購入価格:¥1,990 (@Monotaro、送料別)
通常鉄パイプを使ったフレームは内壁が無塗装なので、なんらかのコーティングを施しておかないとあっという間にサビに蝕まれ…と言いますか新品のフレームからしてすでに若干赤錆が浮いているのが普通です。過去の経験から言って、そのままでツーリングを繰り返すなど多少酷使しても3年や4年は特に問題なく乗れてしまうように思えるのですが、それはあくまで外観上でのこと。錆は虫歯のごとく確実に進行していずれは塗装を浮かせてしまいます。そうやって塗装が見すぼらしくなるたびに錆落としと再塗装を繰り返せば延命はできるでしょうが、塗装を長く綺麗に保ちたければ新品に近い状態のうちにしっかり脱脂した上でなんらかの油脂で表面を保護しておくのがベスト。日本は高温多湿なので、無対策のままでは雨天走行を避けようが乗らずに室内で放ったらかしにしておこうが確実に錆は進行します。
どうやっても手が入らないフォークレッグやシートステイ、チェーンステイなども施工できるもの、とすると以下のような性質を持っているものが理想的でしょうか…
・振動や揮発に耐える高い密着性
・水置換性があって狭いところへも瞬間的に浸潤する
・ゴムや樹脂、メッキを侵さない
・耐熱性は必要ないが水や酸、塩分などに長期間耐える
・しょっちゅうボタボタ垂れてくるのは困るので薄く強い膜が理想
汎用やチェーンルブなどの中からこれらを全て満たすものを探してみると案外難しいもの、ですがスチールフレームの防錆用に作られた専用ケミカルがいくつか存在します。海外ではJ.P. WeigleのBicycle Frame SaverとBoeshieldのT-9 Aerosolが主流、なのですが缶スプレーは空輸の規制がかかっているので船便で出荷してくれるところを見つけるか、国内でストックしているところを探さなければなりません。J.P. WeigleもBoeshieldも現在輸入代理店がないので国内で入手するのは非常に困難…というわけで、国内ではこのRESPO防錆スプレーほぼ一択ということになります。
肝心の性能の方はというと、これが各種JIS試験に合格しているようで缶に書かれた能書きによれば上に挙げた条件をことごとくクリアしていることになります。一番目を引くのは直接”水などに触れない部分は半永久的に効果が持続する””苛酷な状況下では1年間持続”という頼もしい文言。
では実際の効果を見てみましょう、下の写真はほぼ一年前に新品で購入したColnago Master X-lightのシートチューブとBBシェル内部を今しがた撮影したもの。
組み立ては全て自分でやり、届いたその日にこの手でRESPO防錆スプレーを吹きました。その時写真を撮って残しておけば良かったのですがもう悔やんでも時は戻りません。代わりにまた来年写真を撮ることにしましょうかw とにかく記憶を手繰ってみると、所々うっすら赤錆がにじんでいる状態だったのでほぼ変化していないということになります。パイプ内部を指で触ってみれば昨日塗ったかと思う程、しっかりした油膜があります。残っているというかほぼそのままで、それでいてネチャつきやダマになったところが一切ないので、これはもしかしたらチェーンルブとして使っても有能かも…
雨の日は乗っていませんし、そもそも大した距離も走っていない(せいぜい3,000km行くか行かないか位)で、普段は屋内保管でカバーはかけていません。まあ缶に書かれた”苛酷な状況下”とは程遠いですが、保管している部屋は現在自転車置き場のようになっていてエアコンは使っておらず、思い切り南向きで西陽も入るので夏場はそれなりに湿度も室温も高い、まあ鉄にはあんまりいい環境とは言えないような感じ(だから自転車部屋にしているのですが)。そこで一年放置されていたスペアのクロモリフォークのメッキ(一度Mothersのクロームポリッシュかけて保護してあった)にはうっすらくすみが浮いていたので、それなりに湿度は高かったんだろうと思います。それでも乗りっぱなしでパイプ内部が赤錆だらけになっていなかったのは防錆スプレーの効果でしょう。水やゴミが溜まりやすいBBシェルの内側もシートポストもスルッと抜けたので、固着防止の効果も期待できるかと思います。
さて、結果とプロセスの順番が入れ替わってしまいましたが、作業性の感想はというと…
・独特な匂い、というかかなり臭い部類です。揮発油系の刺激臭ではないですが鉱物油独特の甘ったるいような脂っこいような、長時間嗅ぎたくない類の臭い。屋内でプシューとやるとしばらくは臭いが残って消えないので、例えばステムだけとか少量使う場合であっても屋外使用推奨です。フレーム丸ごと施工する程大量に吹く場合は、さらに防塵マスクも着用した方がいいかもしれません。
・塗ったところはIPA位の溶剤だと簡単には落とせないので、BBのスレッドなど塗りたくない場所にはあらかじめテープなどで養生しておく必要があります。塗装やメッキには少しくらいならかかっても拭き取りで落とせるので、塗装部を丸ごと養生する必要はありません。
・シリコンルブと同程度の濃度のミストで吹き出され、溶剤が揮発するとフィルム状の油膜が残る仕組みです。ムラなど考えずプシューッっと吹くだけで細かいところまで入り込んでいきます。
・何枚かウエスを用意し、スプレーノズルを差し込むところ以外の穴は塞いでミストをパイプ内に滞留させるようにするとムダがなく効率いいでしょう。ダウンチューブなどはボトルケージ用のボスからも差し込んで吹いてやると確実です。
・フォークレッグやシートステイ、チェーンステイなど細いパイプをドン突きで溶接しているところには溶接時に熱で中の空気が膨張して破裂するのを防ぐガス抜きの小さな穴があるので、そこからノズルを差し込んで吹きます。穴が小さくてノズルが入らない場合は、他の缶スプレーから細い金属ノズルを流用するなど工夫しましょう。
・1台分丸ごと施工しても1缶の容量で余裕でまかなえます。参考までにNET容量420mlのうち115mlが溶剤のメチルシクロヘキサンと表示されています。新品の缶は380g、フレーム1本とフォーク2本に使った後缶の重量を量ったら330gだったので、50g減ったことになります。缶自体の重量が何gなのかは使い切ってみないと分かりませんが、振ってみた感触では使った量は1/4〜1/3程度でしょうか…1本2,000円程度ですから、毎年使って油膜メンテをしても全く惜しくないコストです。
こんなところでしょうか。臭いと吸入にだけ気をつければ作業性はとても良いので、自分でも気軽に行えます。気の利くビルダーさんなら新品引渡し前に錆止め加工をしておいてくれるでしょうが、年に一度のメンテ用に、自分で一から組む場合のお供に、とスチールフレームオーナーなら持っておいて損はしないケミカルだと思います。
価格評価→★★★★★(効果を考えると安い)
評 価→★★★★★(期待通りでした)
年 式→2016
新品時の内容量/容器込みの総重量→ 420ml/380g(フォーク2本、フレーム1本に施工した後の重量 330g)