購入価格 ¥3,700+税(衝動買い)
都内の自転車ショップ巡り中に、思わぬところでお目当ての製品を見つけてしまった時の高揚感に任せ、衝動的に購入。
独特のセンスで、なかなか侮れない製品を次々生み出しているKnog製品だったので、安心して軽い気持ちで購入したのですが……。
本体は、掌に収まるサイズで、
ポケットにも簡単に入る。
なお、私が自転車に乗るのは、主にブルベなどのロングライドになりますので、その現場でどう使えるか、が主な評価ポイントになります。
以下はその観点で見ていただければと思います。
●外観
18種類の機能をポケットに納める、というコンセプトで開発されたマルチツールです。
Knog単体での開発製品ではなく、TACTICAというブランドとのコラボ製品になります。
基本となるツールは、TACTICAがクラウドファンドで資金調達して開発したマルチツール、TACTICA M100で、そのM100にタイヤレバーの機能を持つビット収納用パーツ等を追加する形で製品化されています。
本体部分はTACTICA製の、
M100というマルチツールと全く同じ。
Knog FANGで追加されたタイヤレバー。
ビット2つをスロットに収められる。
M100本体を左右から挟むように、
磁石で固定して収納する。
外観は、メカ心をくすぐられる感じのデザインです。
18種類の機能を持つ製品が、手のひらにすっぽり収まるサイズにまとまっている、と考えると、妙に「欲しいな」と思わせるオーラがあるというか何というか……。
とにかく、独特のデザインセンスが光る製品だというのは、間違いなさそうです。
●使用感
(1)ツール構成
ツール構成は以下の通りです。
・ボルトレンチ:5mm、8mm、11mm、13mm、14mm
(それぞれ3/16"、5/16"、3/8"、7/16"、9/16"と互換)
・付替えビット:4mm、5mm、6mm(以上、六角)、プラスドライバー
・定規:センチメートル、インチの目盛あり
・テープカッター(箱開封用)
・栓抜き
・タイヤレバー:2本
以上、インチボルト用レンチ機能も含めて、18種構成となります(定規は1機能とカウント)。
重量については、カタログ重量は76gとなっていますが、実測だと約80gになります。
ところで、海外製のこうしたマルチツールには、かなり高率で「栓抜き」がついていますが、日本では既にペットボトル飲料が普及しているため、出番はないと思います。
この栓抜きを切り捨てれば、もう少しコンパクトかつ軽量に収まったと思われますが、水のようにビールを飲む欧州圏のマーケットを考えると、外せないのかもしれません。
(2)使い勝手
室内メンテついでに、軽く自転車各部に使ってみました。
まず、付替えビットですが、自転車でよく使う4~6mmの六角レンチとプラスドライバーという、かなり切り詰めた構成です。
これは最近、特に東京~大阪キャノンボール等のエクストリームライドで、所持品を極限まで切り詰めたミニマム構成とされる場合のビット工具の構成とほぼ同じなので、簡易メンテであれば問題無いと思われます。
ただし、数日かけて走る(旅する)ツーリングや、長距離ブルベでは物足りなくなる事態も出てくるでしょう。
そこを割り切って使う前提の装備になりそうです。
ビットを使う場合、
先端の磁石付ソケットに装着するか……
ハイトルク用ソケットに装着して使う。
そして、注意しておかなければならないのは、ツールの構造が制限となり、「狭い隙間に差し込んだ作業」がまず不可能である事です。
通常の六角レンチや、折り畳み式マルチツールであれば、数センチの長さがあるので、隙間や穴の奥のネジにも届くのに、このツールでは無理、という場面が発生する可能性があります(特に、キャリパーブレーキの取付ボルトなど)。
例えば、ここまでしっかり、
レンチの先端がはまり込む場所では、
ビットが短すぎて届かない。
ちなみに、後輪ブレーキの取付ボルト。
私の手元の車体では、サドルの上げ下げ、ステムの増し締め程度の作業なら問題ないですが、ブレーキの片効き調整などには使えませんでした。
また、ボルトレンチの方も、ツールをボルトの頭に被せて回す必要があるため、狭い隙間にあるボルトやナットを回したくても、フレームなどと干渉して使えない部分が多くあります。
実際、走行中によく調節する場所である
前フェンダーの固定ナットで試したが、
フレームに干渉して使えない。
自転車用に持ち歩くとしても、以上を割り切る必要があり、正直、エクストリームライド用のミニマム構成としても、旅を目的としたツーリング用としても、中途半端になるかと思います。
さらに書いておきますと、ツール付属のタイヤレバーは通常のレバーと比べて極めて分厚く、ナローリム+ロードタイヤ(23C)の組み合わせでは、ビードを掴むのが非常に困難でした。
シュワルベのタイヤレバーと比較。
厚さ、形状にこれだけの差がある。
また、レバーにスポークを引っ掛けるスリット等がないため、ビードを掴んで起こしたら、そのまま一周まわしてタイヤゴムを外すような使い方になります(最初の一押しに、物凄く力が必要)。
これ、メーカー側のデモ動画のように、MTBのHEリムで使うと、もう少し使いやすくなるのでしょうか?
とりあえず、私としてはタイヤレバーもかなり荒削りで、人を選ぶ物だと感じました。
(3)ビット収納時の注意
マニュアル等に記載がない項目ですが、見事に「やらかした」ので、注意喚起含めて記載しておきます。
このツールのビット収納スロットは、タイヤレバー裏と、本体の峰?(背?)の位置に切られており、両者に2個ずつ重ねて収納する事で、FANGの基本構成として付属してくる4本のビットは全て収納できます。
しかし、本体側のスロットの奥側に、プラスドライバーのビットを納めると、取り出せなくなります。
本体のスロット奥に、
プラスドライバーのビットが
はまりこんだ状態。
本体側スロットは、ビットの飛散を防ぐため、奥に磁石が内蔵されています。
この磁石が強すぎて、普通にツールを傾けたり、軽く振ったりする程度ではビットが滑り出てきません。
手のひら等に向けて、強く叩き付けるように振れば出て来ますが、勢いでビットが飛び散ってしまう事もよくあります。
室内ならともかく、屋外でそんな使い方をしたいとは思えません(ビットが飛び散って行方不明になる未来しか見えない)。
そして、プラスドライバーのビットを本体の奥側に入れてしまうと、磁石に貼り付いたまま外れなくなり、永遠に取り出せなくなります。
渾身の力を込めてツールを振り回しても、六角ツールより削りが入って軽量なためか、磁石に貼り付いたまま剥がれず、ピクリとも動きません。
こんな狭い隙間に突っ込めるのは針状の物に限られますが、ビット側にひっかけて引き出すための突起などがないので、結局、取り出すことはできません。
このビットはもう、永遠に内蔵されたままになるでしょう。
この状態になったのが、開封してから10分以内、ツール構成の全体写真さえ撮っていない段階でした。
物凄く萎えた気分になったのは、言うまでもありません。
まあ、自転車で使う分には、プラスドライバーの出番はほとんどないので、無い物として考えても良いのですがね……。
こんな形で基本構成の機能が使えなくなるとか、どうなってんだと思いましたよ、ホントに。
●まとめ
独特のデザインセンスで知られるKnogが、クラウドファンドで高評価だったTACTICAのマルチツールとコラボして、自転車用として生み出した製品です。
しかし、上記のレビューの通り、自転車用として考えるとかなり荒削りな製品であり、個人的には、持ち歩いたら便利で助かる、というイメージを持てませんでした。
全体的に、母体となるTACTICA M100に、無理矢理構造を合わせて機能を突っ込んだ、という印象が強く、Knog製品らしい、「良くこのデザインにまとたなぁ~」と感心させられる部分が希薄です。
なお、TACTICA M100は良い製品で、DIYの現場で持っていたら、補助ツールとして、とても便利そうだ、という印象があります。
ただ、自転車用のツールとは基本コンセプトが異なるため、そのまま流用しても中途半端です。
これを「自転車で使う」という前提でリファインしたら、もっと良くなったのではないか、というのが個人的な感想です。
以上、全体的にネガティブな感じになってしまいましたが、個人的にネガティブなレビューを上げるのはあまり本意ではないため、最後にフォローというわけでもないですが、価格面について追記しておきます。
TACTICA M100は、国内通販価格が5,000~6,500円で、海外通販価格が39.95ドルです(2019年2月6日現在、約4,400円。ちなみに、Fangの定価も39.95ドルらしい)。
この製品の国内価格は、M100にタイヤレバーなどを追加して、希望小売価格、3,700円+税です。
この価格設定は、かなり良心的というか、現状では海外通販より確実に安価であるため、正直、国内購入が超お買い得だと思います。
使ってみたいと考えている方は、ぜひお手に取ってみて下さい。
価格評価→★★★★★(←母体となるマルチツールに、さらに機能を追加して安価に設定しているのは、お買い得価格だと思う)
評 価→★★☆☆☆(←全体的に荒削りで、自転車用としては少し残念。なお、母体となるツールは、DIYでは便利そう)
<オプション>
カタログ重量→ 76g(実測重量 約80g)