レンタル価格・・・3日で229ドル(約25000円)+保険30ドル(約3300円)
馬鹿野郎!口を開けば「どこのブランド」だの「値段がどうこう」だのそんなことばっかり言うやつばっかり出てきやがって!
自転車の本当の価値ってのはそんなんじゃないだろ!
その自転車でどこを誰と走るかとか、そういうことだろ!
こんな偉そうな言い方をしているが、本当はみんな、初めて自転車に乗ったときには、知っていたはずなんだ。
どうやらここは俺の体験談を通して、本当に自転車を楽しむというのはどういうことなのか、初心を取り戻してもらわなければならない流れのようだな・・・
あれは俺が親戚の結婚式でハワイに行くことになった、去年の10月のことだ。
1年間の総決算である英彦山CTTが台風の直撃により中止になって脚を持て余していた俺は、せっかくなので少し余分に滞在して、向こうで自転車に乗ることを画策していた。
で、選択肢が二つ。
1.自分の自転車を持っていく
2.現地でレンタサイクル
飛行機輪行、海外旅行ともに経験の乏しい俺は、経験豊富なフォロワーさんに向けてアドバイスを乞うのだった。
ギュギュギュギューーーン!
TwitterのCPUが高速で稼働し、様々なアドバイスが俺に届いた。
レンタルを勧める意見としては、
1.「輪行の際、投げられるなどして自転車を壊される危険がある」
2.「荷物が増える」
3.「ホテルの部屋に自転車を持ち込めないとすると、何かと面倒」
一方、自分の自転車を持ち込むメリットは言わずもがなではあるが、
4.「ポジションの出た、慣れ親しんだ自転車でライドを楽しめる」
5.「レンタルするよりも安い」
ということ。
最終的に、現地でレンタルすることにした。
最大の理由は、1.「輪行の際、投げられるなどして自転車を壊される危険がある」である。
これは実際にこういう目に遭った方からのアドバイスもあり、最後まで拭うことのできない大きな不安となった。
3.「ホテルの部屋に自転車を持ち込めないとすると、何かと面倒」については、後で解決することになる。
ホテルにメールで確認したところ、「部屋に自転車を持ち込んでもいいよ!」という返事をもらえたので、レンタルした自転車を毎日部屋に持って上がって保管した。
となると、問題は、どこで借りるかである。
(この時点では、まだホテルに確認をとっておらず、夜は自転車をお店で預かってもらうことが視野に入っていたので)
GOOGLEマップで宿泊するホテルを検索し、その近くでレンタル自転車店を検索した。
すると、道を挟んで真向い、距離にして30メートルほどのところに「Bikeadelic」というスポーツバイクレンタル店があったという、嘘のような本当のお話。
【出国前、事前交渉】
早速、メールで交渉開始。
日本語によるサービスは行っていない、とのことなので、つたない英語でメールする。
1.I plan to borrow more than two days. I can not keep it in the hotel. Can you leave it in the store?
(2日間以上借りる予定です。ホテルの部屋に置いておけませんが、盗難が心配です。お店に置いておくことはできますか?)
2.Will I need a reservation? Or can you borrow immediately on the day?
(予約が必要ですか?それとも、当日すぐに借りられますか?)
3.Can you accommodate a little adjustment, such as stem replacement?
(ステムの交換など、少しの調整に応じてもらえますか?)
返答は、
1→お店においておけるよ!
もちろん、契約期間内であれば、持ったままでいてもいいよ!
ホテルの部屋においておけるかは、泊まるホテルに確認してね!
2→もちろん予約できるし、予約なしの当日飛び込みでもいいよ!
でも、当日飛び込みは、希望する車種やサイズがないかもしれないので、予約をオススメするよ!
3→なんでもパーツ交換していいよ!
ステム、シートポスト、ペダルはある程度ウチにもあるよ!
細かいサイズ指定があるなら自分で持ってきてね!
とくに交換割増料金などはないよ!
あと、ボトルケージとサドルバッグ(CO2ボンベ、アーレンキーセット在中)はついてるよ!
(以上、意訳)
という、デニス(仮名)からの陽気なメールが届いた。
「Bikeadelic」では、
基本的なロードバイク → フラットバーロードバイク「Trek FX2」
スポーツロードバイク → 「Trek CrossRip 3」
プロロードバイク → 「Trek Domane SL6」
見ればすぐわかることではあるが、「基本的なロードバイク」と言いながらクロスバイクであることは注意が必要である。
また、「Trek CrossRip 3」は、32Cのタイヤを履いているとのことであったので除外。
ということで「Trek Domane SL6」であっさりと決意は固まった。
「Trek Domane SL6」のレンタル料は、5時間65ドル、24時間99ドル、5日以上349ドル~、ということであった。
おそらく、私の乗り方からすると、1日あたり5時間の契約×3日、でよさそう。
しかしそうすると、「毎日契約を切っておきながら、翌日も同じバイクを、同じセッティングのまま取り置いてもらうことができるのか?」という点が問題になる。
この点もメールで問い合わせると、
「翌日までに他の客がそのバイクを指名しなければできるよ。
でも、他の客がそのバイクを指名したらその客にそのバイクを渡してしまうから、1日ごとに契約し直すのはちょっとリスキーで面倒かもしれないよ」
という返事であった。
もっともだ、と思ったので、ちょっと割高にはなるが「24時間99ドル×3日間」のプランで借りることにした。
後述するが、これについては嬉しい展開が適用されることになる。
なお、これは後になってわかったことだが、任意ではあるが別料金1日10ドルで保険をかけられる。
これは「常識的な範囲での事故や車体の傷」をカバーするものであり、これがないと、例えば「撮影中に自転車を倒してしまいフレームに傷を入れた」などで「買い取り」の扱いになる可能性があるとのこと。
慣れない旅先でのこと、不測の事態は考慮に入れておくべきだろう。
個人的には、これに入らずにレンタルバイクを乗り回すのは、非常にリスキーであると感じた。
あくまで「常識的な範囲での事故や車体の傷」が範囲内であって、本当にぶっ壊したとか、盗難までは保証されないので、注意が必要なことは間違いない。
【現地到着】
日本はハワイよりも19時間進んでいるので、「昼に日本を出発し、普段より短い夜を飛行機の中で過ごしたら、朝のハワイにつく」
何を言っているのか、わからねーと思うが(以下略)
どうかな?眠いかな?1日目に自転車を借りて走り回る体力的余裕があるかな?と思っていた。
しかし、ここで1日目を寝ることに費やしてしまうと、もったいないのはもちろん、夜に眠れなくなり、2日目に時差ボケを引きずるになるのではないか?
そう考え、1日目はいきなり遠くに出かけたり本格的なヒルクライムをしたりするというよりも、
右側通行に慣れたり、土地勘を得たりすることを目的に、イージーライドすることにした。
そう決めた俺はホテルの部屋に荷物を置くと、意気揚々と「Bikeadelic」の門を叩いたのであった。
俺「予約の小林つよしです!」
その瞬間、店の奥で腕立て伏せをしていた筋骨隆々の謎の初老のマッチョの目が鋭く光り、目にもとまらぬスピードで俺の方に歩み寄ってきた。
謎の初老のマッチョ「ツヨーシ!君のバイクはバッチリ整備して君を待っていたよ!ほら、約束のTrek Domane SL 6 (54cm)だ!」
そこには、あのファビアン・カンチェラーラも駆ったという「Trek Domane SL 6」の姿があった。
真っ赤なフレームは好みである。
俺は自転車の回りをぐるりと回り、細部までを見渡した。
俺「ホイールは何ですか?」
謎の初老のマッチョ「H PLUS SONです」
俺「鉄下駄ですね」
ドゴォォォン!
その瞬間、謎の初老のマッチョの上腕二頭筋が荒々しく隆起し、たまたまその場にあった岩のようなモンキーレンチで俺を吹っ飛ばしてこう言ったんだ(英語で)。
謎の初老のマッチョ「馬鹿野郎!軽量性とか剛性とかまっすぐ走れないとか己の失敗を機材のせいにばかりしている弱腰野郎め!たとえR500だろうがH PLUS SONだろうが、魂をこめて踏めばそれがライトウェイトにでもBORAにでもなるんだよ!」
その瞬間、俺と謎の初老のマッチョは国籍と言葉の壁を超えて完全に意気投合し、熱い抱擁を交わし感動の涙にむせぶのであった。
そう、このマッチョこそ、あのメールの主、デニス(仮名)だったのである。
その後、事務手続きとか、先述の保険の話とか、シートポストとサドルの交換とか、GARMINの取り付けとか、諸々の自転車の初期設定とか、オススメコースに関する質問(ヒルクライムがしたい旨を伝えると「タンタラスの丘」や「ヌウアヌ・パリ展望台」などを教えてくれた)を経て(全部で30分くらい)、無事ハワイを走り始めることができた。
ライドの内容やコースの話などは別レビューに譲る。
【[Cycling Courses] ハワイ オアフ島 (タンタラスの丘~ヌウアヌ・パリ展望台~ハナウマ・ベイ)】
(→
https://cbnanashi.net/cycle/modules/newbb/viewtopic.php?topic_id=7386&forum=124&post_id=28157#forumpost28157)
【タンタラスの丘 (ハワイ・オアフ島) 】
(→
https://cbnanashi.net/cycle/modules/myalbum/photo.php?lid=1665)
【Trek Domane SL 6 の走り】
重い。まったりしている。
走りが軽く重心が高い自転車を「▽の上に乗っている感じ」、その逆を「△の上に乗っている感じ」と私は表現するのだが、Domaneはまさに後者。
パワーメーターは装着していず、コースも初見であるため、精度はそれなりのインプレではあるけれども、普段なら5%の坂を15km/hで走っている感覚で、13km/hしか出ていない、といったところである。
体感としては、結構な差があった。全くもって、「上れない自転車」である。
ただ、「H PLUS SON」という470g(wiggle情報)のリムに28Cのタイヤを履いていたため、上らないのは致し方ないといえるかもしれない。
一方で、日本に比べるとハワイの道は総じて舗装状況が悪い。山の中はもちろんのこと、都市部でさえ、日本であれば「酷道」と揶揄されるであろうレベルの道が頻出する。
しかも土地勘がない不慣れな道を走るとあって、先述の「重い。まったりしている。」特性は、心強いものであった。
【返却・支払い】
毎日ホテルの部屋で保管し、予定通り3日間乗って返却。
料金プランによると、24時間まで99ドル×3日間、ということになると思うのだが、
デニス「ツヨーシ!君はこのハワイまで来てヒルクライムに明け暮れる坂バカだから、3日で229ドル(保険と税は別)でいいよ!」
と言うのである。
229という数字がどんな計算で出されたのか不明だが、提示されていた料金プランよりも明らかに割安であったので、文句のあろうはずがない。
言われるがままに支払いを済ませる。VISAなどの各種カード払いが可能だ。
当たり前だが、レシートもちゃんとデニスが言うその数字になっていた。
あとは、パーツ交換していた私の私物を回収して、あっさりと手続き終了である。
さようなら、Trek Domane SL 6。
さようなら、Bikeadelic。
楽しい思い出をありがとう。
【もし次回、ハワイ旅行するなら・・・】
1.借りたいバイクから逆算してお店を選んで
2.そのお店に近いホテルに電話等で連絡、「自転車を部屋に持ち込めるか」
という順序で計画を立てるかな。
結果的に「Trek Domane SL 6」で楽しいライドができたが、もし「Bikeadelic Hawaii」の隣に
エモンダなり他の軽量バイクを扱っている店があったら、そっちを選んだかもしれない。
価格評価→★★☆☆☆(3日で保険・税込み約3万円。高価っちゃあ高価だ)
評 価→★★★☆☆(意のままに操れるマイバイクであればさらに素晴らしかったとは思うけど、利便性のメリットがその不満を上回った。店員さんがトライアスロンもするというかなりの自転車乗りで、アドバイスがいちいち的確だったのもポイント高い。あとは、重量ツーリングモデルだけでなく、軽量ヒルクライムモデルも選べるようになると嬉しい。)