購入価格: ¥3,767(税込)
標準価格: ¥3,964(税込)
『かんたんな変速調整と高い変速性能を同時に実現。すべてにおいてFD-5800を上回る』
■ FD-5801とは
SHIMANO 105 FD-5801は、105 5800シリーズのフロントディレイラー FD-5800をマイナーチェンジしたモデルだ。ULTEGRA R8000シリーズと同時に発表された。DURA-ACE FD-R9100、ULTEGRA FD-R8000の下位互換モデルであり、ギアピッチが広くなった新型のクランクにも対応できるが、従来のリア11速用のクランクにも対応している。
FD-5801は軽快なフロント変速を実現するためにトグル機構(倍力機構)が採用されている。このことによって、コンパクトな外観になったと同時に、幅の広いタイヤと干渉しにくくなった。コンバーターも廃止され、取り付けにケーブルルートの判定工具 TL-FD68を使う必要はない。ケーブルアジャスターは本体に内蔵され、適正なケーブルの張りをインジケーターでチェックできるようになった。
新型のクランクも同時に交換することで、O.L.D 135mm、チェーンステー長が410mmまでのフレームにも対応でき、インナー×ートップでチェーンとアウターギアの干渉を回避することができる。ちなみに、105グレードに相当する新型クランクはFC-RS510であり、これもULTEGRA R8000シリーズと同時に発表された。もちろん、FC-5800と組み合わせて使うことも可能だ。
SHIMANO 105 FD-5801-F
■ 購入のきっかけ
FD-5800からFD-5801に交換するにあたって期待したものは、メインレバーの軽くスムーズな操作とかんたんな変速調整だ。FD-5800でも満足してはいたが、メインレバーの軽い操作とスムーズな変速動作を両立するには、シビアな変速調整が必要だった。具体的にはトップ側調整ボルトを最も緩めて、ケーブルの張りを弱めにするのだが、この状態ではアウターギアにチェーンがスムーズにかかりにくく、アウター×トップでチェーンとチェーンガイド外プレートが干渉しやすくなる。これらを回避するためにはシビアでピンポイントな調整が必要だった。
新型のFD-R9100なら、さまざまなフレーム形状に対応できる上に調整範囲も大きく、シビアな変速調整をせずに済むのではないかと私は考えた。FD-R9100を購入しようか迷っているときに、タイミングよくFD-5801がリリースされたので、すぐにショップに電話して取り寄せてもらった。しかも、運よく発表の翌週には手にすることができた。
FD-5800からFD-5801に交換
■ 取り付けと変速調整
FD-5801の取り付けと変速調整は、FD-5800よりもずっとかんたんになり、作業時間も大幅に短くなった。従来の変速調整の方法とは少々異なるが、マニュアルどおりに作業すれば、ほぼ確実に軽くスムーズな操作感を実現できる。このことに大きく貢献するのが、適正なケーブルの張りを目視で確認できる”インジケーター”だ。理想の変速調整を求めてインラインアジャスターでケーブルの張りに気を使う必要がなくなり、ケーブルの張りに大きな影響を与えることなく可動範囲だけを調整できる。取り付けと変速調整のポイントなどは以下のとおりだ。
○用意するもの
FD-5800からFD-5801に交換する場合、ケーブルのルート(コンバーターのオン/オフ)によっては、ケーブルの長さが足りなくなる可能性がある。だから、シフトインナーケーブルは新品を用意しておいたほうがいいだろう。また、各調整ボルトを回す際に、アーレンキーはボールポイントレンチではないタイプの方が作業しやすい。
○取り付け
フロントディレイラーの直付け台座への取り付けの手順は、FD-5800とほとんど変わらない。ただ、FD-5801のほうが直付け台座への取り付け部の幅が少し小さくなったので、チェーンガイド外プレートを内側に傾けやすくなり、サポートボルトを締めることによって、確実にアウターギアとチェーンガイド外プレートを平行にセットできる。
サポートボルトを締めて、アウターギアとチェーンガイド外プレートを平行にする
○ケーブルの固定
FD-5801に搭載されているケーブル調整ボルトは、従来のインラインアジャスターよりも調整範囲が小さいため、大きくたるんだケーブルを張ることはできない。だから、ケーブルはペンチなどで強めに引っ張りながら固定する必要がある。このとき、インプットリンクが下がるとケーブルがたるむので、ケーブルをフレーム側のやや上方に引っ張ったほうがいいだろう。
ちなみに、独特のケーブルの取り回しは、インプットリンクとアウターリンクにケーブルが挟まらないようにするためのものであって、動作には直接関係しない。また、FD-5801はコンバーターを搭載しないので、TL-FD68を使わないで済むぶんだけ、ケーブルの取り付けの作業は楽だ。
FD-5801のケーブルの取り回し(左)、コンバーターが廃止されたので、TL-FD68を使う必要がなくなった(右)
○ケーブルの張り調整
ブラケットとインプットリンクのインジケーターを一致させ、適正なケーブルの張りにしたつもりでも、ロー位置に解除してからT-トリム位置でインジケーターの位置を確認すると、わずかにケーブルが張りすぎになっていることがある。マニュアルでは、ケーブルを緩める方向にケーブル調整ボルトを回した場合のみ、レバーの操作とインジケーターの位置を再び確認するのだが、ケーブルの張り具合にかかわらず、ケーブルの張りの確認は必ず行ったほうがいいだろう。
わずかにケーブルを張りすぎた状態
○トップ側の調整
T-トリム位置でチェーンガイド内プレートとチェーンの隙間は0〜0.5mmにセットするが、個人的には0.5mmにしたほうがいいと感じた。DEFY1 DISCの場合、0mmにセットすると、アウター×ロー側の5枚がチェーンガイド内プレートと干渉して音鳴りが生じる。いずれもトリム操作で音鳴り防止が可能だが、0mmでは頻繁なトリム操作が必要になるはずだ。
○ロー側の調整
L-トリム位置でチェーンガイド内プレートとチェーンの隙間は、チェーンがチェーンガイド内プレートに触れるか触れないかギリギリの0mmでかまわない。この点はFD-5800と同じであり、チェーンが少々触れる程度では、スキッドプレートが音鳴りを防止してくれるので、あまり神経質になる必要はない。
○変速の確認および微調整
ケーブルの張りが適正なら、ケーブルボルトをいじる必要はない。インナー×ローでチェーンとチェーンガイド内プレートの間隔が極端に広くないかぎりは、ロー側調整ボルトもいじる必要はなく、微調整は主にトップ側調整ボルトで行うことになる。ケーブルの張りを調整せず、可動範囲だけを調整するので微調整は楽だ。
私の場合は、トップ側の調整でチェーンガイド内プレートとチェーンの隙間を0.5mmにしても、まだアウター×ロー側の数枚の音鳴りが気になったので、チェーンガイドを内側に動かすためにトップ側調整ボルトを少し緩めた。その結果、音鳴りはロー側の2枚目だけで済み、頻繁にトリム操作をする必要はなくなった。また、少々トップ側調整ボルトを緩めたくらいでは、メインレバーの操作の軽さには影響しない。
○調整範囲の大きさ
新型のクランクはロー側にギアピッチが広くできているが、FD-5801はFD-5800よりもロー側に大きく調整できるだけでなく、トップ側にも大きく調整できる。FD-5801はもともとチェーンとチェーンガイド外プレートとのクリアランスが大きく、微調整でトップ側調整ボルトを少し緩めたぐらいではアウター×トップでチェーンが干渉することはない。これは私の期待どおりだった。
また、私のGIANT DEFY1 DISCはO.L.D 135mm、チェーンステー長が420mmのディスクロードであり、インナー×トップでチェーンがアウターギアに干渉することはなく、無理に新型のクランクに交換する必要はなさそうだ。
アウター×トップでのとチェーンとチェーンガイド外プレートとのクリアランスは十分に大きい
○メインレバーの操作が極端に重い場合
実は、最初にFD-5801を変速調整した際には、メインレバーの操作が異常に重くなってしまった。どうやら、ケーブルルートのどこかで引っかかりが生じていたらしく、デュアルコントロールレバーとBB下部のケーブルガイドにケーブルを確実に通し、アウターケーブルの穴を千枚通しで整えたら、調整が一発でうまくいった。もし、FD-5801でレバーの操作が極端に重い場合は、フロントディレイラー以外の原因を疑ったほうがいいだろう(シマノのカスタマーサポートにもそう言われた)。
■ 変速性能
FD-5801は、FD-5800を大きく上回る変速性能を実現している。メインレバーの操作が軽いだけでなく、ストロークも小さくなっており、FD-5800よりも操作性が向上している。また、チェーンがアウターギアにスムーズにかかり、インナーギアには素早く落ちる。変速のミスが極めて少ないので、確実な変速動作を意識する必要もなくなり、直感的なフロントの変速操作ができる。詳細は以下のとおり。
○シフトアップ (インナーギアからアウターギアへの変速)
やや大げさにいえば、メインレバーの操作はリアディレイラー並みに軽く、2本の指を内側に倒すだけで変速できる。変速で握力を意識する必要がないため、直感的な変速操作が可能。頻繁な変速操作でも手が疲れることもない。FD-5800で軽い操作感を優先すると、ケーブルの張りを弱めにする必要があり、アウターギアにスムーズにチェーンがかかりにくく、ガチャガチャと音がすることがあった。FD-5801はメインレバーの軽い操作とスムーズかつ確実な変速をしっかり両立しており、後述するストロークの小ささと相まって、変速のミスは極めて少ない。
○シフトダウン (アウターギアからインナーギアへの変速)
リリースレバーの操作感は、FD-5800とほとんど変わらない。ただ、FD-5801の方がチェーンがインナーギアに落ちるのが速い。FD-5800ではT-トリムの位置でガイドプレートが一瞬止まるため、チェーンがインナーギアに落ちるのが遅かった。FD-5801はT-トリムの位置でチェーンの”引っかかり”がないのでシフトダウンが素早い。
○レバーのストローク
DEFY1 DISCのケーブルルートは、FD-5800のコンバーターのオンとオフの境目にあるため、ケーブルルートによってはストロークが大きくなることがあり、メインレバーを奥まで押し込まないとアウターギアにチェーンがかからないことがあった。FD-5801の方がメインレバーのストロークが小さく、メインレバーの押し込み不足による変速ミスを防ぎ、スムーズにチェーンがアウターギアにかかる。特に特に私は手が小さいので、ストロークが小さくなったのはありがたい。なお、リリースレバーのストロークの違いは特に感じなかった。
○音鳴りとトリム操作
変速調整の結果、インナー×トップ側2枚、アウター×ロー側2枚で音鳴りが生じる。チェーンの位置がいわゆるたすきがけになる際の音鳴りは、フロントの変速操作を行うか、トリム操作を行うことで対処できるので問題はない。また、インナー×トップでは音鳴りせず、アウター×トップでもチェーンとチェーンガイド外プレートとのクリアランスが大きいので音鳴りは生じない。
FD-5801はチェーンガイド内プレートだけでなく、外プレートにもスキッドプレートが搭載されている。チェーンガイド外プレートが音鳴り防止効果を発揮するのは、チェーンがT-トリムの位置にある場合だ。フロントをT-トリムの位置のままリアをトップ側に変速させても、音鳴りが非常に小さい。また、FD-5800ではシフトダウンでT-トリムの位置でガイドプレートが一瞬止まる際に、チェーンがシャーッと音を立てることがあった。FD-5801はシフトダウンでチェーンの接触時間が短いだけでなく、スキッドプレートのおかげで静かに変速できる。
FD-5801はチェーンガイド外プレートにもスキッドプレートが搭載されている
■ 総評
FD-5801は、かんたんな変速調整と高い変速性能を同時に実現している点が素晴らしい。FD-5801はインジケーターのおかげで確実に適正なケーブルの張りにセットできるので、ケーブルアジャスターで微調整する必要がない。また、マニュアルどおりの調整でほぼ確実に動作し、各調整ボルトで微調整してもメインレバーの操作の重さにはほとんど影響しない。調整範囲も大きいので、アウター×トップ、インナー×ローでもシビアな調整は必要ない。
メインレバーの操作はリアディレイラー並みに軽く、ストロークの小ささと相まって、2本の指だけで直感的に変速操作ができる。変速ミスが極めて少ないのも大きな特徴であり、FD-5800のようにメインレバーの操作が軽いからといって、アウターギアにチェーンがかかりにくくなるようなこともなく、スムーズかつ確実に変速できる。また、シフトダウンも素早くなり、チェーンガイド外プレートにもスキッドプレートが搭載されたおかげで音鳴りもしにくくなった。
FD-5801はFD-5800からすべてにおいて進化したといっても過言ではないと思う。変速性能の高さは同じ105とは思えないレベルであり、これをかんたんな変速調整で実現できるのだから驚きだ。変速調整と変速性能の両方の点で、FD-5800からの交換はオススメだ。
GIANT DEFY1 DISCに取り付けたFD-5801
価格評価→★★★★★ (コストパフォーマンスが非常に高い)
評 価→★★★★★ (変速調整のたやすさと変速性能の高さに大満足)
<オプション>
年 式→2017年
カタログ重量→98g(実測では95g)