購入価格:¥560(税別)
先日、漫画家の谷口ジロー氏が亡くなった。
高校生の頃、「事件屋稼業」(関川夏央氏との共著)に出合い、その絵に惚れ、ずっと読み続けてきた作家だ。
その谷口ジロー。
かつては「事件屋稼業」「新事件屋稼業」などのハードボイルド作品、その後は「坊ちゃんとその時代」。
また、夢枕獏の「牙狼伝」や「神々の山嶺」という作品もある。
その谷口ジローに、自転車競技を題材にした作品があった。
あとがきには、「私が高校時代やっていた自転車競技を題材にした。」とある。
登場人物は、少年院を出て保護司のレーシングチームでロードレースを走るタケオ。
競輪選手で、街道練習中に同僚を事故に遭わせた罪の意識に苛まれている高橋。
高橋は、競技に身の入らないタケオのコーチを、保護司のアサギに頼まれる。
32ページの短編だが、谷口ジローのあの絵で自転車競技が、トレーニングシーンが描かれる。
タケオの自転車は、シマノのバイオペースギア、シフターが、SISのダブルレバー。
パナレーサーのツアーガード280とは、最初フレームのことかと思ったが、検索しても出てくるのはタイヤチューブ。
またはタイヤのことだろうか。
ペダルは足首で回せとは、アンクリングのことか?
現在はアンクリングはふくらはぎの消耗を呼ぶので非推奨だが、かつては推奨されてたとも何かで読んだ。
この短編集を買った頃は、「おぉ、谷口ジローが自転車物を」と驚いたが、当時はMTBを買ったばかりと言うのもあり、よくわかっていなかったようだ。
読み返してみると、タケオはロードレースであり、高橋は競輪の選手。
タケオにコーチを申し出る高橋にタケオは「なんだと、ふざけんじゃねぇや!誰がてめえみたいな競輪野郎なんかに!」と返し、
別のシーンでは高橋がタケオに「冗談いうな 俺の専門はロードじゃねえんだ」と言っている。
ただ、自転車レースの先輩が若人に教える物語ではないのだ。
お互いに背負ったものがある先人が専門外の種目の後輩を導く、再生の物語だったのだ。
そう思うと感慨深いのだなぁ。
と感じつつ一つ残念なことがある。
かつて、「飢狼伝」のマンガ化において、原作者の夢枕獏をして「格闘技によってことなる筋肉を描き分けることができる」と言わしめた対口ジロー。
なのだが、競輪選手とロード選手の体格、体型がそんなに描き分けられているように感じられない。
もし、まだ谷口ジローが生きていたならば、何かの機会に自転車ものを、競輪とロードの対比なり、描いてくれたらなぁと思う次第だ。
価格評価→★★★★★(谷口ジローファンなら)
評 価→★★★★☆(かなわぬリメイクの想いを込めて)
<オプション>
年 式→1986年製
カタログ重量→ 32ページ
谷口ジロー傑作短編集2「東京幻視行」 収録。
初出:エロトピア/ワニマガジン社 1986年(昭和61年)7月17日号。
2004年6月11日 第1刷発行。
※それにしても、エロシーンの一コマもないこんな作品が掲載されるなんて、「漫画エロトピア」って。
※「漫画エロトピア」って、2000年に休刊してたのね。