吉本司・田中忠良『ロードバイク本音のホイール論』洋泉社、2017年5月初版、定価1800円+税
図書館で借用した。読んでいるうち、こんな声が聞こえてきた。
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ヨシモト 私はヨシモト。フリーのサイクルジャーナリストだ。フィーリングに基づくインプレッション(印象)の専門家だ。
タナカ 私はタナカ。シマノでホイール開発を担当していたエンジニアです。
ヨ タナカさん、二人の豊富な知識と経験をもとにホイールの本を執筆しよう。
タ いいですよ。
ヨ 本の構成としてはまず基礎知識からだな。ホイールの発明から近代化、手組から完組の流れを紹介してから私の豊富なホイールインプレ経験をもとにしたホイール評価軸を紹介しよう。第1章として47頁が必要だな。
タ 次は私の番ですね。ホイールの作りかたをリムを中心に紹介します。なんといってもホイールはリムが大きいですからね。アルミリムとカーボンリムそれぞれの作りかたを紹介しながら素材強度など特性の差違を工学的に明らかにします。第2章として25頁が必要です。
ヨ なるほどね。
タ 次も私の番ですね。ホイールのウソホントとして、私のエンジニアとしての知識と経験をもとにホイールの正体に迫ります。工学的にリムハイトと剛性に深い関係があること、軽量なリムのメリットは工学的にはほとんどないこと、高級ホイールより安価なホイールの方がよく進む可能性があること。スポークについてはテンションやパターンのこと、ハブやタイヤについてのことなどです。本書の主要部分です。第3章として61頁が必要です。
ヨ なるほどね。
タ 次も私の番ですね。より良いホイールに出会うための条件を整理します。工学的にはアルミではなくカーボンホイールを選択すべきです。みんなが気になるゴキソホイールの秘密にも迫りましょう。第4章として27頁が必要です。
ヨ なるほどね。
タ ヨシモトさん、さっきからセリフが少ないですよ。
ヨ わかっている。美味しいところを持って行こうと、脚をためておいたのだ。最後は私の豊富な経験をもとにした「ホイールを使いこなす」だ。クイックの締め方や毎日のメンテなど基本を紹介しよう。基本は重要だからな。ホイールはタイヤがないと始まらないから、タイヤについても紹介しておこう。空気圧も大切だぞ。
タ 同感です。
ヨ ここには私の豊富なホイールインプレ経験をもとにしたメーカー紹介も入れよう。カンパ、マビック、シマノ。その他のメーカーも紹介しておいて、しかし業界的な遠慮があるからサクラサイクリングに触れられないのがつらいところだな。
タ 同感です(泣)
ヨ 第5章として32頁が必要だな。
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工学的な知識がない私でも、剛性の考え方や軽量化の意義など、なかなか面白かった。
ホイール選定の参考にしたいとも考えたが、その予定がないのは残念なところ。
しかし文字が多い。そして「工学的な」評価の裏付けとなる数値の紹介が少なく、図表はほとんどない。このあたり編集やグラフィックデザインに一工夫欲しいところ。
自転車雑誌なら「総力特集 完全図解ロードバイクホイールの秘密に迫る」などと題して、もっとわかりやすくまとめそうである。
価格評価→-(借用なので評価なし)
評 価→★★★☆☆(なかなか面白かった)