購入価格 ¥1600+税
「きんた」という愛称の一人の女性の自転車による日本一周紀行です。副題は「よく泣いてよく笑った700日自転車旅日記」。
>>引用
なぜ、
自転車で
日本一周しようと
思ったのか
<<引用終
大学時代に経験した初めて自転車旅と、その時に感銘を受けた一軒の宿と将来の夢への芽生え。老人保健施設に就職し、現場でハードな日々を送りながらも心を捉えて離さない将来への思いが、日本一周の自転車旅に衝き動かし、30歳を前に仕事を辞め、旅立つ・・・
2ページにわたって語られる旅の動機からは、真面目に働き、生きてきた著者の思いが伝わってきます。惹きつけられます。
凡そ「日本一周」という営為に、標準的な様式などというものは存在せず、移動手段の如何を問わず、「日本一周」はそれぞれ、実行した人のオリジナルであり、それぞれが価値を持ちます。この著者の旅も、それを強く感じさせます。2007年10月から2009年9月まで、岡山を出発して四国のお遍路から始まり、気が付けばキャンプ場で長居してスタッフとしてしばらく仕事を手伝ったり、山小屋で本格的に短期就労したり、訳あってフランスに行ったり、などを挟み、2年をかけて日本各地をぐるっと回っています。その途上で遭遇した悪夢のような惨憺たる経験や、かけがえのない経験を丁寧に描き、率直な心情も吐露します。石田ゆうすけ氏の紀行もそうですが、人とのかかわりを通して自己との対話を繰り返していく旅の経験、というのは、それが他人のものであっても実に興味深く、面白いなあ、と、この著作でも強く思いました。そして読後、どこが、ということではなく、旅の全体像が明瞭な印象として残ります。
*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*
装備関係の記述が詳細かつ親切で、これは自転車旅行を志す女性だけではなく、だれが読んでも大いに参考になるのではないかと思います。使った自転車や、ウエア、そして女性のテント泊のノウハウなどなど。この女性は決して自転車マニアという類の人ではないので、特に、これから自転車旅行を始める、自転車旅行がしてみたい、という人にとって、あまりにも実践的な最良の参考書になっているのではないかと感じました。
A5サイズの分厚いソフトカバー本。350ページを超えます。
掲載写真が600枚はあるのでは?という構成。嵩増しかというと全くそうではなく、文章もしっかり押し込まれていて原稿用紙で600枚レベルかと想像されます。圧倒的。各ページ欄外に必ずある切手よりも小さい写真は、私には老眼鏡よりも虫眼鏡が便利でした。画質も良いとは言えませんが、ひとつひとつが意味のある写真であり、文章と共にじっくり見て楽しめます。
*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*
結論・・・市井の一女性による超大作。じっくり読んで色々考えてみるのもよいものだな、とおもいました。人生を引き算で考え始めるような年代の自分に対しても、いくつもの示唆を与えてくれる良書でした。それにしても、これだけの内容、ページ数の本を仕上げるのは大変だったのではないかと思います。著者ご本人と校正担当者のご苦労が推し量られます。
価格評価→★★★★★
評 価→★★★★★
年 式→2013年7月10日初版発行
・・・実は私、この著者にお会いしています。2010年9月18日(土)、長野県のJR八千穂駅から八ヶ岳を挟んで反対側のJR茅野駅まで麦草峠を越えて往復して峠の麦草ヒュッテで往復2回の昼食を食べるという無平坦路サイクリング(笑)をやった時に、偶々、峠の麦草ヒュッテで働いていらしたんですね。この著者の旅のゴールから一年後、ということになります。
https://cbnanashi.net/cycle/modules/newbb/viewtopic.php?topic_id=7332&forum=124#forumpost12436この山小屋は、日本一周の途中で、著者が短期就労したその場所です。往路、復路ともに少しお話させていただいたのですが、とても元気で感じのいい方でした。その時は、自転車が好きな人なんだなあ、とは思ったものの、特に自転車に関する濃い話(笑)はしませんでした。
・・・この日、「きんた」さんが繕っていた麦草ヒュッテの段ボール模型
まさか自転車で日本一周をした方だったとは。後日、麦草ヒュッテに問合せて教えていただいたのですが、もう少し話を聞きいておけばよかったなー!と思った次第。
で、6年後の2016年秋、八ヶ岳の山をかみさんと歩いた時に再び麦草ヒュッテに立ち寄り、何年か前に自転車でお邪魔した時に、自転車で日本一周した女性がこちらで働いておられたのですが、今どうされてるんですかねぇ?と尋ねたら、
「はいはい、彼女ね。今は結婚して島根にいますよ。それから日本一周の本がこれ」
というわけでその時に買ったのがこの本。本を書いていたとは!
どうやら彼女は今、二人のお子さんのお母さんになられているようです。
おしあわせに。