を重視しているからか、Racing 5 DBと同様にハブには隙間が多い。ベアリングの防塵性はこれでも十分だが、防水性にはほとんど期待できない。アジャストメントリングナットやガスケット(金属製のフタ)、シールドベアリング非接触性のシールの隙間から水が入ると、ベアリングにサビが発生する可能性がある。ホイールを洗う際には平置きにしてハブに水がかからないように注意し、雨天走行後はハブへの浸水をチェックしたほうがいいと思う。
現在は別売りのDRP(Dirt Road Protection)キットを使うことで、ベアリングの防水性・防塵性を高めることが可能。ゴム製のリップがついたガスケットに交換し、フリーボディーにゴム製のリップを挿入すれば、ベアリングに水や異物の侵入を防げるようになる。Racing ZERO DBのようなハイエンドモデルにはDRPキットが同梱されるが、できれば他のグレードにも最初から付けて欲しかった。
洗車の際にハブに水がかかるとベアリングがサビる(左) ※画像はRacing 5 DB(2016)
防水性・防塵性を高める”DRPキット” (右)
■ メンテナンス性
Racing 5 DBと同様に分解・メンテナンスがたやすい。2.5mmアーレンキーでアジャストメントリングナットを外せば、シャフトを引き抜いてベアリングやフリーボディーのグリスアップができる。ただ、ハブに水がかかったり何かトラブルが生じたりしないかぎりは、頻繁にメンテナンスを行う必要はないと思う。
ユーザーの手でかんたんに分解・メンテナンスができる
■ 耐久性
耐久性の評価にはもっと時間が必要だが、2016年モデルのRading 5 DBは約2年間これといったトラブルもなく使うことができた。目立ったフレは見られず、フリーボディーにはスプロケの食い込みがあるが着脱は可能で、ベアリングに水がかからないように扱えばスムーズな回転が持続できた。Racing 4 DBも同様の耐久性の高さを期待したい。
しばらくするとフリーボディーにスプロケが食い込むがスプロケの着脱は可能 ※画像はRacing 5 DB(2016)
■ デザイン性
リムにブレーキ面がないので、ブラックのタイヤをはめれば、実際のリムハイトよりも高く見えてかっこいい。デザインはFulcrumのロゴをブラックにし、4のロゴに差し色のレッドを使ったシンプルなもの。リムハイトが大きくなった分だけデカールも大きくなるが、デザインがシンプルなのでどの自転車にも合わせやすいと思う。
3Mのスコッチカル(いわゆるカッティングシート)をデカールの上から貼れば、OEM版のRacing 400 DBのようなフレームに合わせたカラーコーディネートも可能。デザインがシンプルなので、スコッチカルを使ったカスタムもかんたんにできる。
デザインがシンプルなのでスコッチカルでのカスタムもたやすい(左、中央)、Racing 5 DB(2016)との比較(右)
■ 総評
Racing 4 DBはリムハイトが高い分だけ剛性が高くて乗り心地が悪いイメージがあったが、実際には走行性能と乗り心地のバランスに優れており、クセのない乗り味で扱いやすいホイールだと感じた。硬いホイールであることは確かだが、加速や巡行に必要な硬さを確保しつつ、ある程度の乗り心地の良さも残しているという印象を受けた。また、タイヤの空気圧を下げれば未舗装路にもある程度は対応でき、700×28Cのタイヤならオールラウンドに楽しめそうな気がした。
最大のメリットはリムハイトの高さを生かした高速巡航で、2016年モデルのRacing 5 DBからのアップグレードをはっきりと実感できた。加速や反応に優れ、コーナリングやダンシングやブレーキでロスがないもメリット。ゼロ発進や登坂では性能の向上を感じにくかったが、リムハイトの高さの割には軽量なのでストレスにならない。最大のデメリットは防水性のなさだが、DRPキットを取り付けることによって対策が可能になった。リムハイトが35mmと高めだが、横風のデメリットはそんなに感じなかった。
また、リムハイトの高さとシンプルなデザインは素晴らしく、スコッチカルでのカラーコーディネートのカスタムもたやすい。ずっと足回りのカラーコーディネートをしたいと思っていたので、このホイールで実現できたのはとてもうれしかった。Racing 4 DBは見た目と性能の両方に満足できたので良い買い物だった。今後はチューブレスレディタイヤに交換したり、耐久性で何かわかったりしたら投稿したい。
Racing 4 DBを取り付けたGIANT DEDY1 DISC
価格評価→★★★★☆ (コストパフォーマンスが優れている)
評 価→★★★★★ (見た目と性能は満足。DRPキットで防水対策できる点でRacing 5 DBよりも星1つ多い評価)
<オプション>
年 式→2018年
カタログ重量→1690g